ソニーの"音楽×アニメ"「MUSIC THEATER 2017」で見えた20年の軌跡と未来

ソニーの"音楽×アニメ"「MUSIC THEATER 2017」で見えた20年の軌跡と未来

画像提供:マイナビニュース

●「本気で好きなやつが、本気になって作り上げる」ライブ空間
5月27日と28日にさいたまスーパーアリーナで開催された「MUSIC THEATER 2017」は、ソニーミュージックグループが"音楽×アニメ"というコラボレーションの軌跡と、新たな世代が作り出していくであろう未来、その祝賀だった。音楽と映像のコラボレーションは、多くのアニソンファン一人ひとりへの、感謝の気持ちが表れていた。

「本気で好きなやつが、本気になって作り上げる」とライブ中に語ったのは、シークレットゲストとして登場したT.M.Revolution・西川貴教。その魂が脈打ち続けたこれまでの轍は、アニメタイアップや国内外のライブイベントでの実績があるシンガーやグループを集めたレーベル「SACRA MUSIC」へとつながった。

その所属ミュージシャンを中心に、ソニーミュージックグループの力を結集して生まれたのが、「MUSIC THEATER2017」のステージ。ほとんどMCらしいMCもなく、次から次へと楽曲が届けられたこの一夜、約5時間で53曲が披露された。そのすべては紹介しきれないが、特に注目したいステージをピックアップする。

会場ステージを見てみると、中央には大きなLED画面、舞台左右には小さめのスクリーンと計3枚の画面が。ライブ中の大画面ではアニメ映像が流れ、小画面ではミュージシャンやシンガーが捉えられていた。また、舞台からは花道が続き、会場真ん中のセンターステージがせり舞台となってシンガーが登場する仕掛けになっていた。

驚かされたのが、この日使用されたであろう映像や音声関係のコンソール群が、200人程度の観客は収まりそうな後方スペースに設置されていたことだ。バンドセッティングは複数用意され、各ミュージシャンに付くサポートメンバーやバンドに対応していた。

このこともあってか、バンドアンサンブルやボーカルの声を含めた音像はバッチリ、CDでは聞こえなかった音にも気づけそうなほど、奏でられる音色の数々がとてもクリアに聴こえた。「本気で好きなやつが、本気になって作り上げる」という西川の言葉と想いが、これらのセッティングからもうかがい知れる。

今夜の宴、その栄えあるトップバッターを務めたのはLiSA。ライブ開始直前に流れ始めたオープニングムービーの中で、いつの間にかセッティングされたお立ち台を見つける。ペンライトで場内をピンク色に染めていたファンは、その姿を前にどよめいた。

赤いワンピース調の衣装を身にまとい、1曲目「Rising Hope」の途中で「さぁ、いくぞ」と煽れば、観客も一気に動き始める。「crossing field」「oath sign」と繰り出された3連発を聴くと、持ち前のハイトーンボイスとロックサウンドでアニソンシーンを飛び越えて数々のロックフェスにも登場してきた彼女のパフォーマンス力に圧倒させられる。

「この瞬間を全部つかむ、その準備はいい?」と前置きして始まったのは、『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』の主題歌「Catch the Moment」。"君といられるいま、この瞬間、この時間"をしっかりと愛していこうというこの楽曲、歌詞はLiSA自身が書き上げたものだ。それまで大きなアクションで観客を魅了していた彼女は、ステージの真ん中に置かれたお立ち台の近くでピタリと立ち止まり、しっかりと言葉を伝えよう、歌い上げようとする思いが伝わる。

歌い終わると、「これからみんなが好きなものがたくさん出てくるよ! 楽しんでいってね!」とあいさつ。続く雨宮天にバトンを渡す。

シークレットゲストとして登場した雨宮天が、自身のシングル「Skyreach」をセンターステージで歌い上げた後、GARNiDELiAが登場。黒革の衣装で登場したメイリアとtokuは、生バンドによるエレクトロサウンドの「ambiguous」「BLAZING」で観客をさらにハイボルテージへと誘っていく。「約束-Promise code-」では2名のダンサーと扇子を駆使したダンスを披露。ニコニコ動画やYouTubeなどで「踊ってみた」動画を投稿している彼らは、この日多く登場した2010年代にデビューしたミュージシャンの中でも一際異彩を放っていた。

ハイテンションな空気が続いてきたが、ELISA、高垣彩陽、さユりのステージではミドルテンポかつゆったりとした楽曲が多く奏でられた。高垣にはイメージカラーのピンクに、さユりにはトレードマークとなっている青色のポンチョに合わせて青に、それぞれにサイリウムを灯しながら観客はじっくりと聞き惚れた。

この日のステージ演出およびセットリストで特筆すべきだったのは、アニメ作品の映像を大胆に使用してきたことだ。全曲アニメタイアップの楽曲であり、オープニング(OP)あるいはエンディング(ED)に使われた曲には、そのノンクレジット映像がステージ真ん中の大画面で流され、2番歌詞以降はアニメの映像が今回のイベント限定の特別編集版で流されていた。

これほどまでにアニメ作品の映像を大胆に使用するアニソンライブを、筆者はそう簡単に思い出すことができない。映像や音声関係のコンソール群に加え、ここまで入念な演出にこだわったステージを見ると、ソニー・ミュージックがアニメ作品やアニメシーンに対し、どれほど大きなリスペクトと愛情を持って今日のライブを作り上げたかを実感することができる。

同じく印象的だったのは、流れている作品に対してペンライトで観客がアンサーを返していたことだ。中でも、ELISAがアニメ映画『楽園追放 -Expelled from Paradise-』の主題歌「EONIAN -イオニアン-」を歌ったとき。宇宙空間をイメージするようにペンライトを青色にするファンが大多数ではあったが、同作のヒロインであるアンジェラ・バルザックのコスチュームをイメージしたように緑色のペンライトをつけるファンも多く見られた。音楽と映像のコラボレーションを受けとりつつも、思い思いに楽しむファンの姿を、確かに見ることができたのだ。

さユりのあとに出てきたのは、この日が初めてのライブ出演となった三月のパンタシア。TVアニメ『亜人ちゃんは語りたい』のEDテーマである「フェアリーテイル」を歌った際、サビでは、ステージサイドのライトが緑、黄色、ピンクと会場を染めていたが、それは同作に登場するキャラクターやエンディング映像に合わせていたからであろう。

パステル調の色合いに染められた舞台、背中から光を浴びて顔を見せないようにしていたボーカル・みあの立ち振る舞い、それらがこれまで公に姿を見せたことがない彼女らしい、非常に初々しいステージとなっていた。

mizuki、Tielle、Gemieらゲストボーカルと共にパフォーマンスしたSawanoHiroyuki[nZk]によるミドルテンポの楽曲が続き、静かに酔いしれていた会場のムードを、戸松遥は「courage」「motto☆派手にね!」「Q&A リサイタル!」の代表曲3連打でハイテンションな空気へと一変させる。『かんなぎ』のOPテーマ「motto☆派手にね!」では、自身が演じたヒロイン・なぎが披露しているダンスを完コピし、観客の期待を大きく超えた驚きを与えてくれた。

「俺達がデビューしてから変わらないことがあります、ライブが好きだということ!」と高らかに告げたFLOWは、前から後ろへとビッグウェーブを起こしたり、観客全員での大合唱を促したりするなど、一体感のあるライブアクトを披露。ここで小休憩がはさまり、第1部が終了したわけだが、ライブ開始からここまで約2時間半で26曲、非常に速いペースで公演が進んでいた。

●多様なアーティストの出自、ソニーのアニメへの様々な参画
第2部はシドからスタート。綾野ましろによる「NEWLOOK」「ideal white」を挟み、Aimerが登場した。「Brave Shine」「RE:I AM」は、本来ラウドなギターとエレクトロなサウンドが組み合ったアグレッシブな曲なのだが、この日は自身とピアノ奏者、2人のみのミニマルなセットでのパフォーマンスとなっていた。ピアノによる最低限の音色に絞った伴奏とAimerの伸びやかな歌声とが合わさり、より引き込まれるアクトであった。

シークレットゲストのEGOISTは、ステージ画面の映像で登場。春奈るなの伸びやかな歌声が響くステージング、TrySail3人のハツラツとしたパフォーマンスがそれぞれ繰り広げられ、この時点で残り登場予定となっていたのは、ClariSとKalafinaの2組だ。

ソニーミュージックグループとアニソンの繋がりは、多くのミュージシャンやシンガーを生み出してきた。高垣彩陽と戸松遥、2人が所属するスフィアの後輩に当たるTrysailはソニーミュージックグループのミュージックレインに所属し、現在のアニソンシーンを席巻している声優アイドルの嚆矢としてリードしてきた。

一方、ClariS、三月のパンタシア、CHiCO with HoneyWorks、GARNiDELiA、加えてシークレットゲストとして登場したEGOISTのコンポーザー・ryo、彼らは動画サイトで大きなヒットと人気を手に入れたクリエイターとして注目され、アニソンシーンへと食い込んできた次世代を担う存在として若い世代から大きな支持を受けている。また、綾野ましろと春奈るなは本格派アニソンシンガーとしてその道程を歩んでおり、LiSA、Kalafinaはそれぞれ『Angel Beats!』『空の境界』とアニメ作品をきっかけにして結成、デビューした存在だ。

年を経るごとに、ソニーミュージックグループの各レーベルはそれぞれのやり方でアニソンシーンやアニメ作品に参画し、これまでのアニソンシーンやJ-POPシーンにおけるアーティストマネジメントの壁を壊していくかのように、新たな波を作り続けてきたといっても過言ではない。

ClariSとKalafinaの2組は、文字通りその中心に位置するグループであろう。ClariS×GARNiDELiAのコラボから、独特のハーモニーを封じ込めた「ヒトリゴト」「コネクト」が続き、Kalafinaの「Magia」へとつながった流れは、『魔法少女まどか☆マギカ』のOPテーマとEDテーマが続けざまに披露されたというだけではない。ニコニコ動画での人気から注目されたグループと『空の境界』制作の際に結成されたグループ、それぞれ動画サイト発とアニメ作品発という独自の出自をもった2組のユニットが並び合う、この日このアクトでしか起こり得ない奇跡的な並びでもあったのだ。

Hikaruが主旋律をリードし、WakanaとKeikoが声を重ねていった「Magia」で観客を昂ぶらせ、「to the beginning」「アレルヤ」と「One Light」が披露された。Kalafinaがこの日提示してくれたのは、"ボーカルのハーモニーの心地良さがいかに聴くものの心を奪ってしまえるか"だ。3人のハーモニーも見事に重なり「前へと進もう」というメッセージがより鮮やかにきらめき、まるでこの先の挑戦を祈るかのように響く。

シリアスな表情をしたアーティストイメージや曲調が先んじてしまうKalafinaだが、MCでは、この日集まった女子に呼びかけたはずなのに男子の野太い声が四方八方から上がり、困惑するKeikoの姿に客席が和む。そのギャップとボーカルのハーモニーに聞き惚れ、会場中が温かいムードへと変化していった。

後のシークレットゲストにして大トリ、T.M.Revolutionが登場すると、この日一番の大歓声が上がった。実は彼、2週間前に自身の20周年アニバーサリーツアーを同地で終えたばかり。その際は水樹奈々もサプライズで共演し、盛大に自身のキャリアに花を添えていた。そんな公演の直後とあってか、この日のライブアクトはまさに力強さに溢れたものだった。披露された「INVOKE -インヴォーク-」「ignited -イグナイテッド-」「Meteor -ミーティア-」はエレクトロなサウンドが持ち味だが、この日はバンドサウンドに大胆にアレンジされていた。「今夜は全部オレがもらった!」というMCや合唱で観客を煽り続けながら、黒と金を基調とした衣装を次々に脱いでいく。自身のファンだけでなく、アニソンファンに対しても魂を高ぶらせる姿が見てとれた。

「本気で好きなやつが、本気になって作り上げる」と語ったのは、「Meteor -ミーティア-」を披露したあと。また「僕らソニー・ミュージックにまつわる曲、アニメ作品が一堂に集まって、観客みんなと一緒に楽しめる。自分が好きなものに好きなだけ魂を込めて作る、それが良いものになるとずっと信じてやってきました。そうして生まれた流れが、今日までずっとつながってきた。それは、ファンのみんながいなければできなかった。今日は、本当にありがとう!」という熱いメッセージから、この日最後の曲として披露されたのは、20年前にソニーミュージックグループとアニメ作品との繋がりでヒット曲となった『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』のEDテーマであり、T.M.Revolutionにとってもブレイクのきっかけとなった「HEART OF SWORD〜夜明け前〜」だ。

アンコールの拍手を鳴らす余裕すらなく、登場したミュージシャンとサポートミュージシャン、ステージ演出を担当したさまざまなスタッフクレジットが書かれたフィナーレ映像、それはMUSIC THEATERの言葉通り、音楽と映像によるコラボレーションという意義を深く伝えてくれた。そして、最後に画面にあらわれたメッセージはこうだ。

「すべての『アニメファン』すべての『音楽ファン』に感謝を
これからも『アニメ』と『音楽』のコラボレーションを一緒に体験していきましょう」

生音×生映像を強く結びつける演出を徹底することで、観客をライブ会場に居ながらにしてアニメ作品の物語へと没入させていく手法は、まさに新たなライブ体験であった。ソニーミュージックグループとアニソンの関係が新たなステージへと進んでいくというメッセージが、多くの観客の心に強く刻まれたことだろう。

■プロフィール
草野虹
福島県いわき市生まれ。COOKIE SCENE、Belong Media、MEETIA、音楽だいすきクラブなど様々な音楽サイトに書き手/投稿者として参加、現在はインディーミュージックサイトのindiegrabにインタビュアーとして参画中。幼いころから身近に同人作家兼同人コスプレイヤーの女性がいたことにより、日本のMAGカルチャーにドップリと浸かっており、現在も知り合いには音楽やアニメ好きが多い。水泳や野球などのスポーツを部活動やサークルを通じて経験してきたこともあり、体育会系音楽オタクとして日々過ごしているアニメも大好きな男。
(草野 虹)