『月がきれい』9話 好きな人とLINEしている時って、あんなニヤけた顔になってるんだね、という恋テロ

『月がきれい』9話 好きな人とLINEしている時って、あんなニヤけた顔になってるんだね、という恋テロ

『月がきれい』公式サイトより

──すっかり「#恋テロ」もおなじみになった中学生たちの純愛アニメ『月がきれい』(TOKYO MXほか)。ストロベリームーンの日に放送があるなんて、ちょっと出来過ぎ! 6月の真っ赤な満月は「恋を叶えてくれる月」なんだそう。恋なんて無縁の生活を送るライターの大山くまおが全話レビュー中。フライングドッグ南健プロデューサーへのインタビューもあわせてどうぞ。*ここまでのレビュー


■瓶ビールは地域との結びつきの象徴

 先週の8話で思い切って「茜ちゃん」と下の名前を呼ぶようになった小太郎(演:千葉翔也)。今週の9話では、古書店デートの会話もすごく自然になっていて、見ているこちらもつい頬がゆるむ。「わかんないわかんない」と繰り返す茜(演:小原好美)の芝居がとてもナチュラル。小太郎は「高校別でも、家近いし」と言っていたが、そんなに現実は甘くないことを後で知ることになる。

 Aパートは、小太郎と茜、それぞれの家庭環境の対比がコントラスト強めに描かれていた。

 マンション暮らしの茜の一家が食べるのは、チキン南蛮にポタージュスープがついてくる洋風の夕食。スマホゲームを楽しむ陽気なお父さんはタンブラーでビールを飲み、近いうちに異動で千葉の本社に戻るかもしれないと茜たち家族に告げる。

 おじいちゃんの代から川越に住む小太郎一家が食べるのは、焼き鮭に味噌汁の純和風の夕食。口数の少ないお父さんが飲んでいるのは瓶ビール。瓶ビールは、地域との結びつきが強い証拠。重い瓶ビールをわざわざ店では買わないので、なじみの酒屋が配達してくれているのだろう。『サザエさん』の三河屋さんのイメージだ。

 小太郎の地域との結びつきは、祭り囃子の練習にもつながっている。今年の「川越まつり」は10月14日、15日だから、たぶん次の10話はそれぐらいの時期の話になると思う。

 Aパートラストにあった小太郎と茜のLINEのやり取りは安定の恋テロポイント。楳図かずお風のスタンプやジェット浪越風のスタンプが出てきて笑う。好きな人とLINEのやり取りをしているときって、あんな風にニヤけた顔をしたり、困った顔をしたりしているんだね。


■『月がきれい』はやっぱり中学生の群像劇

 Bパートは茜の陸上大会。冒頭の朝焼けの風景がすばらしい。薄暗くて、涼しそうで、でも少し暑くなりそうで。まだ夏の名残りのある朝って感じ。

 大会で茜が走るシーンは、勝負ごとの緊迫感というより、中学3年間の部活の集大成への追憶と、こっそり見守る小太郎の恋心の再確認が半分ずつぐらい。もともと小太郎が茜のことを意識したのは、校庭を走る姿を見たからだった(村下孝蔵「初恋」リスペクト)。

 茜の記録は自己ベストの13.70。でも、記録ボードではなく、自分が走ってきたトラックをずっと見つめるカットが印象的。よく走ってきたな、と感慨に耽っていたのだろう。

 千夏(演:村川梨衣)、葵(演:白石晴香)の陸上3人娘で並んでお弁当を食べるシーンは、お母さんのお疲れ様弁当と3人の涙に思わずこちらももらい泣き。単にお別れだからということだけではなく、3人とも部活をやりきったという実感があったから涙が素直にこぼれてしまったのだと思う。

『月がきれい』は小太郎と茜の恋愛がストーリーの中心なんだけど、千夏や比良(演:田丸篤志)を「主人公の恋のライバル」という類型的なキャラにしていないところが良い。あくまで中学生の群像劇なのだ。3人の時間を邪魔しないように振る舞う比良もいい味出していた。今週は恋テロというより、「ああ、青春っていいなぁ」って感じだった。


■視聴者に余計なストレスを与えない展開

 大会からの帰り道、電車の中で千夏と比良が叶わなかった恋を語る。このシーンは2人にだけ夕陽があたっていて、両者の心の黄昏と光の具合がシンクロしている。比良はまだ茜にちょっと未練がありそう。この後、一波乱あるかもしれない。

 茜が引っ越してしまう(かもしれない)ことを千夏と比良が小太郎より先に知ってしまうが、わだかまりが生じることなく茜は小太郎にきちんと知らせて共有している。このあたりの視聴者が感じるストレスを『月がきれい』は先回りして丁寧に除去している印象がある。それが作品全体への好感度にもつながっている。

 ただし、小太郎の進路に関しては父親が理解を示していたが、これではまだ終わらないはず。あのお母さんは絶対に黙ってないだろう。小太郎のお父さんって相手と目を合わせて話すのが苦手みたい。その分、きっと小説が好きで、それが小太郎に影響したのだと思う。いい人だ。
(文/大山くまお)

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