今度は僕らがファンを動かしたい - 菱田正和監督と西浩子Pに聞く『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』

今度は僕らがファンを動かしたい - 菱田正和監督と西浩子Pに聞く『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』

画像提供:マイナビニュース

●ファンの熱狂的な応援に「正直、負けたな…と思いました」
2016年に公開され、「応援上映ブーム」の火付け役となり、20回、30回と何度も劇場に通う熱狂的なファンが続出した劇場版アニメーション『KING OF PRISM by PrettyRhythm』。その待望の新作となる『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』が6月10日より全国公開されている。『KING OF PRISM by PrettyRhythm』には最後に次回予告ともいえるエピローグが盛り込まれていたが、公開当初は新作を制作する予定が立っておらず、まさにファンの熱い応援にあと押しされて今回の新作公開が実現した。

そんな『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』について、今回は菱田正和監督、そしてエイベックス・ピクチャーズの西浩子プロデューサーに話を聞いた。ファンの熱い声援に応えるべく、監督はじめ、スタッフが作品に掛けた思いとは?

○新作の制作決定に、プレッシャーよりも安心感が勝った

――前作の『KING OF PRISM by PrettyRhythm』は「応援上映」が話題となり、ファンの熱狂ぶりがさまざまなメディアで報道されていました。それを受け、新作で初めて『キンプリ』に触れる方も多いと思いますが、前作を見ていなくても『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』は楽しめますか?

菱田:もちろん、新しく観にくる方をある程度想定して、ストーリー自体はごくシンプルになるよう作りましたね。(速水)ヒロが挫折から立ち上がり「プリズムキング」を目指すという。それだけ追っていただければ大丈夫ですし、初めて観る方にとってとにかく話がわかりやすくシンプルであることを心がけました。

――昨年の応援上映のファンの熱狂ぶりはすさまじいものがありましたよね。前作はある程度ファンの合いの手や動きを想定して作られたとのことですが、ファンの応援方法で一番予想外だったものは何ですか?

菱田:まずは十字架ですよね。ペンライトで十字架を作っていたのと、あと法月仁のポンポンポンの真似(法月仁がステッキを片手で持って、もう片方の手に3回打ち付ける仕草)ですよ。なんだこれは!?って思っていたら、そのうち今度はペンライトで「仁」て文字を作り始める人が出て来て……。それを見て、ああもう俺はなんて浅はかだったんだろうって(笑)。あの子たちの、あのペンライト芸はちょっと予想できなかった。正直、負けたな……と思いましたね。

――そんなファンの熱狂にあと押しされて今回の新作の製作が決定しましたが、取り掛かった時にプレッシャーはあったのでしょうか?

西:プレッシャーは、正直に言うとそんなになかったですね。本当は感じなきゃいけないんですけど。これで作りたいものを作れる! わーい! みたいな喜びの方が大きくて。

菱田:そもそもプリズムキングカップを描く後編まで作らないと、僕たちが最初に想定したものが見せきれなかったので。プレッシャーというよりは、むしろ前作の続きを見せられる機会を得て、よかったなっていう安心の方が大きかったです。

――新作の制作が決まったのはいつ頃だったのでしょうか?

西:2016年3月に興行収入が2.5億を超えて、この状況であれば次回作を作っても大丈夫ではないか、という話になりました。そこから監督にはプロット作りに取り掛かっていただいたんですが、最終的に会社からの決裁が下りたのは9月で、そのタイミングでやっとファンの方にお知らせする事ができました(2016年9月11日に行われたイベント「KING OF PRISM Over the Rainbow SPECIAL THANKS PARTY!」内で発表)。

菱田:去年の3月9日にやった「サンキュー上映会」のあたりから次を考えておいてくださいと言われて、その月のうちにプロットを出した感じでしたね。

西:本当にお客さんには早く、「新作、作れそうです」っていうのを言いたくて心苦しかったですね。何回も来ていただいていたので……。

○キャラクター同士の関係性は、ファンの盛り上がりに影響を受けて

――『KING OF PRISM by PrettyRhythm』の予想外の盛り上がりを受けて、『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』を制作するにあたり、当初の予定と変えた部分はありましたか?

菱田:ほとんど変わってないですね。ただ、エーデルローズの新入生についてもっと知りたい、もっと知りたいというファンの声をよく聞いていたので、最初の想定より新入生についての描写は増えましたね。

――キャラクター同士の関係性が、より強く出ていました。

菱田:ファンの方が、前作を見て、ああじゃないか、こうじゃないかって新入生達について想像してくれたお陰で、こっちのイメージもすごい膨らんで。より深い関係というか、芝居を考えることができましたね。(香賀美)タイガと(十王院)カケルとか、最初はすごく仲が良いと考えていたわけではなかったんですけど、みんなが盛り上げてくれたお陰ですね。

――前作では、(太刀花)ユキノジョウと(西園寺)レオだけが二人でお風呂に入っていましたが、今回は新入生みんなで一緒にお風呂に入っていて、仲の良さを感じました。

菱田:もともと、ユキノジョウとレオはすごく仲が良い設定で、お互いにないものを持ってて、尊敬し合っている関係性だったので、だから前作では二人だけ一緒にお風呂に入ってる描写がありました。けど、新入生全体で見ると、まだ、みんなあの頃は一つにはなってなかったんです。そこに(一条)シンが入ることで、みんな一つになった。なんかいるじゃないですか、その人がいるだけでみんな喋れるんだけど、いなくなった途端、みんな黙っちゃうって人。多分そういう子なんですよシンは。

――シンの存在が新入生達の絆を強くしたんですね。そういえば、以前、シン役の寺島さんにインタビューした際に、「今回はシンとレオの絡みが多くて、監督が僕の気持ちを汲んでくれたのかもしれません、レオくん推しを言い続けた甲斐がありました」とおっしゃっていましたが、その真相は……?

菱田:そこは全然汲んでいませんね!(笑)。まあ、レオが画面の中に入ってくると華やかになるので、多分それで、出番が増えただけだと思います。

●想像するより手ごわいファンに、負けないために
○大和アレクサンダーの人気は予想外だった

――今回の新作で中心となるOver The Rainbow(通称:オバレ)のヒロ、(神浜)コウジ、(仁科)カヅキについても伺っていきたいと思います。今回、コウジがヒロに一喝するシーンがあり、衝撃的でした。

菱田:オバレの3人は、かつてプリズムショーの「三強」と呼ばれた(氷室)聖、仁、(黒川)冷に紐づけて描きたかったんですよ。それこそ仁のところにコウジがいって、ヒロの敵として現れるくらいの物語を、実は考えていたんです。ところが、オバレの3人が想定とは違った方向に転がって行って。僕としては最初に想定していたものとは違う物語になりましたけど、これはこれで面白い話になったのかなと思います。

――なんと……!

菱田:あと、本当はカヅキVS黒川冷って構図を作りたかったんですよ。アレク(大和アレクサンダー)は、当初の設定だと黒川冷の大ファンで、冷がかつてやってたジャンプを飛んだり、冷のコピーみたいなキャラクターとして登場させて、カヅキと戦わせようと思ってました。そうしたら、予想外にアレクが人気になっちゃってね(笑)。あまりにも人気が出たので、オリジナリティを足していったんです。

西:本当に、アレクの人気は予想していませんでしたね。ファンの方の声を聞いててびっくりしていました。

菱田:あと、コウジはプリズムキングカップに出すのも考えたんですけどね……。でも「CRAZY GONNA CRAZY」に乗せて、ドSなコウジを見せることができて面白かったなと思いますね、自分としては。

――ドSなコウジでしたが、そんなコウジのカレーのレシピにりんごとハチミツが入っていて、そのカレーを食べてヒロが元気を出すシーンにグッときました。

菱田:あそこは、バナナと蜂蜜にしようか迷ってたんですよね(笑)。でも、たまたま偶然、ヒロは最初に飛んだジャンプでりんごを持ってて、コウジは前作でハチミツキッスやってて。これ2つ合わせたらカレーじゃんってことであのシーンが生まれました。偶然が作り出した物語ですね。

西:泣けるシーンなんですが、お尻が突然出てきて……試写会でも皆さん笑っていらっしゃいました(笑)。

菱田:あれシナリオだと泣けるシーンなのにね(笑)。最初のコンテではないんですよ、あのお尻。でもアフレコをやった後に、あの絵をちょっと挿そうかって。今回初めて見た人には訳がわかんないだろうなと思って入れたシーンなんですけど、知っていても訳がわからないシーンになりました(笑)。

――監督が、以前Twitterで、「『プリティーリズム』シリーズを視聴していると100倍楽しめる」とおっしゃっていましたが、前作をきっかけに『キンプリ』の起源となった作品として『プリティーリズム』シリーズを全て視聴したファンもたくさんいました。『プリティーリズム』シリーズを通してこそ楽しめるポイントは、どこでしょうか?

菱田:今回の主役はOver The Rainbowの3人であり、ヒロなんですけど、彼らは『プリティーリズム・レインボーライブ』から出ているキャラクターなので、そこから追っかけてればより深い物語だっていうのがわかるはずです。それに、物語以外の細かい要素、例えば看板や新聞記事ひとつ取っても『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』や『プリティーリズム・オーロラドリーム』のオマージュだったりするので、そういうのを知っていると全く飽きないと思います。100回見ても耐えられる。100人乗っても大丈夫、みたいな(笑)。

――仁が若い頃にプリズムショーをしているシーンで、『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』に登場したペアチャムがいましたよね。しかも2匹。

菱田:あれはミミーとヤミーですね。

――なぜその2匹だったのでしょうか?

菱田:それは簡単で、当時グッズが1番売れたのと2番目に売れたペアチャムだからです。

西:悲しい……。

菱田:人気の最大公約数を狙ったってことですね。仁のところに来たのはその2匹だけだったんでしょうね。

西:売れた子だけっていうのが仁っぽいですね。

菱田:あと高田馬場ジョージが歌う曲も『ディアマイフューチャー』に登場した「LOVE?MIX」の曲ですからね。一つも飽きる要素がないと思います。

○収録でセリフがどんどん変わっていくのがこの現場の"伝統"

――寺島さんが、収録で一番印象に残っているのが、『プリティーリズム・オーロラドリーム』の(高峰)みおんのセリフをオマージュした「僕、生まれた」というセリフだったそうです。現場でいきなり指示を受けた時は、オマージュということを知らなくてすごいセリフだ! と思ったそうで。

菱田:あそこのシーンに、何かセリフを入れましょうよって長崎さん(※長崎行男音響監督)と喋っていた時に、やっぱり「私、生まれた」しかないよねって話になって「僕、生まれた」をお願いしたんですけど、その時のアフレコにちゃんと、みおん役の榎あづささんがいたんですよ!

西:寺島くんは収録が終わった後にバラされるっていう。

菱田:プリズムの女神様は見ているなって思いましたね。でもあづささんはアフレコでは何も言わなくて、終わった後に「言っていましたね」ってちょっと嬉しそうにしてましたよ。それと、シンくんのアフレコの時に、近藤さん(※『オーロラドリーム』『ディアマイフューチャー』に登場したショウを演じる近藤隆)がいて、「無限ハグ」の昔と今がいる!と思って(笑)。

西:榎さんの「私、生まれた」も当時のアドリブだったんですよね。

菱田:そう、榎さんが作ったアドリブだったんですけど、それがああやって受け継がれるのを見ると面白いですね。そうやってアドリブでセリフが追加されていくのも、この『プリティーリズム』シリーズの醍醐味なんです。台本通り読んでも、その場で「つまんないね」ってなったら簡単にセリフが変わるんですよ。

――他の現場よりもセリフが変わることが多いのでしょうか?

菱田:かなり多いと思いますよ。それに、演技についても「ちょっと違うパターンで」とだけ伝えて、その場で、即興で違う演技をやってもらうのが、この現場の昔から受け継がれている伝統なんです。今回の収録も、それが遺憾なく出ていましたね。杉田智和さんも今回参加してくれましたけど、「違うパターンで」って、それだけしか言われないんですよ。でも杉田さんはやっぱりすごい人なんで、軽々と僕らの予想を越える演技をしてくれました。

――寺島さんが収録について「監督の指示に必死についていった」とおっしゃっていたのは、まさにそうした臨機応変な対応が求められていたからだったんですね。寺島さんと言えば、一条シンくんをやるまでは大人っぽいキャラクターを演じることが多く、シンくんで、役の幅が広がったとおっしゃっていました。寺島さんをキャスティングしたのはどんな理由からだったのでしょう?

菱田:西さんのキャスティングは、オバレの3人を選んだ時から冴えてるんですよ。だから、僕らはもう西さんにお任せしますって言ってて。最終的には西さん一人で全部決めたんですけど、結果的にはすごく良かったですよね。

西:ありがとうございます。

依田:(※同席していたタツノコプロの依田健プロデューサー)シンに関しては、結構意見が割れたんだよね。もうやり直そうって 僕たちは思ったんだけど、西さんが「一日ください! 一晩考えます!」って言って決めて。

西:『プリティーリズム』シリーズは、オーディションで、必ずプリズムジャンプをやっていただくんです。「無限ハグ!」とかをお願いするんですけど、やっぱりちょっと恥ずかしそうにやってらっしゃる方が多くて。そんな中、寺島さんはニコニコしながら「よーし!」って感じでやってらっしゃったのが印象に残ったんです。

菱田:プリズムジャンプは良かったよね。

西:恥ずかしさが出ちゃったり、カッコつけたりも一切なくて、楽しそうにやってくださっていたので。そこがシンぽいなと思って寺島さんに決まりました。

――最後になりましたが、『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』へ掛ける監督の意気込みを教えてください。

菱田:さっき十字架の話などもしましたけど、前作では、ファンの方の予想外の応援スタイルには負けたな……という思いがあったんですよ。だから、今回はこちらがファンの方の掛け声やリアクションを想定して作った部分が、前作の10倍、いや30倍になっています。ファンの方をこちらの意思で動かすっていう、そういう部分を増やしましたね。まあ、やってくれるのかはわからないですけど。こっちが想像している以上に向こうは手ごわいので(笑)。多分こちらで想定したことをやってくる上に、何かをファンの方が加えて来て、また僕は負けるんだろうなと思います。

――すでに負けを見越しているんですね。

菱田:まあ負けませんけどね!!(笑)。

劇場版『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』は、新宿バルト9ほかで全国公開中。

■スタッフ
監督:菱田正和、脚本:青葉譲、CGディレクター:乙部善弘、キャラクター原案&デザイン:松浦麻衣、プリズムショー演出:京極尚彦、音楽:石塚玲依、音楽制作:エイベックス・ピクチャーズ、音響監督:長崎行男、音響制作:HALF H・P STUDIO、原作:タカラトミーアーツ/シンソフィア/エイベックス・ピクチャーズ/タツノコプロ、アニメーション制作:タツノコプロ、配給:エイベックス・ピクチャーズ、製作:キングオブプリズムPH製作委員会

■キャスト
神浜コウジ:柿原徹也、速水ヒロ:前野智昭、仁科カヅキ:増田俊樹、一条シン:寺島惇太、太刀花ユキノジョウ:斉藤壮馬、香賀美タイガ:畠中祐、十王院カケル:八代拓、鷹梁ミナト:五十嵐雅、西園寺レオ:永塚拓馬、涼野ユウ:内田雄馬、法月 仁:三木眞一郎、如月ルヰ:蒼井翔太、大和アレクサンダー:武内駿輔、高田馬場ジョージ:杉田智和、氷室 聖:関俊彦、黒川 冷:森久保祥太郎、山田リョウ:浪川大輔

(C)T−ARTS/ syn Sophia / エイベックス・ピクチャーズ / タツノコプロ / キングオブプリズム PH 製作委員会
(高橋めねぎ)