トランプリスク全開の金融市場? 予期せぬ事態に注意! 外為オンライン佐藤正和氏

トランプリスク全開の金融市場? 予期せぬ事態に注意! 外為オンライン佐藤正和氏

外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に、9月相場の動向をうかがった。

 8月相場は、まさにトランプリスク全開とも言うべき波乱に満ちた為替相場だった。とりわけ、ドル円相場は久しぶりに想定以上の動きを見せた。9月以降も、トランプ米大統領は米中貿易戦争をエスカレートさせる可能性が高い。金融市場は、どんな動きを見せるのか。ドル円相場の行方はどうなるのか・・・。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に、9月相場の動向をうかがった。

 ――8月は瞬間的に1ドル=104円台まで円高が進行、この背景には何があるのでしょうか?

 8月26日の月曜日早朝、ドル円相場は大きく動き、1ドル=104円46銭まで円高が進みました。ちょうど今年の1月3日に起きた瞬間的な円高(フラッシュクラッシュ)と似た部分があります。この背景には米中貿易交渉の動きがあります。追加関税や報復措置が入り乱れる中で、米中貿易交渉はまさに貿易戦争の様相を呈してきました。

 こうした一連の米中貿易戦争の動きを受けて、一週間で最も投資家の少ない月曜日の早朝を狙って一部の投資家が円高を狙ったようです。ただ今回の円高にはもうひとつ動きがあり、ドル円と同時に「トルコリラ円」が動きました。

 今年1月の時もそうでしたが、リラ円が大きく円高に動いたのと同時にドル円も大きく円高に振れ、おそらく一部の投機筋がリラ円の上昇を狙って仕掛けたものと見られます。ドル円は動いてもそう大きなボラティリティ(価格変動幅)にはなりませんが、リラ円であれば振れ幅が大きく、投資効果が高いと思われます。

 リラ円に投資する投資家は意外と多く、その多くはスワップポイント狙いですが、やはり流動性の少ない通貨はリスクが高く、月曜日の早朝など投資家が少ない時間帯は、流動性が低くなるため今回のような大きなボラティリティが出てしまいます。

 ――9月相場のポイントは何になるのでしょうか?

 やはり大きなポイントは米中貿易交渉の行方です。すでに8月29日から交渉が再開されていますが、9月1日以降、中国は米国から輸入する大豆や牛肉、豚肉を含む農産物、小型航空機など約756憶ドル相当の商品に対して、最大5−10%の関税を課すことになります。

 同時に、米国も中国に対して1日から1100億ドル(約12兆円)相当の商品に対して15%の関税をかけることになります。加えて、このまま交渉がまとまらなければ、米国は10月1日から対中制裁第1弾から第3弾までの「強化策」を打ち出し、500億ドル相当の商品に対して、これまでの25%の関税を30%に引き上げることになっています。

 こうした米中貿易交渉の影響は、米国経済にも微妙な影を落としています。これまで強い米国経済を牽引してきた個人消費の強さを示す「米ミシガン大学消費者マインド指数」は6年ぶりの大幅低下となり、トランプ政権が誕生して以降、最低の水準となりました。貿易戦争が経済に及ぼす影響を浮き彫りにした形です。

 米国経済の減速懸念を受けて、トランプ大統領はさかんに「FRB(連邦準備制度理事会)」にプレッシャーをかけて、政策金利の引き下げを要求しています。おそらく9月17−18日に行われる「FOMC(連邦公開市場委員会)」での利下げは確実と考えられます。問題は、0.25%の引き下げで済むのか、0.50%まで拡大されるかです。また、9月6日の米雇用統計も注目したいところです。ただ、最近はあまり為替市場が雇用統計に影響されなくなりつつあるのも事実です。よほど大きなサプライズが出ない限り、影響は少ないはずです。

 ――その他、9月相場で注目しておきたいものには何があるでしょうか?

 日本国内を見ると、日韓関係の悪化、日米貿易交渉の行方、そして10月1日から実施される消費税率アップなどがあります。とりわけ、消費税率の引き上げで駆け込み需要が増えるのか、気になるところですが、為替市場にはあまり影響がないかもしれません。

 気になるのは、9月18−19日に開催される日銀の「金融政策決定会合」で、日銀が追加緩和など新たな手を打ってくるかどうかです。マイナス金利のさらなる深堀りなど選択肢は限られています。それでも 急激な円高などに対しては何らかの政策を打ってくる可能性があります。

 海外に目を向けると、 英国では10月末の合意なきブレグジット(EU離脱)が懸念されていますが、ジョンソン首相が議会を開催しないで合意なき離脱までの時間つぶしを画策するなど、不透明な状況が続いています。米中貿易戦争の影響が大きいオーストラリア経済も要注目です。オーストラリア準備銀行(RBA)が、政策金利を現在の1%からさらに引き下げる可能性もあります。

 それ以外では、イランの核合意問題や北朝鮮といった地政学リスクの高まりがあり、さらに気候変動に大きな影響があるといわれるアマゾンの森林火災などなど、問題は山積しています。世界に共通して言えることは「何が起こるかわからない」ということです。

 ――各通貨の予想レンジを教えてください。

 最近の投資家の間では、現在の金融市場を「リーマンショックよりもひどい」「予測不能」と言った声が上がっています。リーマンショックは流動性の問題でしたが、今回のトランプ大統領による世界経済の混乱は、まさに未知の領域であり、予測できないリスクと言っていいかもしれません。

 そうした事情を考えると、ボラティリティはやや大きめに想定した方が良いかもしれません。各通貨の予想レンジは次の通りです。

●ドル円・・1ドル=103円50銭−107円50銭
●ユーロ円・・1ユーロ=115円−122円
●ユーロドル・・1ユーロ=1.08ドル−1.13ドル
●ポンド円・・1ポンド=125円−135円
●豪ドル円・・1豪ドル=69円−73円

 ――9月相場の注意点を教えてください。

 ブルームバーグの報道によると、今回の貿易戦争では中国が米国よりも優位だと言う調査結果が出ているそうです。70万点の貿易データを分析した結果だそうですが、米国が中国以外の国でこれまでと同じ製品を確保できるのか・・・。トランプ大統領の考えるシナリオ通りには 行きそうもないようです。

 言い換えると、米中貿易戦争の解決には時間がかかるということです。周知のようにトランプ大統領は、次期大統領選挙の勝利を目指しており、そのためにはどんな手段でも使ってくるかもしれません。

 これまでの常識では通用しないメカニズムでマーケットが動く可能性があるということです。何が起こるかわからない、トランプリスクがさらに過激になっていく相場を考えなくてはいけません。

 こんな時には、ポジション管理をきちんと行い、流動性の少ない休み明けなど、相場の展開には注意をしておくべきです。とりわけ9月は祝日が2日あるため、海外相場の動向次第でどんな展開になるかも分かりません。相場の動きを注意深く見守りましょう。(文責:モーニングスター編集部)。

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