ピアノを弾くと「お化け」が見える!? 天才ピアニスト姉弟の心模様を描く音楽マンガ『コントラスト88』レビュー

ピアノを弾くと「お化け」が見える!? 天才ピアニスト姉弟の心模様を描く音楽マンガ『コントラスト88』レビュー

『コントラスト88 (2)』(集英社)

 音楽や吹奏楽を取り扱った漫画は増加傾向にあるが、また新しく期待の作品が登場した。『コントラスト88』(作:川崎宙/集英社)である。この作品では、音楽や楽器のウンチク云々を詳細に語るというよりは、人間の心模様を取り扱うことに重きを置いているようだ。中でも姉弟関係、ライバル関係、師弟関係、家族関係など、人間関係の機微に触れ、それが築かれる経緯から壊される様子まで、迫力ある画風で描かれている。

 天才ピアニスト姉弟と言われ、高校でも一目置かれる和田黒乃(くろの)と白郎(しろう)だが、実は男勝りでがさつな姉に対して、泣き虫・弱虫の弟という、プライベートではオモシロ関係な2人。そのピアノの師匠を務めるのは、近所の坂の上にある謎のお屋敷に住む、徳丸光也(とくまる・みつなり)先生。優しくて「楽しい」を大切にしてくれる良い師匠である反面、レッスンは超厳しい。だが、2人の持つ実力と先生のおかげで、瞬く間に彼らはコンクールの覇者になっていく。

 子どもの頃、2人にはそれぞれ「お化け」と呼んでいる、音楽の精霊のようなものが見えていた。もっと良く弾けるように、気持ち良く音楽を奏でられるように、彼と彼女は導いてくれていたのだ。しかし高校生になった白郎は、実は2年も前からその「お化け」が見えなくなってしまっていた。黒乃にはまだ彼女が見えていて、話をしたり、天才的な音楽を奏でることができるのに……。白郎は「お化け」が見えなくなったことを姉には話すことができなかったが、たった1人、徳丸先生にだけは打ち明けてあった。先生は白郎の抱える問題を和らげることができるように、ある提案をする。

 黒乃と白郎は2歳違いのため、同じコンクールに出場したことがない。だから、どちらも自分と同い年のクラスのレベルでトップを守ってきたが、結局どちらのほうがすごいピアニストなのかという、子どもの頃の疑問には答えが出ていなかった。しかし黒乃は、その答えを導き出すことよりも、白郎とともにいることを選ぶ。さまざまなコンクールデビューや留学よりも、彼といた方が、絶対に自分は成長できるという「勘」があるからだ。いつまでもそんな姉のライバルでいたい白郎は、余計に「お化け」が見えなくなったことを打ち明けられず……。

 コンクールや人前でピアノを弾く時の2人は、キリッとしていていかにも天才という感じ。しかし、普段はヘタレな白郎や、「女帝」の二つ名を持つほど羨望の眼差しを受けている黒乃でさえ、両親や師匠の前では普通の子どもで生徒である。姉弟ゲンカを両親に諌められたり、徳丸先生に叱られたりしている姿は実に微笑ましい。「本当に天才ピアニスト?!」と思わせられるキャラクターの普段の顔と、コンクールなどの“戦いの場”に向かう時の姿のギャップに、思わずハッとさせられる。

 しかしある時突然やって来た、徳丸先生の最初の弟子を名乗るルイ・フラット。実力派若手人気ピアニストだが、性格がどうも胡散臭い。白郎に「お化け」が見えなくなってしまったことを知っていたり、「きみの言葉は、いつも人を壊す」と徳丸先生に言われたり……。おかげで姉弟のひどい喧嘩が始まってしまい、そのまま徳丸先生の出した課題に取り組むことになるのだが──?! 果たして彼らは試練を乗り越えることができるのだろうか? そして姉と弟の不仲は? ルイの動向も気になる中、新たなる“課題”を出される2人。ますますヒートアップする天才ピアニストたちの苦悩に、読者としてどこまでも食らいついていきたい。
(文/桜木尚矢)

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