米中貿易交渉が大きな分岐点になるか? 外為オンライン佐藤正和氏

米中貿易交渉が大きな分岐点になるか? 外為オンライン佐藤正和氏

外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に、12月の為替相場の行方をうかがった。

 いよいよ2019年最後の1カ月が始まった。ドル円相場に大きな影響をもたらす「米中貿易交渉」の行方が2転、3転する中で、市場は相変わらず硬直状態が続いている。そんな中で、11月29日には米国のクリスマス商戦の開始を告げる「ブラックフライデー」が始まり、米国経済を支える個人消費の動向が気になるところだ。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に、12月の為替相場の行方をうかがった。

 ――12月相場のポイントはどこになるのでしょうか ?

 最大のポイントは、米中貿易交渉の行方にあると思います。トランプ米大統領は、第1段階の合意は近いと公言していますが、米国議会が可決した「香港人権法」に署名したことで、中国側が内政干渉だと猛烈に反発するなど「あらたな火種」として米中貿易交渉の行方が混沌としつつあります。

 仮にこのまま、妥結せずに12月15日を迎えた場合、中国から米国に輸入される大半の商品に追加関税が課せられることになります。そうなれば中国側も、さらなる報復措置に出るとしていますから最悪の事態が訪れる可能性が出てきます。

 現時点では、まだトランプ大統領と習近平中国国家主席との直接会談の日程が決まっていませんが、そこでの話し合いで合意できるのか・・・。仮に、交渉が決裂するようなことになれば米ドルは大きく動くことになると思います。また、合意した場合も「ドル売り」があるかもしれません。トップ会談が成立するかどうかも含めて、12月15日の期限に向けて、ドル相場はボラティリティの大きな相場になる可能性があります。

 ――金利が引き下げられましたが、米国の景気は・・・?

 12月10日−11日に向けて行われる予定のFOMC(連邦公開市場委員会)ですが、10月に利下げを実施したばかりであり、パウエルFRB議長がその後、今後の利下げには消極的な姿勢を示したこともあり、少なくともしばらくは利下げの可能性は少ないと考えられます。

 そこで気になるのが米国の景気ですが、周知のように米国の株式市場は、主要な指数である「ニューヨークダウ」「ジャスダック」「S&P500」が揃って史上最高値を更新するなど絶好調といっていいでしょう。

 米国の株式市場は個人消費を下支えしている存在ですが、この11月29日に実施された米国最大の大型商戦となる「ブラックフライデー」は、そうした株高に支えられて好調に推移したようです。米アドビ・アナリスティックスの発表によると、オンラインでの売上高が過去最高の74億ドル(約8100億円)を記録。株高を背景に米国の個人消費も堅調と言っていいでしょう。

 ちなみに、米中貿易交渉の行方にも影響を及ぼしつつある、トランプ大統領への弾劾裁判の動きですが、共和党が多数派を占めている上院での裁判になるため、トランプ大統領を弾劾するところまではなかなか難しいようです。結局は、政治的な混乱が長引くだけの結果になるかもしれません。また、メディアの富豪で知られる前ニューヨーク市長のマイケル・ブルムバーグ氏が参加を表明した民主党の候補者指名争いも、メディアが報道する割には為替市場には影響はないと思われます。 

 ――日本の消費税率引き上げから1カ月が過ぎました。為替市場への影響は?

 まだ正確な情報は出ていないものの、軽減税率の対象となった商品は変わらず、適用外の10%になった商品については、前回同様の影響があると報道されています。とはいえ、 政府与党は消費税引き上げの影響は最小限と見ているようです。

 こうした中で、日本銀行の金融政策決定会合が12月18日−19日に開催されますが、マイナス金利の深掘りなどの動きがあるのではないかという期待に反して、何もなかった前回同様、大きな動きはなさそうです。

 仮にこのまま、日銀が動くことなく年末を迎えると、2019年の1年間の米ドル相場の変動幅は1ドル=104円台から112円台と言う狭いレンジの中で終えることになると考えられます。

 ――英国では総選挙が行われますが、為替市場への影響は・・・?

 英国の総選挙は12月12日に実施される予定で、この結果次第ではブレグジットが実現の方向に大きく向くかもしれません。今のところブレグジット推進派の保守党がリードしているようですが、この総選挙だけで決着がつくかどうかは不透明です。

 仮に議会でジョンソン首相が掲げるブレグジット案が可決されるような議席の構成になれば、来年1月末に迫っているブレグジットに導けるかもしれません。ただその可能性は望み薄で、やはり再度の国民投票が必要なのかもしれません。

 一方、EU(欧州共同体)の中央銀行に当たるECB(欧州中銀行)の総裁が、マリオ・ドラギ氏から前IMF専務理事のクリスティーヌ・ラガルド氏に変わりました。今後、少しずつラガルド色が強まっていくことになるかもしれませんが、急激な変化は少ないのではないか、と言われています。

 ――12月の各通貨の予想レンジを教えてください。

 毎年のことですが、12月は大きな変動幅に注意する必要があります。とりわけ、米中貿易交渉の成否が決する12月15日前後には大きな変動幅があるかもしれません。米中貿易交渉が成立した場合でも、利益確定による思わぬドル売りが待ち構えている可能性があります。12月の予想レンジは次の通りです。

●ドル円……1ドル=107円−110円
●ユーロ円……1ユーロ=116円−122円
●ユーロドル……1ユーロ=1.09ドル−1.1150ドル
●ポンド円……1ポンド=137円−142円
●豪ドル円……1豪ドル=72円−75円

 ――12月相場の注意点を教えてください。

 最近の米国市場は、株式市場で史上最高値を更新するなど、やや「バブル」ではないかという指摘がちらほら聞かれます。リーマン・ショックの原因となった金融商品なども数多く組成されるようになり、金融市場全体にやや過熱感が出ているのかもしれません。

 そんな中で、注意したいのはやはりマーケットの突発的な動きです。今年の1月3日にドル円相場が1ドル=104円を瞬間的につけた「フラッシュ・クラッシュ」の現象が起きましたが、またそんな事態が起こるかもしれません。欧米のクリスマス休暇から、日本はお正月休みに入るため、どうしても流動性が少ない相場となり、年末にかけてのマーケットは一部のヘッジファンドなどに狙われる可能性があります。

 いつものように、旅行などで相場から離れる時にはポジションを抑えておくなど、通常の投資戦略とは異なるポジション体制をとる必要があると思います。(文責:モーニングスター編集部)。

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