エレキ歌謡の「革命前夜」をドーナツ盤で振り返る!

第19回 「納涼・エレキ歌謡スペシャル」(その1)

最近、ますます加熱するアナログ盤ブーム。そしてシングル盤が「ドーナツ盤」でリリースされていた時代=昭和の楽曲に注目する平成世代も増えています。
子供の頃から歌謡曲にどっぷり浸かって育ち、部屋がドーナツ盤で溢れている構成作家・チャッピー加藤(昭和42年生)と、昭和の歌謡曲にインスパイアされた活動で注目のアーティスト・相澤瞬(昭和62年生)が、ターンテーブルでドーナツ盤を聴きながら、昭和の歌謡曲の妖しい魅力について語り合います。


チャ:「トリック・オア・トリート!」なんて、昭和の子どもは誰も叫んでなかったし、誰も仮装してなかったけど、いつの間にか年中行事ってのは増えていくんだなぁ……こんにちは、50過ぎてもお菓子大好き!「まちおか」大好き! チャッピー加藤です。

相澤:そういやチャッピーさん、いつも甘いモノ持ってますよね(笑)。……こんにちは、相澤瞬です。てか、このお店、なんで8月なのにハロウィンなんですか? フライング?

チャ:あ、ココね、恵比寿の「魔女バー ハロウィン」といって、年じゅうハロウィンなの(笑)。正月だろうが真夏だろうが、カボチャのランタンがぶら下がってるってイイよねー。異文化を採り入れるならここまで徹底せい! と言いたいよ。

相澤:いやー、ビックリしました!チャッピーさん、さすが面白い店いっぱい知ってますね!

チャ:ま、ダテに半世紀以上生きてないですよ……つっても、来たの2回目なんだけどね(笑)。

相澤:なんだ、てっきり常連なのかと!(笑)

チャ:オレのお友達で、音楽プロデューサーのイノジョーさんという人がいるんだけど、イノさんが常連で、去年パーティーに呼んでもらったのが初めて。で、このロケ用に紹介してもらったの。

イノジョー:私がそのイノジョーです(笑)。

狂夜:店主の狂夜(きょうや)です。

チャ:なんかすみませんね。急にお願いしたのに、快く場所貸してくださって。しかも、お通しで豆腐まで出していただいて……。

相澤:この豆腐、おいしい! しかも「食べるラー油」がメチャクチャ合いますね!

チャ:オレ、図々しくおかわりしちゃったよ。来たの2回目なのに(笑)……てなわけで、せっかくなんでイノジョーさんと狂夜さんにも加わっていただき、今回は4人で「真夏のドーナツ盤ハロウィンパーティー」ってことで、よろしくです。

相澤:漫画以上に濃い皆様とお届け出来て最高です!(笑)仮装してくればよかった!(笑)。



■エレキが変えた旧制度

チャ:さて、今回のテーマなんだけど、もうさぁ脳みそ溶けるぐらい毎日暑いじゃん! オレ夏って嫌いなんだけど、今年はちょっと尋常じゃない! 冷房入れてても暑いんだもん。

相澤:あー、ライヴハウスも、もともと熱気ムンムンですけど、さらにモワッとしますねー。

チャ:でね、オレは涼をとるために、毎年夏になると聴いてんのが「エレキ歌謡」なのよ。オレの定義は「ギターがテケテケ言ってる曲」、以上(笑)。

相澤:ああ、「テケテケ」ってベンチャーズとかですか?

チャ:そそ、正式には「クロマティックラン奏法」って言うらしいけど、イイんだよ「テケテケ」で! あれを採り入れてる歌謡曲ね。
聴いてるだけで涼しくなるじゃん?

相澤:サーフィンミュージックとか、確かに涼みますもんね!

チャ:つうわけで、今回はその「エレキサウンド」が日本の歌謡曲にどう定着していったかを、オレの好みで時代順を追ってかけてくんで、イノジョーさんも狂夜さんもバンバン口挟んでください!……エレキ歌謡といえば、まずはコレですな。


チャ:エミー・ジャクソンの『涙の太陽』。1965年4月20日、当時コロムビア傘下の洋盤レーベルだったCBSからの発売で、ちょうどベンチャーズが初来日した年ね。

相澤:前回、河崎実監督が「映画も音楽もテレビも野球も、1966年にすべては始まった」って仰ってましたけど、その1年前ですね!

チャ:そうなのよ、「革命前夜」だよ。……イノジョーさんって僕よりひと回り上でしたよね? これ、リアルタイムでした?

イノジョー:ウン、10歳だった。この歌メチャクチャ流行ってたなー。当時チャートにビートルズとストーンズも載ってたからね。

チャ:瞬くん、オレはそのときまだ生まれてないワケよ。ありがたいねー、当時の証言が聞けるって。なんか歴史番組みたいになってきたゾ(笑)。さっそくレコードで聴いてみよう。

(♪ターンテーブルで演奏)

相澤:すんごくいい! このエミー・ジャクソンさんってどんな方なんですか?

チャ:おじいちゃんがイギリス人のクォーターで、日本のアメリカンスクールに通ってるところを、作詞家の湯川れい子さんにスカウトされたの。

相澤:へー。じゃ、日本の歌手だったんですね?

チャ:そう。コレね、全編英語で歌ってて、しかも洋盤レーベルのCBS(当時コロムビア傘下)から出てるんだけど、作詞も作曲も日本人なんですよ。実は純国産のエレキ歌謡なの。

相澤:(歌詞カード見て)ホントだ、「作曲:中島安敏」って書いてある。でも作詞は「R.H.Rivers」になってますよ。

チャ:それ、ペンネーム。「Reiko Hot Rivers」の略で、「ホットリバース」ってのは「湯川」の直訳(笑)。

相澤:湯川れい子さんなんだ! なんでペンネームにしたんですか?

チャ:当時、日本のレコード会社には「専属作家制度」ってのがまだ残ってて、フリーの作詞家・作曲家は自由に書けなかったの。だから洋盤レーベルから出たんだけど、本名だと「なんで日本人が英語の詞書いてるんだ?」って言われた時代だから。

相澤:だからペンネームなんですね。でもなんかこの曲、聴いたことありますよ!

チャ:それは安西マリアのカヴァー(1973)だな。♪ギィラーギィーラ……ってので、8年後にリバイバルヒットしたのよ。そっちはオレもリアルタイム。


相澤:あ、それですそれです! このエミー・ジャクソンさんがオリジナルなんですね。

チャ:瞬くん、この曲どう?

相澤:すごく好きです! これ、知らずに聴くと普通に洋楽だと思いますよね。日本の曲なんだ!

チャ:そう。国産エレキ歌謡の原点。このあとGSブームが来て、フリーの作詞家・作曲家が書いた曲がヒットするようになると、大御所の先生たちには対応できないんで、専属作家制度はだんだん崩壊していくわけ。

相澤:エレキが、古い制度を変えたんですね。


■日本人より日本人なベンチャーズ

チャ:で、エレキ歌謡を語る上で欠かせないアーティストがいるんですよ。毎年夏になると日本にやってくる、ザ・ベンチャーズね。


相澤:ベンチャーズって、今もこのメンバーで来日してるんですか?

チャ:オレが初めて観に行った27年前はほぼこのメンバーだったけど、リーダーのドン・ウィルソン(左から2人目)がツアーを引退して、オリジナルメンバーは誰もいなくなっちゃった。ドラムスとか、息子が継いだりしてね(笑)。

相澤:へー、いいですねそういうの! 歌舞伎みたい(笑)。

チャ:彼らの来日もエレキブームに火をつけたんだけど、そのうち「曲書いてもらおう!」って話が出てくるわけ。それで歌謡曲を書くようになるのよ、ベンチャーズが。

相澤:えー、よく引き受けましたね!

チャ:彼らもニッポン大好きだから(笑)。で、こういう曲が生まれるのですよ。


チャ:66年9月15日発売、和泉雅子・山内賢『二人の銀座』。いいのよ、コレ!

相澤:あ、デュエットソングなんですか?

チャ:ともに日活の役者さんで、のちに二人の主演で映画も作られたんだけど、これ「作曲・ベンチャーズ」なのね。オレはまだ生まれてないけど大ヒットしたんですよね、イノジョーさん?

イノジョー:そう。当時しょっちゅう流れてた。

チャ:とりあえず聴いてみて。

(♪ターンテーブルで演奏)

相澤:うわ、確かにベンチャーズですけど、しっかり歌謡曲に寄せてますね! 歌い方がまた特徴あるし。

チャ:吉永小百合さんもそうだけど、この頃の女優さんってみんなこういう歌い方なんだよなー。

イノジョー:当時は歌唱指導の先生がいたからだよ。だからみんな判で押したような独特の歌い方になるんだよね。

相澤:なるほど……これ、作詞は誰ですか?

チャ:永六輔さん。もともとは銀座の夜景をイメージした『GINZA LIGHT』っていう曲で、ベンチャーズと同じ東芝レコード所属の越路吹雪さんが歌う予定だったの。

相澤:へー、越路さんのイメージとはちょっと違うような……。

チャ:越路さんもそう思ったみたいで、曲を譲ったんだけど、もし越路さんが歌ってたら、永さんじゃなくて、若大将特集でも名前が出たマネージャーの岩谷時子さんが作詞してたんだろうね。

相澤:そういう巡り合わせって面白いですね!

チャ:で、この二人の主演で同じタイトルの映画も作られて、そちらもヒットするんだけど、どうですか曲のほうは?

相澤:歌詞カード見たら編曲が川口真さんなんですね。僕、川口さんがアレンジした作品、けっこう好きな曲が多くて、これもヒットしたのは川口さんが歌謡曲にうまく寄せたからだと思います。

チャ:確かに、川口さんの貢献度も大きいね。オレね、新卒で入った制作プロで、川口さんの息子さんと同期で、その縁でご自宅に何度かお邪魔してるのよ。将棋指したりなんかして(笑)。

相澤:へー! いろんな縁がありますね!

チャ:それはさておき、これが大ヒットしたんで「もっとベンチャーズに曲書いてもらおう」ってことになって、この曲が生まれるわけですよ。

(♪ターンテーブルで演奏)

チャ:70年5月25日発売、渚ゆう子の『京都の恋』。これはね、大阪万博を記念して書いた曲で「KYOTO DOLL」っていうタイトルのインストだったんだけど、これに歌詞を付けて歌ったらこれまた大ヒットしたのよ。

イノジョー:これもメチャメチャ売れたねえ。

チャ:ちなみにこれも川口真さん編曲。瞬くん、これはどう?

相澤:琴が入ってたり和の心も表現されてますけど、これもエレキサウンドでありながら、見事に歌謡曲へ寄せてますね。

チャ;そうなのよ。渚ゆう子には、このあと第2弾で『京都慕情』って曲を書いてまたヒットするんだけど、それなんか完全に歌謡曲だから。

イノジョー:あれもいい曲だったねぇ。

チャ:ベンチャーズに頼むと日本人以上に日本人っぽい曲になるって、不思議だよなあ。オレ、ベンチャーズって実は日本人じゃないかって疑ってたりして(笑)。

相澤:思うんですけど、作詞家の松本隆さんが女の子の気持ちを見事に表現できるのも、女性じゃないからこそ書けるってあるじゃないですか。それと同じで、日本人じゃないベンチャーズだからこそ、より日本人っぽい曲が書けたんじゃないですか?

チャ:なるほど、客観視できるってことね。核心を突く意見ありがとうございます!……じゃ次回もまた、エレキ歌謡の続きをやりますか。

相澤:すごく勉強になります! この「魔女バー」も最高ですね!

チャ:同感。泊まっていこうかな(笑)。てなわけで、イノジョーさんと狂夜さん、また次回もお世話になります!

……次回も、「エレキ歌謡」について二人があれこれ語ります! お楽しみに!

——————————————————
今回お邪魔したお店:「魔女バー ハロウィン」
東京都渋谷区恵比寿西1-2-7-3F
JR山手線・埼京線、地下鉄恵比寿駅西口より徒歩1分
営業時間:20:00〜翌5:00 日曜も営業 基本休みなし
地図はホームページにて(道案内動画もあり)

http://majobar.com
——————————————————

音楽プロデューサー:イノジョーさんのイチ押しアーティストは下記。
和歌山プロモーションソング「マイヤコンディアス」絶賛発売中!
◆魚住弘樹 http://uozumihiroki.com/

——————————————————
▼相澤瞬 おすすめライブ情報はこちら!▼
8月12日(日)吉祥寺シルバーエレファント(ニュー昭和万博)

◆ニュー昭和万博 レコ発ディナーショウ
レコ発 ワンマンディナーショウ
「新人類の進歩と調和 2018」
開場18:00/開演19:00
前売券 ?2,500(1D別) / 当日券 ?10,000(5D別)

■前売券のご予約はnewshowa@gmail.com、吉祥寺シルバーエレファント店頭、Twitterで受付中!

——————————————————

【チャッピー加藤/Chappy Kato】

昭和42年(1967)生まれ。名古屋市出身。歌謡曲をこよなく愛する構成作家。好きな曲を発売当時のドーナツ盤で聴こうとコツコツ買い集めているうちに、いつの間にか部屋が中古レコード店状態に。みんなにも聴いてもらおうと、本業のかたわら、ターンテーブル片手に出張。歌謡DJ活動にも勤しむ。
好きなものは、ドラゴンズ、バカ映画、プリン、つけ麺、キジトラ猫。

【相澤瞬/Shun Aizawa】

昭和62年(1987)生まれ。千葉県出身。懐かしさと新しさを兼ね備えた中毒性のある楽曲を、類い稀なる唄声で届けるシンガーソングライター。どこまでもポップなソロ活動、ニューウェーヴな歌謡曲を奏でる「プラグラムハッチ」、 昭和歌謡曲のカバーバンド「ニュー昭和万博」など幅広く活動。
好きなものは、昭和歌謡、特撮、温泉、うどん、ポメラニアン。

関連記事(外部サイト)