声優の弟子3人の挑戦に師匠が本気でこたえた一門会――「声優落語天狗連 ver.立川志ら乃とゆかいな声優たち」レポート

声優の弟子3人の挑戦に師匠が本気でこたえた一門会――「声優落語天狗連 ver.立川志ら乃とゆかいな声優たち」レポート

「声優落語天狗連 ver.立川志ら乃と愉快な声優たち」に登壇した左から仲村宗悟さん、高塚智人さん、立川志ら乃師匠、中島ヨシキさん、ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さん

2017年5月6日(土)、東京・中央区の浜離宮朝日ホールにて、「声優落語天狗連 第十回」と、そのスピンオフイベント「声優落語天狗連 ver.立川志ら乃と愉快な声優たち」が開催されました。

テレビアニメ「昭和元禄落語心中」で落語を知った人に、もっと落語を好きになってもらいたいと始まったこのイベントも、ついに10回目。記念すべき今回は、「声優落語天狗連 ver.立川志ら乃と愉快な声優たち」と「声優落語天狗連 第十回」の二部構成でお届け。本レポートでは、第一部「ver.立川志ら乃と愉快な声優たち」の模様をお伝えします。

数々の名人が芸を競った由緒正しき浜離宮朝日ホールの舞台にあがるのは、仲村宗悟さん、高塚智人さん、中島ヨシキさんの3人。3人共に、過去「声優落語チャレンジ」に挑戦した経験を持つ若手声優です。この中だと中島さんは、「声優落語チャレンジ」後、落語会やテレビ番組で落語を披露する機会があったそうですが、仲村さんと高塚さんは二度目の高座。だからでしょうか、にこやかな挨拶の中にも、少し緊張している様子が感じ取れます。そんな3人を気遣ってか、場を和らげようと志ら乃師匠から“口演の順番はジャンケンで決めよう”という提案が。「えー!?」と驚きつつもジャンケンが行なわれ、順番は高塚さん、仲村さん、中島さんの順で決定、口演がスタートしました。

3人が準備をする間に行なわれたトークで志ら乃師匠は、「同じ噺を二度目にするのが一番怖い」とコメント。過去に成功した記憶があるため、笑いの量が前回に届かないとスベっていないのにスベってしまったと勘違いし、焦ってしまうのだそうです。

そんな師匠の言葉に客席も少しピリっとした雰囲気になったところに登場したのが、トップバッターの高塚さん。高塚さんもかなり緊張している様子ですが、開口一番「つい最近みた景色だ〜!」の挨拶で場の雰囲気を柔らかくし、お客さんの心をぎゅっとつかみます。

口演する「たらちね」にちなみ、“まくら”に男女の話を持ってきた高塚さん。ご自身の恋愛論が語られるのかと思いきや、飛び出してきたのはギャルゲーの話題。学生時代に出会ってそのまま結ばれるなんてゲームみたいなことあるわけがない! と熱く語った高塚さんでしたが、実はご両親がまさにそうだったという見事なオチがつき、客席は笑い声に包まれました。場が温まったところで始まった「たらちね」は、高塚さんの努力が伝わってくる見事な内容。志ら乃師匠からのアイデアを取り入れた新たなネタも盛り込まれ、しかもそこできちんと笑いを取ることができたという、素晴らしい口演でした。

続いて登場したのは、やはり二度目の口演となる仲村宗悟さん。高塚さんの落語を舞台袖で聞いていた仲村さんは「たかP、ほんとすごいな!」とコメント。同じプレッシャーの中で口演を見事やりきった高塚さんを称えていました。

“まくら”で仲村さんが選んだのはお酒の話題。前回の落語チャレンジは練習からガチガチに緊張していたという仲村さんは、本番終了後の打ち上げでやり遂げた開放感にお酒が加わり、かなり上機嫌でしゃべり回ったそうです。それを見た志ら乃師匠から「宗悟、そんなにしゃべるヤツだったの!?」と驚かれたのが、強烈に印象に残っているそう。「お酒は人を開放的にさせますね」と笑いながら語る仲村さんからは、前回にはない余裕が感じられました。

仲村さんが口演する「親子酒」は、お酒にだらしない親子が繰り広げる滑稽話。2人の酒呑みのやりとりに場内は大きな笑いに包まれます。仲村さんのテンションが上がるにつれ、会場の場も一緒に盛り上がっていく様がとても印象的な口演でした。

そして三番目に登場したのは中島ヨシキさん。声優落語チャレンジの後に何度か高座にあがったという中島さんは、今回のために新たな噺、「紙入れ」を初披露。初挑戦することに至った経緯、そして志ら乃師匠とのやりとりを、中島さんはアップダウン激しいテンションで語っていきます。その場の空気を読む間合いの的確さ、鋭さはすさまじく、客席をぐいぐいと引き込み離しません。そうして始まった「紙入れ」は、おかみさんに誘惑された間男が右往左往する、いわゆる艶笑落語。小心者の間男「新吉」と肝の据わった「おかみさん」の対照的な姿に、場内は大いに沸きます。特におかみさんの造形は、後の感想で吉田さんが「とんでもないものを創ったね」と語るほどに強烈。中島さんの非凡さ、新たな魅力を感じさせる一席でした。

弟子の頑張りが実を結び場が沸きに沸いたあと登場するのは、彼らの師匠である立川志ら乃師匠。吉田さんが「立川談志が“俺の遺伝子はここに繋がっている”と言葉を残した男」と紹介すると、場内は割れんばかりの拍手に包まれます。その拍手のあまりの大きさに「真打ちお披露目の時よりも拍手の量が多かったです、あははは」と語る師匠に、会場はさらに大きな拍手に包まれました。

口演は、師匠が落語家を目指した切っ掛けや普段の生活といった身近な話題からスタート。スーパーマーケットを題材とした創作落語を創るまでの話から、立川志らく師匠との思い出、落語家の生活とは? といった話題が流れるように展開され、何気ない話なのに目が離せない、強烈な引力で引き寄せられているかのような感覚が客席を包みます。そして披露されたのは、志ら乃師匠の新作「雲八」。「昭和元禄落語心中」に触発されて創られた、落語家の師弟関係を描いた笑いあり涙ありの創作落語です。立川流のお家芸である「人情八百屋」も盛り込まれた本作は、聞く人に様々な師匠と弟子の姿と絆を想起させます。そして、笑いと涙が同居する落語の魅力が詰まった圧巻の口演が終わり、師匠が深々と頭を下げると、場内は割れんばかりの拍手に包まれました。

イベントは、全員での落語トークへ。特に「新作落語は、創った当人以外の人がやらないとダメ。雲八を3人がやってみたいのならやってもいい。ちゃんと稽古を付けたから立川流の話をしてもいい」と語る志ら乃師匠の言葉を聞く3人の姿が印象的でした。

第一部「志ら乃と愉快な声優たち」は幕を下ろしましたが、興奮さめやらぬままイベントは第二部へ。その模様は別途レポートします。【取材・文=小川陽平】

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