コリン・ファース58歳に学ぶ「よい歳のとりかた」とは?

コリン・ファース58歳に学ぶ「よい歳のとりかた」とは?

コリン・ファースさん

 早咲きがいれば遅咲きもいるのが、ハリウッド。そんな中、コリン・ファースは、永遠の春を謳歌してきた珍しい存在だ。

 23歳にして「アナザー・カントリー」で舞台デビュー。翌年には同作の映画版でスクリーンデビューを果たした彼に、ハリウッドスターにつきものの苦労話は無縁。58歳の今も、『キングスマン』『マンマ・ミーア!』のような娯楽作品から、最新作『喜望峰の風に乗せて』のような奥深い実話物まで幅広く出演を続けている。

 そしてこの『喜望峰〜』での演技が、また凄いのだ。彼が演じるのは、妻子のためにも一花咲かせたいと夢見るビジネスマンのクローハースト。単独無寄港世界一周ヨットレースに賞金狙いで参加を決めるも、肝心の腕はアマチュアレベル。しかし、仕事柄セールスがお得意の彼は、だから面白いのだとそれを売り込み材料にし、スポンサーまで獲得してしまう。ファースに言わせればヒーローとバカは紙一重で、これはその物語だ。

「物語はいつも不可能なことへの挑戦から始まる。リスクはとてつもなく大きいし、愛する人を残して旅立たなければならない。そして、結果によって、英雄と仰がれたり、『ほら、だから言ったじゃないか』と蔑まれたりする。この映画は、そのどちらにも加担しない。この作品で僕らが目指したのは、人間としての彼の心理を理解し、共感しようとすることだ」

 映画は、名声の残酷さも描き出す。メディアをスポンサーにつけたクローハーストはたちまち脚光を浴びる。しかし、そのことが彼に大きなプレッシャーを与えるのだ。

「有名になることで自分の価値を見出そうとする人は多い。だが、メディアが求めるのは彼らが欲しい話、売れる話だ。もちろん、クローハーストは自らそこに足を突っ込んだ。左右をよく見ないで道を渡って車にはねられたら、自己責任だと言われるだろう。だが、左右をよく見なかったのは罪なのだろうか?」

■「中年の危機」について聞くと意外な答えが

 近年は、プロデューサーとしても活躍。2017年日本公開された『ラビング 愛という名前のふたり』も、そのひとつだ。自分がやりたい役を作り出すために映画製作に乗り出す俳優は多いが、超売れっ子の彼の場合は「自分が出演するのは必然的に白人の男の話になる。俳優として自分にオファーが来ないような話を、プロデューサーとしてつくるのが目的」とのこと。

 そんな彼にミッドライフクライシス(中年の危機)の経験を聞くと、「21歳の時にね。自分がすごく年寄りになったように感じたものさ」と余裕のお答え。37年にわたる“老後”がこんな感じなら、歳を取るのも悪くない?

Colin Firth/1960年生まれ。英国を代表する演技派俳優。『英国王のスピーチ』でアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞、『シングルマン』でヴェネチア映画祭最優秀男優賞を受賞。『ブリジット・ジョーンズの日記』『マンマ・ミーア!』『裏切りのサーカス』『キングスマン』等話題作に次々出演している。

INFORMATION

『喜望峰の風に乗せて』
1月11日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
http://kibouhou-movie.jp/

(猿渡 由紀/週刊文春 2019年1月3・10日号)

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