ガイマン賞2016投票受付中! オーサ・イェークストロムと原正人が語る海外の出版・翻訳事情とは

ガイマン賞2016投票受付中! オーサ・イェークストロムと原正人が語る海外の出版・翻訳事情とは

ガイマン賞公式サイトより

 今年も「ガイマン賞」の季節がやって来た。「ガイマン賞」は2012年に、京都国際マンガミュージアム/京都精華大学国際マンガ研究センター、明治大学米沢嘉博記念図書館、北九州市漫画ミュージアムが合同で設立。アメコミ(アメリカ)、バンドデシネ(フランス語圏)、マンファ(韓国)など、日本のマンガを除く海外作品を“ガイマン”(海外マンガの略)と称し、その魅力を伝える賞である。

 10月10日、北九州市漫画ミュージアムにて「ガイマン賞トークライブ」が開催され、原正人(バンドデシネ翻訳家、ガイマン賞実行委員会)とオーサ・イェークストロム(マンガ家・スウェーデン出身)が来館した。

 オーサは自著の『さよならセプテンバー』(クリーク・アンド・リバー社)が昨年のガイマン賞で1位を獲得。『さよならセプテンバー』はマンガ家を目指すスウェーデン出身のアレックスが主人公で、オーサ自身が実際にマンガ家を目指すために体験してきたことも盛り込まれた物語。オーサが日本でマンガ家デビューを果たしたのは昨年の『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』(KADOKAWA)だが、その観点からも興味深い作品だ。

 オーサは『さよならセプテンバー』について「スウェーデンではリアルな話が好まれるので、ファンタジーよりも日常的な話にしました」と語る。「スウェーデンは締切が厳しくないというか、描き終わったところで出版社に持っていって、その場で出版されるかどうかが決まります」と、母国の出版事情にも触れた。この『さよならセプテンバー』も、持ち込みからスタートした作品だとか。

 オーサは「スウェーデンでは日本のスタイルで連載できるところはありません」と続けた。日本のスタイルとは雑誌での連載を意味する。実際、母国にいた頃はイラストレーターとの兼業で、日本のマンガ連載の形式を現地でやろうとしても、時間もお金もかかってしまうのだとか。似たところでは新聞社が主催するコンテストがあり、オーサは「応募して賞を取りました。紙面で1週間連載できたりします」と語った。

 一方、原は翻訳家としての観点から「日本のマンガは右から左に流れてくんですが、吹き出しの中が読みやすい感じで改行されてくんですよ。欧米のマンガが翻訳された場合、文章を読むのと同じ感覚になっちゃうのが、体感として違うように思います。海外のマンガや文化に触れてる人にとっては『翻訳ってこんなもんかな』って思うかもしれませんが、特に日本のマンガだけを読んでる人にとっては読みにくいと思うんです」と語った。

 原はガイマン賞2016ノミネート作品の中から、フランスの『ラストマン』『ラディアン』、韓国の『沸点:ソウル・オン・ザ・ストリート』『未生(ミセン)』『ノブレス』『少女・ザ・ワイルズ』、インドネシアの『ガルーダヤナ・サーガ』『グランドレジェンド・ラーマーヤナ』『私と恋するナマケモノ』、中国の『幼馴染に憑かれて−Guarding−』、台湾の『異人茶跡』『203号室の妖怪さん』など、日本のマンガスタイルに近いものを数点紹介。

「『ラディアン』は、ページの開き方も吹き出しも日本のマンガと一緒です」と原。続けて「『ラストマン』の開き方はバンドデシネと同じで、スタイルはバンドデシネとマンガの中間ぐらいです。マンガが好きだと巻頭カラーをやりたくなるようで、そうしたところの影響も見られます」とコメント。

「『少女・ザ・ワイルズ』はLINEマンガで、元は縦スクロールで読んでいくものなんですが、日本語版はコマ割りを施してるんです。日本のマンガより間の取り方が違うなと思うんですけども、それでも面白く読めます」と解説。また「韓国は今ほとんど紙媒体がなくなっていて、まず電子で連載してヒットしたら紙になるってスタイルです。電子なのでオールカラーで描く場合も多いです」と、現地の事情にも触れた。

 なおインドネシア・中国・台湾の作品は、いずれも電子書籍である。原は「翻訳以外でもお金がかかったりしますが、やっぱりマンガは紙で見たいって思っちゃうんですよね。それでも電子書籍で新しい作品が出始めてて翻訳のリスクが減っていて、そうしたところから色々と変わっていくのかなと思ってます」と話を終えた。

 今回5回目となるガイマン賞2016は、昨年の9月1日から今年の8月31日までに出版された作品が対象(電子書籍含む)。投票期間は10月1日から11月30日までで、投票は主催3館のほか、ジュンク堂書店池袋本店、紀伊國屋書店新宿本店別館、書泉グランデ(神保町)、青山ブックセンター六本木店、今野書店B1コミック店(西荻窪)、進駸堂中久喜本店(栃木県小山市)、明屋書店イケヤ高林店(静岡県浜松市)、明屋書店イケヤ湖西店(静岡県湖西市)、恵文社一乗寺店(京都)にて行える。
(取材・文/真狩祐志)

■ガイマン賞
http://gaiman.jp/

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