『アリスと蔵六』7話「感情」を理解しはじめた紗名、とってもモシャモシャする

『アリスと蔵六』7話「感情」を理解しはじめた紗名、とってもモシャモシャする

『アリスと蔵六』公式サイトより、先週はこんな話(6話)

――何種類も能力を使えるように見える一条さんは、ミニーCに嫉妬をされていましたが、やっぱ今回改めて見ると、彼女の「666の兵器と13の魔法書」の力ってチートすぎませんかね。フェンリル召喚て……。一条さんのプライベートをもうちょっと見たい、酔うとだらしないとかだったら最高なのにな、とひそかに願っているたまごまごが、『アリスと蔵六』(TOKYO MX)全話レビューします。


■7話「ともだち」 

 紗名「なんかモシャモシャする! よくわからん、こういうのは苦手なんだ!」。原作・今井哲也、監督・桜美かつし、J.C.STAFF制作のアニメ。頑固爺さん(演:大塚明夫)の元にやってきた、妙な力を持つ少女・紗名(演:大和田仁美)を巡る物語。
 蔵六と早苗(演:豊崎愛生)の家族になった紗名。横浜での蔵六の仕事についていった彼女は、一条雫(演:小清水亜美)に勉強を見てもらったり、社会見学に行ったりと、新鮮な体験をしていた。

 ところが、以前研究所で一緒で、1話では紗名を追いかけていた双子の雛霧あさひ(演:藤原夏海)と雛霧よなが(演:鬼頭明里)にばったり中華街で出会う。
 幼い頃虐待を受けていたこと、研究所がなくなってからは横須賀にある学校に通っていることなど、2人の謎が一気に明らかに。あさひとよながは研究所時代、紗名にひどいことをした、と謝罪をする。
 紗名は、2人に出会ったことで心がモシャモシャし、落ち着かなくなりはじめる。


■「わからない」ことがわかる成長

 紗名が「感情」を理解しはじめた回。
「怖い」とか「楽しい」とかわかりやすいものは、今までも理解できていた。今回は「切ない」とか「むずがゆい」とかのような、曖昧でコントロールできない感覚。それを彼女は「モシャモシャする」と表現。
 今までの回を見る限り、研究所で紗名はあさひとよながの2人と楽しく過ごしていた(彼女は仲良しという感情は知らない)。ところが2人に再会した時、紗名は虫の居所が悪そうな顔をする。これはモシャモシャしていただけで、別に怒っていないらしい。

紗名「自分のことなのに自分じゃないみたいだ」

 紗名はこれまで、幼児的万能感「世界のことは何でもわかる」という感覚で動いていた。理解できる枠組み(研究所のワンダーランド)の中で、何もかもを思い通りにしていたからだ。
 今回の彼女は、勝手に湧き上がる感情に怯え、モシャモシャする、と言う。「あさひとよながに会えた」ことを、心が対処できずパニックになっている。

 紗名が、数学の計算問題は高校レベルでもスイスイとけるのに、国語がからっきしダメなのも、花の水やりに苦戦しているのも、原因はそこだ。本を集中して読めないのは、モシャモシャするから。
早苗「そっかー、紗名ちゃんはいろんなことが少しずつわかるようになってきてるんだねー」
「わからない」と気づくことは、世界と自分は一緒ではない、という自我の芽生えだ。てか早苗、高校生でそれを理解できてるのすごいな。ママ力ある。


■子どもを描く物語

 本当にしっかりと、子どもを描こうとしているのを感じさせられた7話。原作者の今井哲也もTwitter(@imaitetsuya)で「紗名ちゃんの子供ムーブすごいね・・・アニメすごいね・・・」とツイート。

 動きがせかせか落ち着きがない。蔵六にかけよって抱きつく。自作での歌は今回も披露されている。はじめての切符のシーン、改札に入れて、出てきた切符を慌てて取る。子ども力全開だ。

 そして、突然の夜泣き。寝ていて、なんだかわからないけれども不安になる紗名。
 悲しいわけじゃない、恐怖でもない、理由はない。子どもがいる人ならすごくわかるシーンのはず。

 エンドクレジットで毎回、紗名が描いたと思われる幼い似顔絵が登場する。
 紗名が、自分と関わりのある「他者」として認識した人物たちだ。今回は、研究所で自分との境界が曖昧だった、あさひとよながを絵にした。
 紗名が2人に「あさひとよながは友達だ」とメールを送る(早苗に送ってもらう)シーン。紗名は最初「ともだち」がわからなくてモシャモシャしていたけれども、言葉にすることで、新しい関係を確認していく。

 あさひとよながもまた、自我の境界線が曖昧な、成長過程の子どもだ。
 2人が同時にしゃべるシーンは、マナカナとかザ・たっちを彷彿とさせて、微笑ましい。その後に「あさひは美術部、よながはバドミントン部」と、別行動を始めていることが語られ、グッとくる。


■「樫村紗名だ!」

 中華料理屋で紗名が雛霧姉妹に「樫村紗名だ!」と自分の名前をドヤ顔で言うシーン。アニメオリジナルのカットだ。
 6話で養子になり、はじめての家族ができた。彼女は自分が「よくわからないもの」ではなく「樫村紗名」になったことを、めちゃくちゃ喜んでいた。
 はじめての「自分」、はじめての「家族」。「樫村紗名」という名前そのものにどれだけの幸せが詰まっているか。

 さて、原作の8巻が5月13日に発売になった。

 これがどえらいヘビー。6、7巻からの、一連の重たい事件の続きになっていて、紗名が直面するのは「死」という概念。
「樫村紗名」という名前を蔵六にもらい、「自己」を手にして大喜びだった彼女。
 この巻では「樫村紗名」の名が、揺らぐ。

(文/たまごまご)

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