「新型ウイルス感染拡大」でどう動く円相場? 外為オンライン佐藤正和氏

「新型ウイルス感染拡大」でどう動く円相場? 外為オンライン佐藤正和氏

突然始まった中国発の新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。世界中の株価は大きく下げ、消費に与える影響が懸念される中で為替もボラティリティ(変動幅)が大きくなりつつある。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に2020年2月の為替相場の行方をうかがった。

 米中貿易交渉がやっと落ち着いたと思ったのも束の間、突然始まった中国発の新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。世界中の株価は大きく下げ、消費に与える影響が懸念される中で為替もボラティリティ(変動幅)が大きくなりつつある。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に2020年2月の為替相場の行方をうかがった。
 
 ――中国発の新型コロナウイルス感染拡大が止まりません。今後の展開は?
 
 新型コロナウイルスの感染拡大は、ここ1週間程度で急速に拡大し、日本での感染者も武漢への渡航歴のないバスの運転者が感染するなど、「人から人へ」感染した可能性が出てきました。今回の新型コロナウイルスは潜伏期間中も感染能力があるのではないかと言われており、感染拡大の規模もすでに世界中に拡がりつつあります。
 
 中国の正月にあたる「春節」と重なったこともあり、すでに2002〜2003年にかけて流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の感染者数を上回る6000人(1月29日現在)を突破しています。このままでは世界的な「感染爆発」の可能性も出てきました。
 
 米国株、日本株ともに大きな下落となり、今後の経済に与える影響が心配されます。残念ながら、感染の規模がどこまで拡大するのか、一体いつ収束できるのか・・・。感染症の専門家でも判断できない段階と言えます。
 
 そんな中で、為替市場は予想よりも比較的落ち着いており、米国株が大きく下げたときも1ドル=108円73銭までの円高で止まりました。米国10年物国債の長期金利が1.58%まで下落したことを考えると、ドル円相場の動きは落ち着いていると言っていいかもしれません。まだ事態を見極めている途中、と言ってもいいでしょう。
 
 ――感染拡大が、市場に影響を与えているかどうかの判断方法はありますか?
 
 株式市場の下落などを示唆する指数に「VIX指数」というのがあります。Voratility Indexの略で、米国のシカゴオプション取引所(CBOE)が、米国の代表的な株価指数である「S&P500」のオプション取引の値動きをベースに算出しているもので、数値が高くなればなるほど投資家心理が悪化していくと言われています。別名「恐怖指数」とも呼ばれています。
 
 このVIX指数の通貨版とも言われるものに「通貨VIX」指数というのがあります。 同じくシカゴのオプション取引所が算出している為替版のVIX指数で、通貨別に「円VIX(JYVIX)」、「ユーロVIX(EUVIX)」「英ポンドVIX(BPVIX)」などがあります。たとえば、円VIXが上昇してくれば、円通貨の大きな変動幅に投資家が警戒していることを示すことになります。
 
 同様に、金融マーケットの歪みを示す指標に「SKEW指数」というのがあります。同じくCBOEで取引されている指数で、S&P500指数を対象としたオプション取引での市場の歪み(SKEW=スキュー)を数値化したものです。買う権利の「コール」に対して、売る権利である「プット」の需給バランスの大きさが分かるようになっています。
 
 新型コロナウイルスによる感染拡大といった、これまであまり経験したことのないような事態が起きている時には、 こうした指数を参考にするのも良いかもしれません。ちなみに、円VIXは今のところそれほど大きな上昇にはなっていません。
 
 ――2月相場のポイントは何になるのでしょうか?
 
 やはり最大のポイントは、新型コロナウイルスによる感染の影響がどういう形で出てくるのか、ということに尽きると思います。為替市場や株式市場の変動幅が大きくなるのは言うまでもありませんが、金市場やビットコインと言った仮想通貨市場なども大きなボラティリティがあるかもしれません。
 
 新型ウイルス感染以外では、2月4日に現在の政治課題などについてトランプ米大統領が米議会で説明する「一般教書演説」が行われます。ここで新たな景気対策などを11月の大統領選挙を意識して打ち出してくる可能性があります。同時進行で行われているトランプ大統領への弾劾裁判の行方も注目されるところです。ボルトン前大統領補佐官への証人喚問ができるかどうかがポイントになると思います。
 
 それ以外では、英国のブレグジット(EU離脱)が、1月31日にやっと実現し、英国はEU(欧州連合)から離脱することになります。次の焦点は、英国とEU間での「自由貿易協定(FTA)」に移ります。英国にとって満足できるFTAを締結できるかどうかが焦点になります。
 
 ――1月の各通貨の予想レンジを教えてください。
 
 為替の予想レンジで注目されるのは、 豪ドルの行方です。全土に拡大したと言われる森林火災の影響と新型コロナウイルスによる中国経済のダメージで、オーストラリア経済への影響が心配されます。2月の予想レンジは次の通りです。
 
●ドル円・・1ドル=107円50銭−110円
●ユーロ円・・1ユーロ=118円−123円
●ユーロドル・・1ユーロ=1.09ドル−1.12ドル
●ポンド円・・1ポンド=140円−146円
●豪ドル円・・1豪ドル=72円50銭−75円
 
 ――2月相場で注意する点を教えてください。
 
 2月は米FRB(連邦準備制度理事会)のFOMC(連邦公開市場委員会)も、日銀の金融政策決定会合もありません。そういう意味では、比較的安定しているはずだったのですが、新型コロナウイルス感染拡大のスピードや規模によっては、多大な影響を経済に与える影響があります。
 
 海外の資産を売却して日本円に戻す動きが出れば、大きく円高に振れる可能性もあります。ポジションを整理して、市場のボラティリティに一喜一憂せずに、きちんと関連ニュースを確認しながら対応することを心掛けましょう。(文責:モーニングスター編集部)

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