「結い 2101」を通じて投資を社会貢献に! 「いい会社」に投資する鎌倉投信

 「結い 2101」を通じて投資を社会貢献に! 「いい会社」に投資する鎌倉投信

社会問題を解決する企業に長期で投資し続けるファンド「結い 2101」を投資家に直接販売する方法で、着実に投資家数と運用資産をふやしてきた鎌倉投信代表取締役社長の鎌田恭幸氏(写真)に、今後の展望を聞いた。

 社会問題を解決する企業に長期で投資し続けることによって、「いい会社」が発展し、「投資」が社会貢献になる――鎌倉投信の掲げる投資スタイルは明快だ。同社が掲げる運用方針は、広くとらえれば、今でいう「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」にもつながる。2010年3月に設定・運用開始した「結い 2101」というファンドは、同社が投資家に直接販売する方法で、着実に投資家数と運用資産をふやしてきた。鎌倉投信代表取締役社長の鎌田恭幸氏(写真)に、今後の展望を聞いた。
 
 ――そもそも新しい運用会社を立ち上げようと考えたきっかけは?

 金融を通じて社会貢献をしたいと考えたのが他の創業メンバーに声掛けした想いの原点です。いい会社を応援し、いい会社を社会に育ててもらうという枠組みの運用会社ができたら、投資先の会社も喜び、投資家も豊かになれるだろうと考え、企業の社会的価値を意識した運用会社をスタートしました。(鎌倉投信自身が標榜しているわけではありませんが)現在でいうところのESG(環境・社会・ガバナンス)につながる、と評価されることも少なくありません。

 単にお金をふやすという考え方ではないので、銀行や証券会社などの窓口で売ってもらうという考えはありませんでした。独立系で、直販で、いい会社を応援するという仕組みを作ってきました。当社の株主も3名の創業者と個人の支援者だけなので、完全な独立系の運用会社です。

 鎌倉投信の考える「いい会社」とは、本業を通じて社会に貢献する会社です。私たちの独自の視点が30くらいあるのですが、分かりやすく「人」「共生」「匠」というキーワードでお客様に伝えています。「人の強みを活かして成長する会社」、「循環型社会を創る会社」、「独自の技術・サービスを持っている会社」といっています。

 運用スタイルは、一度投資したら、会社の経営姿勢等が変わらない限り、継続保有して応援していくというスタイルです。このため、投資先は、当初は6社からスタートし、現在は67社(2019年9月現在)に投資しています。いい会社がいい会社であり続ける限り、保有し続けるという投資姿勢は、他の運用会社とは違うところだと思います。

 ――「結い 2101」の設定から約10年が経過しました。現在の評価は?

 ファンドの設定当初は3億円、267人で始まりました。9年半を経過した現在、規模は約400億円で、お客様は約2万人になりました。企業の社会性に着目し、投資を通じて日本にいい会社を支援していくという考え方は、ファンドを設立した10年前にはなかった考え方です。当初は総じて冷ややかというか、「理想はわかるけど、実際には難しいよね」という見方が中心でした。

 しかし、実際に活動を開始してみると、特に個人の方は、投資で一定の成果を期待しつつも、「いいお金の使い方をしたい」、「自分のお金が社会で循環し、社会の役に立っているという実感を持ちたい」という潜在ニーズがけっこうあることが分かってきました。

 同時に企業サイドも、ある程度は社会性を意識した経営理念やビジョンを訴求しないといい人財が入ってこないし、世の中の評価も得られないなど、環境負荷も含めて社会的な企業の立ち位置を考えるという経営の視点を重視され始めています。この数年で企業側のスタンスも変わってきていることを感じます。

 東日本大震災の時、震災の翌営業日は月曜日で、当日の株式市場はドンと下がって、火曜日までの2日間で日本株式市場の時価総額が100兆円くらいなくなったのですが、この間、鎌倉投信には圧倒的に入金が多かったのです。その背景は、「こういう大変な時だからいい会社を応援したい」とか、「震災復興に直接関与できないけどいい会社を応援することで少しでも力になるのであれば」と、投資してくださいました。単にお金儲けではなく、自分のお金を生きたお金にしていくという想いを持っている方が、実際に多かったのだと思います。

 ――投資が社会貢献になるという理念を伝えるのは難しいことだと思いますが?

 運用実績もない最初の頃は、クチコミしかありませんでした。毎週1回くらいのペースで、鎌倉投信と「結い 2101」の考え方を伝えるための説明会を繰り返し開催してきました。その内容が、参加していただいた方のブログやSNSによって徐々に広がっていきました。最初の頃は、1人、2人でも当たり前という気持ちでやっていました。今では、毎週開催する会場に15人〜40人くらいは集まっていただけるようになりました。

 実際にお客様になっていただいた後は、運用報告会を春と秋に、全国主要都市で合計50回くらい開催しています。足元の運用の状況や新たな投資先の情報など、投資いただいたお客様には、それを丁寧に伝えています。

また、「結い 2101」の決算報告を兼ねて、お客様と投資先の会社をお呼びして、1日かけて講演会やパネルディスカッション、企業展示などをする「受益者総会」を年に1回開催しています。受益者総会には今では1000人規模の方が集まっていただくようになりました。

 金融商品は数字で表現されますが、投資の裏側には、実際には企業の営みがあって、お金として返ってくる過程をしっかり伝えたいので、投資先企業とお客様との接点や場づくりが大事だと思っています。「いい会社訪問」、「いい会社の経営者講演」は毎月1回くらい開催しています。

 投資先の会社も、販売会社の個人向けIRで話しているような内容ではなく、株価や業績よりも、「自分たちの会社が何のために存在しているのか」という原点、それぞれの会社のビジョンやミッションを通じてどんな社会を創っていきたいのかという、社会における存在価値を伝えていただいています。これを共有することが重要だと考えています。

 ――「結い 2101」は、つみたてNISAの対象ファンドにも選定されています。取扱いを希望する販社も少なくないと考えますが、直販だけを貫いている理由は?

 一つには、運用会社である私たちがファンドの運用方針を直接伝えていくことが大事だと考えていることがあります。

 また、運用スタイルとして、結果としてファンドには中小型企業で流動性が高くない会社の組み入れが多くなっています。投資先の70%くらいは、大手の運用会社が買えないような中小型株です。ファンドに入っている資金が、頻繁に出入りするようになると、運用がやりにくくなり、運用商品の質が低下するという現実的な問題が生じかねません。いい企業に投資し長期で保有し続けるというファンドの意図を理解した質のいい資金が入ってくるよう、販路は慎重に考えています。規模の拡大はめざしていません。これまでのように、緩やかに成長することが好ましいと考えています。

 運用戦略に照らして運用資産の適正規模を考える場合、つみたてNISAや(当社は、現時点では対応していませんが)iDeCoのように、積立で長期の運用を前提とした資金が安定的に入ってくる環境が整って来る中で、それらの資金を継続的に受け入れることを想定しておかなくてはなりません。

 また、運用商品も「結い 2101」の他に広げる考えも当面はありません。このファンドの運用コンセプトで運用が続けられる間は、運用の質を更に向上させつつ、このファンドに特化してやっていきます。ただ、今後、投資資金が膨らんでファンドが適正規模に近づいてきたら、次の運用商品を考えるという時期が来るかもしれません。

 ――今後の展望は?

 基本的にやることは変わりません。いい会社を応援する。多くのお客様にその姿を知っていただき、信頼関係を作っていくという活動を続けていきます。ただ、現在、約2万人の方々に投資していただいていますが、実際に会えるお客様は、そのうちの年に10分の1くらいです。実際には会えないお客様との距離を、どうやって縮めるのかが、これからの課題です。

 また、私たちは、投資のリターンを、「資産形成」×「社会形成」×「こころの形成」の掛け算と定義しています。そういう実感を持ってもらうための「場」づくりが、これからの挑戦になると思います。

 日本は、モノ・サービスが一通りいきわたっていますが、財政の問題、地域経済、環境の問題などをいろいろ抱えている社会課題先進国です。これらを放置したまま、経済社会が発展し豊かになっていくということはないと考えています。事業性のある企業の中に社会性を内包し、社会課題を解決していくことが、日本の次の発展につながるでしょう。いい会社を応援するという考え方は、これからの日本が「量的発展」から「質的発展」にシフトしていく力になると思います。

 日本でもインデックスファンドとアクティブファンドのどちらがいいか、といった議論がありますが、日本のように成熟した経済環境下で、市場全体が右肩上がりで上昇しつづけることは徐々に難しくなってきている思います。これからは社会に新たな価値を創造する個別投資先選択の時代になってくると思います。社会に貢献する個別企業には大きな可能性、成長余力があると思っています。(情報提供:モーニングスター社)

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