テロで家族を失った女の復讐劇 「女は二度決断する」を採点!――シネマチャート
2018年04月17日 17時00分 文春オンライン

©2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathé Production,corazón international GmbH & Co. KG,Warner Bros. Entertainment GmbH
■〈あらすじ〉
ドイツ、ハンブルク。カティヤ(ダイアン・クルーガー)は、トルコ系移民の夫ヌーリとの間に1人息子のロッコを授かり、幸せに暮らしていた。ある日、ヌーリが営む会社の眼の前で爆発事件が発生する。たまたまオフィスにいた6歳のロッコも巻き添えになり、カティヤは夫と息子を失うという悲劇に見舞われる。人種差別主義者のドイツ人が在住外国人を狙ったテロであることが判明し、容疑者としてネオナチのメラー夫婦が逮捕される。裁判に証人として出廷したカティヤは、ヌーリの前科や、事件後に哀しみを紛らわせるために麻薬を使用したことを執拗に攻撃され、深く傷つけられる。
■〈解説〉
『50年後のボクたちは』に続くファティ・アキン脚本・監督作。テロで家族を失った主人公の絶望と憎しみを描くサスペンス。第70回カンヌ国際映画祭主演女優賞受賞作。106分。
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中野翠(コラムニスト)
★★★★☆痛快にして悲壮な女の復讐劇。D・クルーガー入魂の演技。移民問題の難しさ。法廷劇部分も案外ダレずに面白く観られた。
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芝山幹郎(翻訳家)
★★★☆☆第3幕のサスペンスは高電圧だが、ご都合主義的な作劇が気にかかる。第2幕に法廷劇を挟む手法も、やや予定調和的。
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斎藤綾子(作家)
★★☆☆☆家族を奪われた悲しみと怒りに共感できる展開だけに、カティヤの凄絶な決断が恐ろしく、後味の悪さだけが残った。
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森直人(映画評論家)
★★★★☆こちらは家族vs.世界。真摯な現代批評を軸に法廷劇や『狼よさらば』など定型を超えていく三段式構造に驚嘆。ほぼ満点。
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洞口依子(女優)
★★★★☆“悲しみを飼いならす女”を演じる主演女優が出色。悲しみを掘り下げる為の前半は曖昧。でもそれをもぶっ放す勢い。
INFORMATION
「女は二度決断する」(独)
4月14日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
脚本・監督:ファティ・アキン
出演:デニス・モシット、ヌーマン・アチャル、ヨハネス・クリシュ、ウルリッヒ・トゥクール ほか
http://www.bitters.co.jp/ketsudan/
(「週刊文春」編集部)