【劇場アニメレビュー】乙女たちの熱い声援に応える『KING OF PRISM-PRIDE the HERO-』

【劇場アニメレビュー】乙女たちの熱い声援に応える『KING OF PRISM-PRIDE the HERO-』

『KING OF PRISM-PRIDE the HERO-』公式サイトより

 魔がさしてしまった……。

 いや、『KING OF PRISM-PRIDE the HERO-』(以後『キンプラ』と表記)のレビューを書くことになり、さっそく初日に見に行くことにしたのだが、前作『KING OF PRISM by Pretty Rhythm』(以後『キンプリ』)を見に行ったとき、ここまで入るかというくらい映画館の場内は女子であふれかえっていたもので、今回は事前にネット予約して行こうと劇場のサイトを開いてみたら、さすがに初日はどの回も埋まりつつある中、夜の応援上映の回がまだ比較的とれそうな気配。

 応援上映は以前『劇場版ガールズ&パンツァー』4DXで体験したことはあるのだが、そのときはさほど盛り上がることなく(というか、私も含めるガルパンおじさんたちは、掛け声を発するのも忘れてただただ揺れまくる座席にしがみつきながら大洗女子らの活躍に没入するので精いっぱいだったのだ)、その意味では昨年の『キンプリ』を通常上映で鑑賞した際、実に熱くも静かな雰囲気が保たれていたのが、いざ映画が終わって場内が明るくなるや一斉に「キャー!」と黄色い悲鳴が響き渡り、その後ずっと誰も帰ろうとせず映画の感想を熱く語り合い続けていて、5分くらい経って、さすがに係員が「退場してくださーい!」とお願いに上がる始末。

 では、彼女たちの“応援上映”ってどんなものか、齢50を超えておっかなびっくり体験したくなって、思わずそちらのチケットをポチっと購入してしまったのだ。

 そして当日の夜、場内はやはり満杯であったが、驚いたのは女性まみれかと思いきや、意外にも男性客が2割くらいはいたことで、彼らの目的は一体何なのか? キンプリのファンなのか、単にイベント盛り上がり隊員なのか、いずれにしてもちゃんとサイリウムまで持参しており、一応ここで何が起きるのかを、きちんと把握しているようだ。

 私も持ってくればよかったと、ちと後悔……。

 あ、そろそろ『キンプラ』についても説明しておかなければ……。

 まずはアーケードゲーム『プリティーリズム』を原作とする同名TVアニメの第3シリーズ『プリティーリズム・レインボーライブ』が2013年から14年にかけて放送されたのだが、そもそも歌とダンスとオシャレを組み合わせたプリズムショーでの頂点を目指すプリズムスターの少女たちを中心としたドラマシリーズの最終話で、男子プリズムスター3人が新ユニット“Over The Rainbow”を結成。

 その男子ユニットのその後をスピンオフとして描いた映画が『KING OF PRISM by Pretty Rhythm』こと『キンプリ』であり、これが予想外ともいえる興収8億円のクリーン・ヒットとなったことで作られた続編映画が『KING OF PRISM-PRIDE the HERO-』こと『キンプラ』なのであった。

 なぜ『キンプリ』がヒットしたのか? それは二次元ならではのさっそうとしたイケメン・アイドル・キャラが競うかのように歌って踊ってのきらびやかな世界を展開していく中、そこはかとなく漂う薔薇の要素が乙女たちの心を大いに揺さぶり開放したものと推測はできるが、こういった禁断の世界がかくも明るくオープンに展開されていることに驚きもさながら、それを受容する彼女たちの革新性をも痛感させられる。

 今回の『キンプラ』も場内はコスプレイヤーがちらほら、私の両隣の若いおしゃれな女性客も開演時間前からサイリウムのチェックに怠りない。

 やがて場内が暗くなり、ブライダルのCMが始まった。すると

「おめでとー!」

 と銀幕に映る花嫁を祝福するひとりの乙女の叫びが!

 一瞬にして場内がどっと沸いた。

 そう、映画の上映前から始まってしまった……。

 その後、画面に何かが映されるたびに誰かが声をかけては場内がどっと受け、この繰り返しの中から、来る本番に向けて彼女たちがウォーミングアップしているのがつぶさに伝わってくる。しまいには映画泥棒にまで声援が送られる。
(ちなみに予告編で一番盛り上がったのは『美男高校地球防衛部LOVE! LOVE! LOVE!』で、ほとんどプリキュアの男子高校生版ともいえる変身シーンに黄色い悲鳴が場内にコダマする一方、これが『メアリと魔女の花』になると一転してシーンと静まり返ったのだが、こちらは久々のジブリ・ラインの作品ということで、思わず期待して魅入ってしまったといった雰囲気。こりゃまたヒットしそうですね)

 いよいよ開幕。制作会社のテロップが映されるや
「ありがとータカラトミー!」
「ありがとー、タツノコ!」

 などなど、そこからもう叫ぶのかい!? といったハイテンション・マックス・モード!

 おびただしいサイリウムの灯が、銀幕の画面を照らすかのように揺れまくる!

 当然、その後キャラが登場するや、もう何を言っているのかわからなくなるほどの大歓声!

 というか、おのおののキャラが何か言葉を発するたびに

「どうしてー!」
「がんばれー!」
「すごーい!」
「いいよー!」

 などなど、観客が熱く燃えながら逐一反応していくさまを次々と目の当たりにしていくうちに、何だか自分が現実ではないどこか彼岸の彼方にでも連れていかれたかのような錯覚に陥っていく……。

 お好みのキャラがアップになると悲鳴が轟き、そんな彼らのキス・シーンになるや拍手が沸き起こる!

 ……実を言うと今回、お恥ずかしい話ではあるが、私は今回、この映画自体をレビューできるほど内容のほとんどを把握しきれなかったのであった……。

 とにもかくにも場内の乙女たち(一部は男)の熱気に圧倒されまくり、頭の中はまるで熱にうなされているような状態。

 しかし、それは決して嫌な気分ではないという倒錯感!?

 もっとも、そんな朦朧とした中でも、前作に比べて今回は作り手側がかなり意識的に薔薇的な要素を盛り込んでいるような作為を感じないではなかったのだが、観客の多くはその作為こそを求めて来ているわけだから、それは決して間違った行為ではない。

 それにしても、もう不自然であろうがなかろうが、話の筋など二の次で、とにかく観客に受けてもらうためのサービスに怠りはなく、しかしながらやたらと男たちの裸体がエロく描かれたりするのを同性として目の当たりにしながら、男性をいわゆる“女性的”に可愛く擬人化させると、かくも女性客に受けるものかと不思議に思わざるを得ないところもあった。これを普通に女性キャラで描出させたら、今の時代バッシング必至であろう。

 またクライマックスのプリズムショーにおける、もはやショーアップどころではないバトル的崩壊描写の数々からは、やはり男は美しく、かっこよく、おまけにヒロイックであり、勇者であらねばならないとでもいった、究極の理想の男性像が見事に描出されており、これこそ現実に存在するはずはなくても、アニメならばいともたやすく具現化できてしまう二次元世界イケメンの醍醐味なのだろう。

 それにつけても、本来受動的に接するのが基本の映画を、ここまで能動的に楽しむ今の女性たちの貪欲なまでの姿勢に「は、どこかしら次代の希望を期待させるものがある。少なくともこういった熱気が続く限り、『キンプリ』シリーズも、アニメーションそのものも安泰ではあるだろう。

 ただ、それにしても上映後はどっと疲れが出たものの、たまたまここ数日悪化していた持病の腰痛が、気がつくと収まっていた。

 ありがとう『キンプラ』!
(文・増當竜也)

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