「知ってた!」5回目の引退宣言→撤回の宮崎駿の、“新作長編”への期待と不安とは

「知ってた!」5回目の引退宣言→撤回の宮崎駿の、“新作長編”への期待と不安とは

NHKオンラインより

 19日、宮崎駿監督が新作長編アニメーション映画の準備に入ったことを、スタジオジブリが正式に発表。あわせて公式サイトで新作の制作を担うスタッフの募集も開始した。今年2月に、鈴木敏夫プロデューサーがアメリカのイベントで新作長編の準備に入ったこと、2016年7月に企画書を、年末には宮崎監督から絵コンテを見せられたことを明かしていたが、ついに正式に引退発言を撤回する形となった。

 宮崎監督の引退発言といえば、まず大ヒットとなった『もののけ姫』(97年)の公開後に最初の引退発言。その後、『千と千尋の神隠し』(01年)が歴代No.1となる興行収入約308億円の超ヒット作となった後にも、2回目の引退発言。そして『ハウルの動く城』(04年)でも、「最高の辞め時」「情熱が持てなくなった」と、限りなく引退宣言に近いコメントも残している。

 その後『ゲド戦記』(06年)では原案を務めたものの、監督は宮崎吾朗に任せたことから、今度こそ本当に引退かと思わせたが、『崖の上のポニョ』(08年)では再び原作・脚本・監督を担当。だが『風立ちぬ』(13年)公開直後に「最後の長編作品」と宣言、記者会見まで開催し、改めて引退宣言を行った。なお、この記者会見前にスタジオジブリ代表取締役社長・星野康二が第70回ベネチア国際映画祭の会見場で「実は『崖の上のポニョ』が最後の長編になるはずだった」と告白。

『風の谷のナウシカ』(84年)制作終了直後にも引退宣言をしていた、という逸話もあったりするが、04年の『ハウルの動く城』、08年の『崖の上のポニョ』も含めると、これまでに5回は引退を宣言し、そして撤回してきた宮崎監督。ネット上の反応を見ると度重なる引退宣言→撤回に「もう勘弁してください」「プロレスラー並に引退が信用ならん」「知ってた」という声もあるが、「宮崎監督の復帰うれしいぃぃぃ!」「死ぬまで現役やってくれ」「やっぱクリエイターなんだなぁ」と、復帰を喜ぶ声が多いようだ。

 これだけの実績を残してきて、なお新作に取り組もうという意欲には感心してしまうが、同時に不安・疑問に感じる部分も多い。今後、またNHKのドキュメントあたりで明らかにされていくのだろうが、現時点での“宮崎監督、復活!”にまつわる不安ポイントをまとめてみた。

・3年間という制作期間で大丈夫?
 制作が遅れがちな高畑勲監督に比べて、比較的コンスタントに新作を制作・発表しつづけてきた宮崎監督だが、短編CG映像『毛虫のボロ」は初めてのCG作品とはいえ、15年から制作に取り組んでいるのに、いまだに公開されていない。今年4月に鈴木敏夫プロデューサーが「7月には見ていただける」と語ったが、その後も詳細は発表されていない。

 映像自体はすでに完成しているようだが、短編でこれだけ手こずっているのだから、長編ではさらに苦戦するかもしれない。新作は2D主体になるのか、CG中心になるのかは今の段階ではわからないが、3年で本当に完成するのか。現在76歳(1941年1月5日生まれ)の宮崎監督だけに体調面も不安だ。

・制作スタッフは大丈夫?
 スタジオジブリの公式サイトでは「動画」「背景美術」の新人スタッフをそれぞれ若干名、募集している(17年10月1日からの3年間)。新人スタッフがいきなり宮崎アニメの中核を担うことは難しいだろうから、大体のラインを任せられるスタッフの目星はついているのだろう。

 だが、周知と思われるがスタジオジブリは14年8月に制作部門の休止を発表、同年内をもって制作部門の社員全員が退職してしまっている。

 監督をスタジオジブリ出身で、『借りぐらしのアリエッティ』(10年)、『思い出のマーニー』(14年)の監督として知られる米林宏昌、プロデューサーも元スタジオジブリで、『かぐや姫の物語』(13年)、『思い出のマーニー』でもプロデューサーを務めた西村義明による新作劇場アニメ『メアリと魔女の花』(7月8日公開)をはじめ、元ジブリのスタッフは各所で活躍を見せているが、宮崎アニメの現場はどれぐらい実力あるスタッフを集められるのか。

  何より、16年には『天空の城ラピュタ』(86年)、『となりのトトロ』(88年)など、数々のスタジオジブリ作品に携わったアニメーターの二木真希子氏、『風の谷のナウシカ』以降、30年間に渡りジブリ作品で色彩設計を務めてきた保田道世氏が死去されている。宮崎監督を支える周囲のスタッフも高齢化してきているのも、当然の話だが気になるところ。

・万が一コケたらスタジオジブリは大丈夫?
 日本歴代最高興行収入を『千と千尋の神隠し』で記録した宮崎監督。だが、『ハウルの動く城』:196億円、『崖の上のポニョ』:155億円、『風立ちぬ』:120.2億円と、その数字は次第に落ちてきている。『風立ちぬ』の120.2億円も大ヒットであることは間違いないのだが(日本映画歴代7位)、『千と千尋の神隠し』の約2/5と考えると寂しいし、今度こそ最後の作品(と本人は発言)ということで、宮崎監督もより力と気合が入ることであろう。となれば、制作費もそれなりにかかるのではないだろうか。

『かぐや姫の物語』で高畑監督がこしらえた巨額の赤字を、『風立ちぬ』の興行収入やビデオパッケージ補填したスタジオジブリだが、万が一新作の興行が奮わなかった場合、どう挽回するのか。“宮崎駿の引退作”という看板を素直に信じるファンもさすがに減ったであろうから、不安が残るポイントだ。

――と、ここまでツラツラと重箱の隅をつつくようなことを書いてきたが、やはり一アニメファンとして新しい宮崎アニメを見ることできるのはうれしい限り。80〜90年代のような見ていてワクワクするような作品、可能なら大好きなゼロ戦を『風立ちぬ』で思いっきり描いたのだから、次は同じぐらい好きな戦車を描いてくれないか……などと、期待と妄想が止まらない。ハラハラしつつ、宮崎監督の新作続報を楽しみに待ち続けたい。

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