細田守監督最新作『未来のミライ』発表 - タイトルの謎、ビジュアル、家族をどう描いたか、気になるスケジュール、7月20日公開の意味とは?

細田守監督最新作『未来のミライ』発表 - タイトルの謎、ビジュアル、家族をどう描いたか、気になるスケジュール、7月20日公開の意味とは?

画像提供:マイナビニュース

●『未来のミライ』制作のきっかけは?
『時をかける少女』『サマーウォーズ』などで知られる細田守監督の最新作発表記者会見が12月13日に行われ、細田守監督とアニメーション映画制作会社「スタジオ地図」の齋藤優一郎プロデューサーが登壇し、2018年7月20日公開の新作タイトル『未来のミライ』を発表した。

細田守氏は、『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』などを手がけたアニメーション映画監督。今回、『バケモノの子』から3年ぶりとなる最新作が2018年7月20日に全国公開されることが決定した。

そのタイトルは『未来のミライ』。前作、『バケモノの子』に引き続き、細田監督が自ら原作・脚本を担当。監督自身が感じた現代の家族の形や、子どもの成長をリアルに描いていくという。詳しくは次ページからの質疑応答まとめを参照してほしい。

「とある都会の片隅の、小さな庭に小さな木の生えた小さな家。ある日、甘えん坊のくんちゃん(4歳)に生まれたばかりの妹がやってきます。両親の愛情を奪われ、初めての経験の連続に戸惑うくんちゃん。そんな時、くんちゃんが出会ったのは、未来からやってきた妹、ミライちゃんでした。このちょっと変わったきょうだいが織りなす物語。それは、誰も観たことのない、小さなお兄ちゃんの大きな冒険の始まりでした」(公式資料から引用)。

まず、本作を制作するきっかけとして細田監督は「ひとことで言うと、4歳の男の子に妹ができて、その妹に両親の愛を奪われた。その愛を求めて旅立つという話です。僕自身、5歳の男の子と、もうすぐ2歳になる女の子がいます。彼らは純粋に母親の愛情を奪い合っているんです」と自身の息子と娘から着想を得たと語り、「4歳の男の子の目線を通じて、いま僕らが生きているこの世の中を、新鮮な気持ちで見返してみたい。その中で新しい発見があるんじゃないかと思ったんです」とコメントを残した。

また、公開日の7月20日にも意味があると語ったのは齋藤プロデューサー。「7月20日は、夏休みの初日。学校が終わって、これから夏休みで、どんな楽しいことをするかと気分が高まっているときです。『未来のミライ』は、子どもから大人まで楽しめるアニメーション映画なので、このタイミングで公開するのが一番いいと思いました。そして、ありがたいことに、まだ映画が完成していないのに現在57カ国で映画を配給することが決まっています」と続け、前作『バケモノの子』の最大上映館数458スクリーン以上の規模で公開することが決まっていると述べた。

作品に対しての詳細は次ページへ。

●細田守監督と齋藤優一郎プロデューサー質疑応答その1

●未来から妹がやってくるというアイデアはどこから?

細田 子育てをするのは大変なんですけど、それ以上に喜びがあるなと感じました。育てているいまは大変だけど、そのうちきっと大きくなって、あっという間に巣立っていくんだから、「いまは大変だけど、じっくり子育ての苦労と喜びを味わおう」と奥さんと話したんです。そこから、「いま赤ちゃんの自分の娘が中学生くらいの大きさになったらどうなるだろう」と考えたのがきっかけですね。

●今作では、どういった「新しい表現へのチャレンジ」を考えている?

細田 今回チャレンジしたことは、4歳の男の子・くんちゃんを主人公にするということです。なんで4歳かというと、この作品について考えたとき、僕の上の子が4歳だったからです(笑)。4歳の子どもが主人公の映画って、まったくないわけではないですけど、世界映画史のなかでは、あまり例はないと思います。

『クレヨンしんちゃん』でも5歳、『となりのトトロ』のメイは4歳とか、そのくらい。4歳と5歳ってだいぶ違うんですよ。うちの子はもう5歳になったんですけど、5歳になると「うんこ」とか「ちんちん」とか言い出す。だから『クレヨンしんちゃん』は5歳なんだと思いましたね(笑)。くんちゃんは4歳なので、ギリギリのところで、品の良い、家族で観やすい映画になったんじゃないかと思います。

●『未来のミライ』の主人公はくんちゃんだが、タイトルにはミライしか入っていない理由は?

細田 まず、くんちゃんという名前の理由ですけど、「くん」なのか「ちゃん」なのかわからないという、揺れ動いている象徴として描いています。その揺れ動いているアイデンティティはどういった未来にたどり着くのか、と考えています。

いまの世の中は大きく価値観が変わっていて、一昔前なら、結婚するのが当たり前でしたけど、いまは結婚をするしないや、結婚しても子どもをつくらないということも、つくる子どもの数も選ぶことができる。

僕は一人っ子なんですけど、当時は一人っ子が珍しかったので、僕も親もふつうじゃない扱いをされた記憶があります。でも、いまは多様な価値観を持つ社会になっている。その分、基準というものがないので、個人は揺れ動いているような時代なのかなと思います。

そういった「くん」なのか、「ちゃん」なのかをわからない人たちに当てはめて、そういった人たちがどういう風に、揺れ動いている価値観の中で生きていくべきか、未来はどこにあるのかを描いていこうということになりました。

『未来のミライ』というタイトルはいろんな意味にとれます。「妹が未来から来たから」、「妹の未来」、「未来という概念」、「ミライちゃん自身」、いろんな意味がある。僕みたいなおじさんが小さいときに考えていた未来といま思い描く未来は違うと思います。未来さえも揺れ動くなかで、いまの子どもたちは何を見て、育って、世の中を知って、大人になっていくのか。興味深い課題だと思い、こういったタイトルを付けました。

●くんちゃんとミライちゃんはどういった冒険を繰り広げるのか?

細田 約100分という映画なので、世界の危機といった映画的なサスペンスというよりは、家族の歴史をめぐる冒険になると思います。「自分自身を探す」とか「お母さんは昔からお母さんじゃなかったんだよ」とか、家一件と庭ひとつの中を冒険することで、世の中を開いていく。そういった内容になっています。

●ポスタービジュアルについて

細田 『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』はオリジナル作品なので誰も内容を知らないじゃないですか。なので「内容を知らない作品を観てもらうからには堂々としよう」ということで、これまではキャラクターが仁王立ちをするというビジュアルにしてきました。

『未来のミライ』は、まずダイナミックなポスターにしたいと思ったんです。大人が思っている以上に、子どもはダイナミズムなので、何かを飛び越えるというイメージで、くんちゃんとミライちゃんの絆の結びつきを形にしたいと思ったんです。

経済成長とか科学技術の発展とか、そういったものよりも、イキイキとした子どもの姿とか、人間のバイタリティそのもののほうが未来に直結するなと思いました。「子ども自身が未来そのもの」と感じてもらえるようなポスターにしたかったので、そういった意味では『時をかける少女』の、青空を背景にジャンプをするというポスタービジュアルとも共通項がありますね。

●これまでの作品とくらべてポスタービジュアルが丸っこい理由は?

細田 やっぱり子どもをかわいらしく描きたかったんです。スタッフもみんな言っているんですけど、男の子のかわいらしさは、作画をしていて楽しいんです。

たとえば、子どもの冬のほっぺたって、柔らかくて冷たくて気持ちが良いじゃないですか。そういうところをアニメーションで表現したいと思いました。そういったこともひっくるめて、4歳の男の子のやわらかさや、挙動の面白さ、暴れたときのめんどくささ、一緒にいるときの喜びといった魅力を描きたいですね。これまでも描いてきましたけど、今回はその気持ちがより強いです。

●細田守監督と齋藤優一郎プロデューサー質疑応答その2

●作品の舞台は?

細田 舞台は横浜市です。それも、みなとみらいのような中心地ではなく、磯子区とか金沢区のあたりの海側。家族にとって重要なことが過去に起きた、そういった理由があって、舞台に選びました。

●これまでも家族をテーマにした作品を描いていたが、『未来のミライ』では家族をどこまで描ききれたか?

細田 作り続けているということは描けていないということで(笑)。家族というテーマは、ひとつの作品で終わるモチーフではないなと思っています。『サマーウォーズ』は親戚がアクション映画の主人公だったら、『おおかみこどもの雨と雪』は子育てをするお母さんだったら、『バケモノの子』は出てくるキャラクターがみんな父親で、血がつながっていなくてもみんな父親になれるんじゃないか、といった物語。

『未来のミライ』はきょうだいを描いています。僕は一人っ子なので、きょうだいの感覚はわからないんですが、僕の息子に妹が生まれた瞬間、母親の愛をめぐる争奪戦です。愛をめぐる狂おしいほどのやりとり(笑)。人間って愛なしでは生きられないんだなと、愛を奪われた人間はこんなひどいことになるんだなと思ったんです。ここで愛を失ったとしたら、どう考えて、どういう答えを見つけるんだろう、と考えました。

家族を描くって今日的だし、家族そのものが時代とともに変化している。だからこそ描いていくし、興味が尽きないモチーフだなと思います。

●海外展開について

齋藤 『サマーウォーズ』ではドイツのベルリン国際映画祭に呼んでいただいたり、『バケモノの子』ではスペインのサンセバスチャン国際映画祭でははじめてアニメ映画がノミネートされたり、細田監督が歴史ある映画祭で評価されていることは、ほんとうに光栄なことだと思います。

最初は配給する国も多くはなかったんですけど、徐々に公開できるようになっていきました。よくTV放送や配信する国も含めて、100カ国、200カ国と数字を積み上げることが多いですけど、細田監督は映画監督なので、映画をきちんと公開してくれることが前提だと思っています。それくらい映画というものにこだわっています。『未来のミライ』は、現在57カ国から上映のオファーを頂いていますが、これからも増えていくと思います。

●『未来のミライ』は現在、どういったスケジュールで進行している?

細田 上映時間が約100分なので、これまでの作品よりもちょっと短いんです。なので、絵コンテもはやくできましたね。いまは作画を進めながら、声の演技をしてくださる方のオーディションを続けています。

齋藤 作品の完成はギリギリを目指しています。今回はもしかしたら上映時間が100分を切るかもしれません。だからといって、すぐに作品が完成するわけではないんです。尺が少ない分、予算も少ないと思うかもしれませんけど、そうでもありません。全スタッフが全力で作っていて、より純度が高い、表現したいものが凝縮されている作品になっています。一番いい形で作るのがスタジオ地図の使命ですし、細田監督もより高みを目指してにじり寄って作っていくと思います。あとは続報をお待ち下さい。

(C)「時をかける少女」製作委員会2006
(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS
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(加藤大樹)