水島精二は「けもフレ」を語りたい<第2回>

水島精二は「けもフレ」を語りたい<第2回>

「けものフレンズ」より

先日、アニメーション監督の水島精二さんがつぶやいたひと言、それは「けものフレンズ12話完走\(^o^)/ なるほど面白かったわー。脚本と監督のお仕事に拍手!3Dアニメについて前々から思っていた事が実際に起きたなと、ちょっと嬉しく思ったり。その辺、どっかで語りたい気分。ともかく、スタッフの皆さん、素敵な作品ありがとう!さて、僕も頑張って新作つくろ」という言葉だった。

その言葉を聞き、ライターの前Qこと前田久さんが反応、今回の対談が実現しました! 3DCGアニメーションの監督を経験した水島精二さんには「けもフレ」はどううつったのか? 全3回でお届けします。

第2回「オーソドックスに王道を進んだ作品、それが『けもフレ』」

――「けものフレンズ」のシナリオの魅力はどこにあると感じられました?

水島:バックに壮大なストーリーがありそうなにおいを振りまきつつ、でも各話のお話の中身としてはフレンズたちがとにかくかわいい(笑)。世界の謎もきちんと伏線が張られていて、カンのいい人なら第1話の時点でわかるし、シリーズを通じて見ていけば全然わかるくらいの、そんなに難しい内容じゃないところがいいですよね。お話を引っ張る世界の謎も含めて、気楽に見られる。そこも含めてすごくあれくらいの、ローエンドな3DCGに適しているな、と。そもそも初期の3DCGアニメって、技術が全然ないから絵本的な内容ばっかり作っていたんですよ。それがさっき名前を挙げた、われわれが作ってきたようなタイトルを経て、妙にハイクオリティじゃなきゃいけないという空気だけが生まれちゃった。内容を本当に理解するには副読本がいるようなシナリオじゃないといけない、みたいな空気ですね(笑)。それはちょっと残念に感じていたところに、ついにほどよいバランスの作品が来た印象でした。声もCGモデルの雰囲気によく合っていて、そこもいいと思いましたね。素朴な演技の人が多くて、その中でトキの金田朋子さんとかツチノコの小林ゆうさんとかがちょっとクセのある役を演じている。これ、たぶんですけど、普通にアニメをつくっていたらああいう配役になったんだと思うんです。そういうところにすごく、欲というのか、「絶対ヒットさせるぞ!」みたいな意気込みを感じない。自然体でアニメをつくっている感じにグッとくる。ヒットってやっぱり、そういうものなんだなって。なかには「新世紀エヴァンゲリオン」みたいに、めちゃくちゃ挑んでつくって大ヒットするものもありますけど、でも大体において、そこまでヒットすると思わなかったものがほとんどじゃないですか。だからそんなところでも、「けものフレンズ」は奇跡……と言うと失礼かもしれないけど、奇跡的なバランスの作品だと思いますね。

――ほかの3DCG会社の皆さんはどう受け止めていたのでしょう?

水島:驚いていました。「けものフレンズ」はアニメーターが大体5人くらいで、ローテーションなしで、全話ほぼ同じスタッフでつくり切ったそうなんです。さっきから話しているようなことに加えて、そうしたつくり方の面でも、これまで3DCGアニメを手がけてきたスタジオの人たちはとてもびっくりしたみたいですね。ただ、それもたまたま今のヤオヨロズという会社の規模がそうだったという話で、戦略的につくられた体制ではないようなんですよ。計算していないところから生まれた〈ゆるさ〉が、作品のポイントだったように思いますね。今のアニメって、ゆるいのも計算でつくろうとしていたりしますから。狙ってない感じも含めて、ファンにストレートに届いたんじゃないでしょうか。邪心がないんですよね、見ていて。優しい世界だなと思います。たつき監督が、僕もかかわっていた「アイカツ!」を参考にしてくれたそうなんですが、本当にそうならうれしいですね(笑)。

――ちょっと通じるところがありますよね。

水島:その流れで言うのもなんだけど、本当にね、情報密度も含めて、オーソドックスに〈王道〉なことをやったんだと思う。別に時代に合わせてフックがあったとか、世相を反映していたとか、そういうところはないですよね? オーソドックスなものをつくって、無欲の勝利を収めたということじゃないかな、と。

【構成・執筆/前田久(前Q)】

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