腐女子の初彼は「チャラくてゲスい」イタリア人! 日vs伊のカルチャーギャップ交際に恋愛モノへのイメージが変わる?!

腐女子の初彼は「チャラくてゲスい」イタリア人! 日vs伊のカルチャーギャップ交際に恋愛モノへのイメージが変わる?!

『イタリア人の彼氏がクズでもじょこは困ってます!(星海社COMICS)』(もじょこ/講談社)

 小生は恋愛モノが大嫌いである。特に恋のさや当てやすれ違いなどを見ていると、ストレスが溜まって仕方がない。登場人物に対し「なぜ好意を抱く相手に、そんなつまらん意地を張るのだ! そこで迷うな!」と、思うことしばしばで、その定番演出を全否定したくなる。そんな小生であるが、このカルチャーギャップ国際恋愛である『イタリア人の彼氏がクズでもじょこは困ってます!(星海社COMICS)』(もじょこ/講談社)にはちょっと違ったものを感じた。

 恋愛モノとしてのアイデンティティを感じさせない凄まじいタイトルの本書は、京都在住の新人マンガ家であるもじょこ氏と、京都観光に来たイタリア人、通称イタ君がカルチャーギャップに戸惑いながらも、愛を深めていく4コマエッセイマンガである。日本の古き良き古都の風情を残す京都を舞台に、異邦人との出会いとなれば、かの『ローマの休日』のような胸がトキメク展開を期待される読者も多いだろうが、そんな期待はまったくの無駄である。なにせ、もじょこ氏は今まで恋愛経験がない上に腐女子、イタ君はイケメンだけどチャラくてゲスい。長いこと避けていたジャンルだが、今はこんな組み合わせでも成立するのかと隔世の感があり、小生もこのキャラクター像にとても興味を惹かれたのだ。

 なんといってもこのイタ君が、小生はとてもお気に入り。本書のキャッチフレーズにも「チャラくてゲスい」と書かれるくらいで、作中でも「キザで見栄っ張りで喧嘩っ早く、働かない度も他地域の50倍」と冒頭から。さらにもじょこ氏の化粧品を使ったり、自撮りが好きだったり、日本製の寿司柄ソックスを愛用したりと、間近で見たらドン引きなのかもだが、なぜか魅力を感じてしまう。イタ君のポジティブさが、それらの欠点を補って余りあるのだ。キザな面も実にイタリア男子らしいオシャレさ。普段は予定が無ければ引きこもり生活だというもじょこ氏は、そんな姿にほれ込んだのか。これもまたカルチャーギャップの面白さだと思う。

 また、本書の後半でもじょこ氏は、イタ君の招待でイタリアへ1か月間滞在することになるのだが、空港へ着くなりイタリアのイメージが崩れ去る。イタリアといえばオシャレに気をつかうともじょこ氏も思っていたが、出迎えのイタ君(三十路過ぎ)は、夏場とはいえタンクトップに短パンのラフすぎるスタイル。周囲を見回すと、他にもタンクトップや上半身裸の男性ばかり。イタ君からすれば「僕の街じゃ夏の間はこの格好は正装なんですけど!!?」とのこと。

 そんなイタ君も、地元じゃ高速鉄道の車掌さんという立派な職業を持っている。日本でいえば新幹線に相当する鉄道で、乗務して10年近くなるそう。作中ではすぐに休暇を取りたがり、勤務中も昼寝をしたり携帯を弄ったり好き放題と描かれているが、実はエリートなのだ。そこで、もじょこ氏には疑問が浮かぶ。普段から呑気な生活リズムなのに、鉄道乗務が務まるのかと。対する彼の答えは「僕も遅れるけど電車も遅れますから、ノープロブレム」。

 諸外国の鉄道は遅れるのが当然と聞いているが、イタリアも例外ではなかった。イタ君いわく「日本の常識は捨てやがれ、電車は平気で100分遅れてくるぞ、コーヒー飲んでシエスタ(昼休み)してろ!!」「車掌さんは暇な時は寝ているぞ。困ったことがあれば、寝ている車掌を見つけて起こしてあげよう!!」とのこと。これもまたカルチャーギャップを感じる話だ。もっとも、日本が他に類を見ないほど、正確な運行を成し遂げているともいえるのだが。

 このようにカルチャーギャップに彩られた本書だが、そもそも恋愛なんてお互いのギャップを埋めつつ進展するものかなとも思う。日本人同士でも生まれ育った地域が違えば、文化も違うものだ。たとえご近所でも家庭内での習慣は違うものだし、ましてや作中の二人はネガティブ女子とポジティブ男子。なれど、そのギャップへの好奇心とお互いに相手を思いやる気持ちが、愛というものを育むのかと感じる次第である。これを機に、小生も恋愛モノへの忌避感を埋めていければいいのだが。その前に、実際の女性とお付き合いしたい!

文=犬山しんのすけ

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