園子温監督&夏帆のタッグ作、再び! 『東京ヴァンパイアホテル』の婚活パーティーが妖しすぎる!!

園子温監督&夏帆のタッグ作、再び! 『東京ヴァンパイアホテル』の婚活パーティーが妖しすぎる!!

『東京ヴァンパイアホテル』でアクションに初挑戦した夏帆。クールな吸血鬼ハンター役だ。

 史上空前のパンチラ祭りを催した『みんな!エスパーだよ!』(テレビ東京系)の主演女優・夏帆と園子温監督が再びタッグを組んだのが、Amazonオリジナルドラマ『東京ヴァンパイアホテル』(全9話)だ。テレビでは流血シーンや性表現の規制が厳しく、それゆえに考案されたのが『エスパーだよ!』のパンチラ祭りだったわけだが、ネット上の配信ドラマではテレビほどうるさい規制はまだなく、園監督は流血ドバドバな上に首チョンパありと、もうやりたい放題。夏帆も初めてのガンアクション&ソードアクションに挑戦し、これまで見せることのなかった新しい顔を披露している。ダブル主演となる売り出し中の若手男優・満島真之介は、『愛のむきだし』(09年)で大ブレイクを果たした満島ひかりの3つ下の実弟。園子温ファンならずとも、何かヤバそうな感じがするドラマじゃないですか。

 そのタイトルどおり、『東京ヴァンパイアホテル』は吸血鬼たちが跋扈するホテルを舞台にしたミステリアスなアクションドラマ。ドラキュラ伝説の残るルーマニアでのロケ撮影を敢行、また日活の調布スタジオに巨大ホテルのセットを組み、近年のテレビドラマではお目にかかれない大掛かりなガンアクション&ソードアクションが繰り広げられる。園監督の地元・豊橋で撮影した第1話では車1台を着弾シーンで穴だらけにした上に炎上させてしまうなど、巨大企業Amazonの資金力の豊かさを感じさせる。

 ストーリーをざっくり説明すると、ネオ・ヴァンパイア族を率いる山田(満島真之介)たちが営む「ホテル・レクイエム」に独身の若い男女が集められ、カップリングパーティーが開かれるというのが本筋。参加者にはもれなく10万円が進呈され、カップル成立した男女にはそれぞれ100万円が贈られるという超太っ腹な婚活パーティーだった。当然ながら、美味しい話には裏がある。これは山田たちネオ・ヴァンパイア族が仕込んだ罠。もうすぐ人類は核爆発によって滅亡してしまうため、シェルター仕様となっているホテル内で人間たちを飼育して、新鮮な生き血を吸い続けようと企んでいたのだ。

 このホテルには、ヴァンパイア族の運命を変える大きな力が眠るマナミ(冨手麻妙)も監禁されており、ネオ・ヴァンパイア族とは対立する立場にあるヴァンパイア族の一員であるK(夏帆)がマナミを奪回するためにホテルへ潜入する。吸血鬼ものなので園監督こだわりの流血シーンが満載だし、ヴァンパイア族もネオ・ヴァンパイア族も不死身の肉体を持っているため、銃を撃っても、ナイフを突き刺しても、どちらも簡単には死なずに、延々とバトルシーンが続く。さらに今年公開された園監督のR18作品『アンチポルノ』でフルヌードを披露した冨手麻妙は坊主頭でのたうち回り、園監督の嫁・神楽坂恵は満島真之介とディープキスしまくるカオティックな内容なのだ。

 6月16日よりすでに全話配信されているが、正直なところ第3話までは時間軸がバラバラで、このドラマがどんな展開になるのかまるで予想ができず、途方に暮れてしまう。俄然盛り上がり始めるのは、第5話から。ホテル内に収容されていた人間たちだったが、ゲン(北村昭博)を中心とする血の気の多い一派がネオ・ヴァンパイアたちに武器を持って反乱を起こし、ホテル中が血の海地獄と化していく。エロティックかつシュールな第6話を挟んで、第7話ではブライアン・デ・パルマ監督&アル・パチーノ主演映画『スカーフェイス』(83年)のクライマックスをオマージュした大銃撃戦シーンに満島真之介が挑み、夏帆はホテルの長廊下でネオ・ヴァンパイアたちを次々と斬り倒す長回しシーンで魅了する。

 ノータリンな人間たちが一部のエリート/ネオ・ヴァンパイアによって管理され、家畜同然にSEXに励み、血を吸われながら生きながらえるという設定は、現実世界への痛烈な風刺。恐怖の婚活パーティーというアイデアは、ギリシャのヨルゴス・ランティモス監督の『ロブスター』(15年)の影響も感じさせるが、園監督が本作のいちばんの元ネタにしたのは19世紀の米国を震撼させた実在のシリアルキラー、ヘンリー・ハワード・ホームズだろう。H・H・ホームズはシカゴ万博で賑わうシカゴに3階建ての豪華ホテルを新築するが、このホテルに泊まった客のうち200人が消息を絶っている。H・H・ホームズはこのホテルの各部屋を秘密の通路で繋いでおり、ホームズと選ばれた客しか入れない拷問部屋や死体処理部屋も完備していたのだ。万博閉幕後に一連の事件が発覚し、人々は「殺人ホテル」「殺人城」と呼んで恐れた。『冷たい熱帯魚』(11年)では愛犬家殺人事件、『恋の罪』(11年)では東電OL殺人事件をモチーフにしていた園監督らしいではないか。

 ネオ・ヴァンパイたちがコルビン族と名乗っているのは、完成披露試写に登壇した園監督によると、ドラキュラ伯爵を幽閉したコルビンという人物が中世に実在したことから。園監督は昔からドラキュラ映画が好きで、ルーマニアで毎年開かれているトランシルヴァニア国際映画祭に昨年参加したことがきっかけとなり、虚実入り乱れる『東京ヴァンパイアホテル』が誕生した。園監督のもとからは満島ひかり、吉高由里子、二階堂ふみ……と若手実力派女優たちが次々と巣立っているが、若者の精気を吸収することで生命力をたぎらせるヴァンパイアとは、実は園監督自身ではないだろうか。女優たちは監督に身を委ねることで、妖しい美しさをまとうことになるのだから。
(文=長野辰次)


『東京ヴァンパイアホテル』
企画・制作/日活株式会社
総監督・脚本/園子温
8話・9話監督・脚本/久保朝洋、松尾大輔
8話・9話脚本/継田淳、碇本学
出演/夏帆、満島真之介、冨手麻妙、神楽坂恵、安達祐実、斎藤工、松井玲奈、中川翔子、高月彩良、今野杏南、吹越満、渋川清彦、森七菜
Amazonビデオにて6月16日より全話配信中
(c)2017 NIKKATSU

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