最果タヒらの詩や短歌とクリエイターらがコラボ 「ことばをながめる、ことばとあるく」展

最果タヒらの詩や短歌とクリエイターらがコラボ 「ことばをながめる、ことばとあるく」展

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 カフェやドラッグストアなんかと同じように、駅前にぜひあってほしいものがふたつある。図書館、それに美術館だ。出かけるときの行き帰り、気軽に本を探したり展示を観たりできたら、日ごろの生活がずっと便利かつ彩り豊かになりそう。

 群馬県太田市の東武伊勢崎線太田駅前には、まさに理想の施設が建っている。昨年竣工した、「太田市美術館・図書館」。その名の通り、美術館と図書館の機能が併設されたものだ。美術館セクションでは現在、「ことばをながめる、ことばとあるく 詩と歌のある風景」が開催中。

■言葉を材料に空間をつくる

 詩や短歌をテーマにして、言葉を展示品として扱ってみようというのが同展の趣旨。具体的には、大きく分けて3つの展示で構成されている。

 まずは「詩×グラフィック」と題し、詩人・最果タヒと、佐々木俊、祖父江慎、服部一成らグラフィックデザイナーが、共同でビジュアルをつくり上げた部屋がある。

 映画化され話題になった詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』をはじめ、若い世代を中心に圧倒的な支持を集めるのが最果タヒの詩。最果が紡ぐメッセージ性の強い言葉を素材に、デザイナーたちは三次元の展示をつくり上げた。

 リズミカルに並んだ文字が壁面にドンと書かれていたり、詩片が印刷された紙を丸めて床に放っていたり、バス停のようなオブジェの表面に詩が載っていたり。なるほどこんな工夫を凝らせば、言葉はビジュアルアートの材料になり得るのかと感心しきり。

 続いて「詩×絵画」。詩人・管啓次郎と美術作家・佐々木愛による作品が並ぶ。ふたりは2009年から、各地を歩いてその印象から詩と絵をつくる「WALKING」プロジェクトを継続中。太田市を歩いてつくった新作を含め、これまでの成果をまとめて発表している。

 さらには、「短歌×イラストレーション」の展示もある。地元に暮らし歌人として活動した大槻三好・松枝夫妻の歌を、惣田紗希のイラストレーションと出逢わせてあるのだ。

 穏やかで柔らかい大槻夫妻の短歌と、壁面いっぱいに描かれた惣田のシンプルで親しみの持てる絵が相まって、陽だまりに身を置いたかのような温もりが空間全体を満たしている。

■言葉とアートは意外に近しい

 言葉とアート、異質なものが取り合わされることで、それぞれがふだんとずいぶん違った見え方をしていることはたしか。同時に、詩や短歌などの言語芸術と、絵画などのビジュアルアートは、それほどかけ離れたものでもないことにも改めて気づかされる。どちらも何らかの考えやイメージを伝え、共有するために存在するのだから、うまく取り扱えばすんなり融合させることはできるわけだ。

 展示スペースを出ると、建物内のそこかしこに、ジャンルごとに分かれた無数の本が並んでいる。そう、ここは図書館と美術館の機能が併設されている場だった。しかも、ただ同居しているのではない。建物内では美術館と図書館のスペースが半ば混ざり合い、ごく自然に調和をとっている。

 見た目は少々異なれども、言葉とアートは意外に近しいと今展から学んだばかり。「美術館・図書館」が無理なく存在できて、心地いい場となっているのもまた、当然のことなのだった。

(山内 宏泰)

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