水島精二は「けもフレ」を語りたい<第1回>

水島精二は「けもフレ」を語りたい<第1回>

「けものフレンズ」より

先日、アニメーション監督の水島精二さんがつぶやいたひと言、それは「けものフレンズ12話完走\(^o^)/ なるほど面白かったわー。脚本と監督のお仕事に拍手!3Dアニメについて前々から思っていた事が実際に起きたなと、ちょっと嬉しく思ったり。その辺、どっかで語りたい気分。ともかく、スタッフの皆さん、素敵な作品ありがとう!さて、僕も頑張って新作つくろ」という言葉だった。

その言葉を聞き、ライターの前Qこと前田久さんが反応、今回の対談が実現しました! 3DCGアニメーションの監督を経験した水島精二さんには「けもフレ」はどううつったのか? 全3回でお届けします。

第1回「エポックな作品、それが『けものフレンズ』」

――先日、Twitterで水島監督が「けものフレンズ」に言及されていたのを見まして、ぜひインタビューさせていただきたいと考えた次第です。

水島:あの発言をした後、5月に徳島で開催された「マチ★アソビ」で3DCG関係の人たちと少し「けものフレンズ」について話す機会があったりしたんですけど、やっぱり3DCGアニメにかかわってきた人はみんな僕と似たようなことは思ってたみたいですね。

――気になります。読者向けに改めて説明させていただくと、水島監督といえば近年の3DCGアニメを語るうえでエポックメイキングな一作「楽園追放 ?Expelled from Paradise-」の監督であり、今をときめく3DCGアニメスタジオであるサンジゲンとも「機動戦士ガンダム00」を始めいろいろな作品でその初期からお仕事をされてきた。今ご活躍されているアニメ監督のなかでも、3DCGとのかかわりの深さでは屈指の方なわけです。そんな監督が、「けものフレンズ」のどの辺りにショックを受けたのか。まずはそこからお聞きかせいただけますか?

水島:ショックというか、実際に自分が3DCGでアニメをつくった後、なかなか後発で本当のヒット作が出てこなかったわけですよね。3DCGに対する需要は増えてたくさんタイトルがつくられているという噂は聞くし、実際にポツポツ出てきたものも見てきたけれども。やっぱり「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」、僕らがつくった「楽園追放」、それから「シドニアの騎士」。このほぼ同じ時期に出てきた3作品を超えていくような、クオリティはもちろんのこと、勢いがある作品ができている印象がなかった。厳しいことを言えば、どれも現状維持に見えてしまったんです。そんななかで3DCGアニメに対する需要だけが高まっている状況は、バランスが悪いなと思っていたんですよ。3DCGアニメの企画がなくなっちゃうのはイヤだけど、このままの流れだと3DCGアニメの全体的なクオリティはいつか落ちていくんじゃないか、それはイヤだな、と。そんなときに「けものフレンズ」の制作会社・ヤオヨロズが以前つくっていた「てさぐれ!部活もの」を見たり、僕自身が「アイキャラ」っていう日テレのバラエティに出てMMDとLive2Dを使って習作をつくったときに感じた可能性があったんです。

――それは何だったんですか?

水島:シナリオの内容次第で、ローエンドなCGでもお客さんに楽しんでもらえる作品がつくれるんじゃないか?と。そんなことを漠然と思ったわけ。「てさぐれ!部活もの」は、シリーズが進むにつれてバラエティ番組色がどんどん強くなって、ちょっとこの方向性は違うなと感じたんだけど。そうしたら「けものフレンズ」が出てきた。「けものフレンズ」はシナリオと映像のバランスが非常によかったんですよね。言い方は悪いかもしれないけど、これくらいの内容でも十分深夜アニメとしてヒットするだけのものがつくれるじゃん!と思ったわけ。要するに、変にクオリティ過多のほうに向かわなくても、3DCGは3DCGで作画とは違う使い方、見せ方があって、そのバランスをきちんと整えることでアニメファンに作品として受け入れられることが証明された気がした。ショックではなく、それが僕にとってはうれしかった、ということですね。

――なるほど。

水島:もちろん、すごいセンスが必要なことだし、今回のヒットには本人たちも認めているようにいろいろな偶然が重なった部分もあるだろうから、全部が全部まねできるわけではないですよ。でもともあれ、3DCGが常にハイクオリティで作画アニメに匹敵しなければいけないかというと、そうじゃないんだな、と。企画とのマッチングのよさがあれば全然商売になる。

――それってつまり、どういうことなんでしょう?

水島:結局、おもしろいと感じるポイントがちゃんとあれば、絵が弱かったとしても評価がいっぺんにひっくり返るんですよね。見た人たちが自分のなかで作品を補完してくれるというか。むしろそこにある種の爽快感がある。昔のアニメもそういうところがあったじゃない?

――そうですね。今見ても、いや、当時からして多少貧弱な画づくりのアニメであっても、魅力的なところがあればファンは食らいついてきました。

水島:そういう意味では、「けものフレンズ」は〈新しい〉んじゃなくて、〈回帰〉できた感じがしてる。その点で自分にとってはエポックな作品だと感じました。最近のクオリティ至上主義はツラいんですよね、もう……いや、「さんざんそういう作品を監督してきておいて、今さら何を言ってるんだ!」なんてツッコまれるかもしれませんけど(笑)。

【構成・執筆/前田久(前Q)】

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