ドル/円や豪ドル/円の動きは限定的、景気後退決めつけは尚早=外為どっとコム総研

ドル/円や豪ドル/円の動きは限定的、景気後退決めつけは尚早=外為どっとコム総研

外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員の神田卓也氏(写真)は、ドル/円について「当面は、1ドル=108円〜112円のレンジを抜ける動きにはならないだろう」と見通している。

 米国の長期金利が低下したことで、世界景気の先行きに不透明感が高まって、米ドルや豪ドルなど主要通貨が下落する動きになっている。一時、1ドル=112円をめざして堅調だったドル高の流れは、もう戻ってこないのか? 外為どっとコム総研の取締役調査部長兼上席研究員の神田卓也氏(写真)に聞いた。神田氏は、ドル/円について「米経済指標の数値を見極めるまでは、大きくは動きにくい。当面は、1ドル=108円〜112円のレンジを抜ける動きにはならないだろう」と見通している。
 
 ――1ドル=112円をめざしてドル高が進んでいたが、3月下旬に一転下落した。この背景は?
 
 世界景気の減速懸念が再燃した格好だ。米国をはじめ各国の長期金利が低下した。米国では年内に利下げという観測も出ているくらいだ。また、ドイツ10年国債金利はマイナス圏になった。米国よりもユーロ圏の方が景気の見通しが暗いということだろう。
 
 FRBが金利引き上げに慎重な姿勢に転じてから、ECB(欧州中銀)も、豪中銀もカナダ中銀もニュージーランド中銀も次々に金融緩和姿勢を示している。世界の中銀がハト派的になったため、相対的に金利水準の高いドルが浮上する構図になっている。
 
 現在、米国の金利先物市場では年内に利下げとの確率が70%程度に高まっている。この観ある限り、ドルが上値を追うことは難しい。ただ、米国の長期金利が低下した背景には、ドイツ国債がマイナス金利になったことで、欧州の国債を売って米国債を購入する動きが活発化したという側面もある。このため、現在の米金利低下の理由が、景気悪化を先読みしたものとは断言しにくい。
 
 FOMCでは「金融政策について様子見」としており、決して利下げを実行するとは言っていない。来年には1回の利上げとの見通しを取り下げたわけでもない。市場は、FRBの次の一手を探っている状況だ。
 
 足元の米経済指標は、昨年12月から今年1月にかけて政府機関が閉鎖された影響で下振れている。一部には税の還付が遅れたということもあったようだ。かつ、1月から2月にかけて米国を強烈な寒波が襲ったこともあって一時的に経済活動が停滞した影響を映しているといえる。これらの影響が一巡した3月以降の経済指標の発表が待たれている。3月の経済指標次第では、現在の米利下げ観測が行き過ぎであったことが明確になり、ドルの買戻しが優勢になるということも考えられる。
 
 昨年末に景気減速懸念が台頭し、ドルが売られたが、1月以降に思ったほど景気が悪くないことが明らかになってドルが買い戻されたということの再来ということになる。
 
 ただ、米国の景気の現状について市場が確信を得るには、3月分だけではなく4月分の指標も確認したいところだ。当面は、現状の108円〜112円の間で静かに動く相場になると見通している。
 
 ――豪ドル/円は、80円を目前に失速してしまった。今後の見通しは?
 
 豪ドルが売られた理由は、米ドルが下落した理由と同じだ。世界景気の動向にもっとも敏感に反応するのが豪ドルなので、世界的に景気の先行きが懸念された流れで売られた。また、豪州の金利先物市場では豪中銀が年内に利下げする確率が80%くらいに高まっている。もはや、政策金利は米国 よりも低い1.5%になっているところから、一段と金利を引き下げるとなると、豪ドルの下落は深くなる可能性がある。
 
 しかし、現実的には、豪州の雇用は依然として堅調で、景気が底割れする懸念は小さいと見通せる。豪州は27年間も不況知らずで来たほどに、経済の足腰は強い。米中貿易協議で不透明感が強まっている中国の景気が持ち直せば、豪景気も上向こう。
 
 米中貿易協議は、結論は6月まで先送りという見方もあって、その結果が読みにくい。米中の間で繰り広げられた関税引き上げ合戦が収束するということになれば、中国経済の先行きも明るくなり、それを受けて、豪中銀の利下げ見通しも消えることになるだろう。それがはっきりするまでは、豪ドルも大きくは動けないという展開が続きそうだ。当面は1豪ドル=76円〜80円のレンジを抜ける動きは考えにくいと考える。
 
 ――その他、注目の通貨ペアは?
 
 トルコリラの値動きが大きくなっている。トルコリラのスワップ金利が高くなっているものの、これは一時的なことで、うかつに手を出すようなことはしない方が良いと思う。
 
 今回のトルコリラの乱高下は、3月26日にトルコ当局がリラの流動性供給を絞ったために、スワップ翌日物金利が27日に1000%を超える異常値を示したために引き起こされたものだ。
 
 この動きは、トルコのエルドアン大統領が24日に、リラ売りを仕掛けている米銀等に対し、「高い代償を払うことになる」と警告したことが背景にあると考えられる。リラの流動性を絞り、スワップ金利を引き上げることで、リラの空売りを締め出そうとしたように見える。
 
 ところが、この短期金利の急騰を嫌って、投資家筋はトルコ株式やトルコ国債を売却するという行動に出た。この実物資産の下落によって、一時急反発していたリラが再び売り込まれることになった。トルコリラ/円は、3月22日に20円台から18円台に売られ、26日には20円台を超えて急騰し、その後、再び19円台に売られるという目まぐるしい動きになっている。
 
  こうしたトルコ金融市場の乱調の背景には、31日に予定されている統一地方選挙でエルドアン大統領率いる与党・公正発展党(AKP)が苦戦していることがある。エルドアン大統領は、海外勢のリラ売り圧力に屈しない強い姿勢を示すためにも選挙が終わるまでは、流動性を絞る金融政策を継続するだろうが、選挙後は、いつまでも高い短期金利を維持し得ないと考えられる。
 
  金利が元の水準に戻れば、投機筋が再びリラ売りを仕掛ける可能性もある。リラ相場急変の火種はあちこちでくすぶっていると考えられるため、現在のスワップ金利を手掛かりに安易にトルコリラを購入するようなことは控えたい。

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