CNNも注目 元不良率80%の悪役芸能事務所・高倉組インタビュー

CNNも注目 元不良率80%の悪役芸能事務所・高倉組インタビュー

左から武蔵武さん、或布理萬さん、倉本宙雨組長、吉田丸さん、高倉亭どん兵衛さん、ムサ子さん

「元不良率80%(約60人中12名が逮捕歴無し)」を誇る悪役専門芸能事務所が存在することをご存知だろうか。

 自身も元不良の組長・倉本宙雨さんが設立した「高倉組」は、数々のテレビドラマやバラエティー番組に悪役・不良役・やくざ役などで出演。昨年はCNNから密着取材を受け、GUCCIの広告モデルに起用されるなど、海外からの熱い視線も浴びている。

 高倉組を訪ねると、撮影現場の前には首から代紋と高倉組と書かれた札をぶら下げたコワモテ集団がいた。組長の倉本さんと5人の組員(或布理萬さん、吉田丸さん、高倉亭どん兵衛さん、武蔵武さん、ムサ子さん)に話を聞いた。

◆◆◆

―― どのようなきっかけで高倉組を設立されたのですか。

倉本 3.11のときに、悲しみからですね。「世の中こんなことが起きているときに、俺は何をしているんだろう」と。

―― その頃は何をされていたのですか? 

倉本 AV制作やその周辺の業界にいました。「自分に何ができるのかな」と考えてみると、それまで不良をやってて、周りにも悪い連中がいっぱいいた。「こいつらを使ってなにかできるかな」と思ったことがきっかけでした。

■採用の基準は「守れる人がいること」

―― 高倉組は何人でスタートしたんですか?

倉本 当初は俺1人だけです。まず、映画に不良役で出演してみて、「これはいけるな」と。そこから周りに声をかけたんだけれども、幽霊会員になるやつが多くて。実際にキャストが充実してきたのは、ネットで募集した連中がちょびちょびと入ってきてからです。

―― 採用の基準は?

倉本 「怖いこと」と、「守れる人がいる」ということ。あとは、経済的に自立していて、しっかり自分の生活ができる人ですね。

―― 「守れる人がいる」というのは、少し変わった条件ですね。

倉本 そういう人のほうが続くというか、芸能のことに本気でしっかりと取り組めるというのが、俺の今までの経験なんです。結果論ですけどね。

■高倉組の名前の由来は奥さん

―― 高倉組の名前の由来は?

倉本 うちの奥さんの旧姓が高橋なので、高橋の「高」と倉本の「倉」を合わせて高倉組ですね。あと、高倉健もちょっと好きだと。

―― 倉本組にはしなかったのですね。

倉本 うちの奥さんが会長みたいなものなので。「高」ってつけたらつけたで、「勝手に使うんじゃねえ」って言われましたけれども(笑)。

―― ちなみに、倉本さんは組員ではなかったのですか?

倉本 組織にいたことはありますけど、登録をしていたかどうかで言うと、していなかったです(※)。ここにいるみんなは、登録はしてないよね?

或布 そうですね。そこは難しいところなんです。登録かかっても解除になるようにはなっているので。

※……警視庁の暴力団構成員認定のこと。暴排条例の条項により暴力団を離脱し約5年経つと認定が取り消される。

―― じゃあ、解除になったところを採用される。

倉本 そういう者もいます。やくざをやめて5年経った人は受け入れます。最寄りの小金井署に登録身分証明書のコピーを渡して、生年月日とか調べてもらって「大丈夫だよ」とお墨付きをもらってから、ようやくテレビやメディアに出す仕組みを作って。

 通帳を作ろうとしたりして、一時的に抜けて一般人になりすますという不良もいますからね(※)。そういううわさも知ってますので。

※……全国の自治体が制定している暴排条例により、暴力団構成員は新規の口座開設や賃貸契約ができない。

■演技指導はしない

―― 元不良以外の方も在籍していますか? 

或布 まったく真面目に生きてきたやつもいます。武蔵は、元ボクサー。

倉本 ムサ子は葬儀屋。どん兵衛は元プロのバイクレーサー。

どん兵衛 筑波サーキットとかで走っていました。

―― 高倉組では演技指導をしないそうですね。

倉本 こういう演技や、こういう歩き方をすればいい、というのはもう分かっていることなので、誰に教わることもないんですよね。今までの経験を発揮できるということは、あえて言えば、高倉健でもできないようなことをできるということなので。

 練習やレッスンをするくらいなら、Twitterをもっとうまくつぶやけとか、そっちのほうが大事かなと最近は思います。

■元不良が和彫でNHK出演はおそらく初

―― ドラマや映画のキャスティングのオファーは、どのようにして入ってくるのですか?

倉本 オールバックの人がいいとか、入れ墨が入っている人がいいとか、あんまりチンピラっぽくない親方風がいいとか、そういう指定つきのオファーがあります。

―― 昔は、テレビ撮影では和彫りの入った俳優はドーラン(油性おしろい)を塗って隠さないといけませんでした。今でも和彫りには厳しいんですか?

倉本 そんなことないと思います。うちはこの2人(或布理萬さん、吉田丸さん)が入っているけれども、NHKから「和彫り入っている人でお願いします」と依頼が来ましたよ。 墨が入っていて、元不良なのにNHKに出演、たぶん初めてだと思います。

或布 「NHKスペシャル 未解決事件シリーズ」の警察庁長官狙撃事件の回でした。イッセー尾形さんの横で、刑務所で入浴のシーン。

―― 美術として描くのと、本当に入れている入れ墨では映り具合も違うものなのですか?

倉本 全然違うと思います。“褪せ感”がニセモノにはないですよね。

或布 作り物ははっきりしちゃってるんですよ。本物はこういうふうに枯れてくるので。

■思ったより怖かったから、ちょっと後ろのほうで

―― 本格的すぎて「思ったより怖いぞ、この人たち」と言われることは? 

倉本 ?不採用でも、いちいち駄目だった理由を向こうは言いませんから、何とも言えないですけれども……ただ、エントリーの時点で「ちょっと怖すぎる」というのは聞きますね。

或布 現場で言われることもあります。「思ったより怖かったから、ちょっと後ろのほうで目立たないようにしてほしい」とか。

―― ファッションがとても気になるのですが、普段はこういう格好じゃないですよね?

倉本 そうですね。これは衣装です。でも、或布は……。

或布 僕は最近ずっとこうですね。うちの衣装をやっている、バースジャパンっていう悪党服専門のアパレルブランドがありまして。ピコ太郎さんの衣装やドラマ『今日から俺は!!』の衣装などを提供しているところなんですけど。そこのメインのモデルになっちゃったので、普段かわいい格好するのは違うだろうということで、なるべくこういうファッションで。

■不良役をやる際のファッションポイント

―― ファッションポイントがあれば伺いたいです。

或布 撮影の時って、みんな基本もっとジャラジャラアクセサリーを着けるんです。小道具とかそこら辺にもあるんですけど。派手なスーツとか、派手なチェーンとか、僕なんか耳も指が通るぐらい穴を拡張してるんで、キラッキラの石入った金のピアスで向こうが見えちゃうようなやつをつけたりして、基本汚い感じで。

―― 現場に行くときは?

倉本 必ずこれ(衣装のジャージ)です。着ていきます。家を出たときから、帰るまでが全員高倉組ですね。

―― そうすると、オンオフの区別はどうやってつけるのですか。

倉本 奥さんの前ではオフ。

―― なるほど。

■紋の意味は「愛を持ってやくざをやろう」

倉本 街を歩くときもできるだけこういう格好で、「高倉組」のパスを持って。

或布 これはもちろん、職質よけです。

―― この紋はどういう由来で?

倉本 ハートが3つですね。俺が作りました。愛を持ってやくざをやろう、という。

―― スーツだったら、どういったものを着るのですか。

倉本 大体こういう、縦縞のダブル。撮影では80年代のやくざが一番求められるので。だから、こういうバカみたいに派手な、今はやくざが着ないようなのばっかりを着て出ます。細身のヴェルサーチとか、絶対着ないです。俺のパンチ(パーマ)も80年代ですし。

―― 違和感はないんですか?

倉本 ないわけではないですけれども、やっぱり80年代のやくざは、「いかにも」というか、画的にすごくいいじゃないですか。今はやくざがその辺のサラリーマンに見えたり見えなかったりする時代ですから。

■現場での「これ違うんだけどな」

―― 他にも、現場で「実際は違うんだけどな」と思うことはありますか?

或布 いや、正直そういうことばっかりで……。芸人さんを驚かせるドッキリ番組で「実際はどんな感じでやるんですか?」って制作側に聞かれることも多いんですけど、リアルに寄せれば寄せるほど、演出上分かりにくい。

―― では、北野武さんの『アウトレイジ』の掛け合い(※)なんかは、リアルではない?

或布 あれは……どうなんですかね。映画はおもしろかったですけど、掛け合いの時点で「バカ野郎この野郎」って怒鳴っちゃってるじゃないですか。あれだともうケンカが始まってますよね。

※……舌戦を繰り広げること。

―― 本当は前段階があるのに。?

或布 ええ、いったん口火を切っちゃったら飲み込めないんで。「お前、馬鹿野郎って言ったな」ってなっちゃう。掛け合いは、どちらかというとフリースタイルのラップのごとく言葉を吐いて、相手に物言わせない、みたいな。

―― 他にも「いやいや、これはないだろう」というエピソードがあれば。

或布 彼女の実家に挨拶に行ったらお父さんがやくざの親分で、彼女は跡取り娘だったとか(笑)。そもそも一本どっこ(※)の組織って昔からほとんどないんですけど、なぜかテレビでは好まれるシチュエーションですね。

 ドッキリのターゲットになっている彼氏さんに「じゃあ親子の縁組しようか」といって盃を持ってきたりするのも「いや、ないないない」って思うんですけど、おもしろいので、ちゃんと盃を包む半紙の折り方とかを伝えたりはします。

※……広域暴力団とは別の、独立した組織。

■西田敏行さんとか、中尾彬さんも半端ない

―― いろいろな世界の大物を見てこられたとおもいますが、現場で「この人オーラあるな」「貫禄あるな」と思った人は誰でしょう。

或布 浜田雅功さんや松本人志さんですかね。僕、全然緊張しないタイプなんですよ。大観衆が見守る真ん中で全裸でウンコしろって言われてもそつなくこなせると思うんですけど、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』に出演したときは本当に緊張した。

倉本 千葉真一さんとかもすごかったね。

或布 あと、西田敏行さんとか、中尾彬さんも半端ないですよね。すごいです、出してくるオーラが。

■インスタでロシアの人に大ウケ

―― 今はSNSに力を入れているそうですね。

倉本 SNSを使って展開したりとか、或布がやっているVチューバーだとか、今はエンタメに絡められるものが無限にあるおもしろさがあって。

 昔は社会貢献したいのと、ちょっと売名したいという下心もあってみんなでトイレ掃除とかしてたけど、今は一人一人が自立して生きていれば社会に貢献できているだろうと。だから、エンタメをまずはがんばろうと。

―― 「待て待て、エンタメの間口はいろいろあるじゃないか」と気づいて。

倉本 そうですね。たとえば俺、インスタをやってるんですけど、ロシアの人たちがジャパニーズマフィアに興味を持ってファンになってくれたりとか、思わぬところでニーズがある。やくざをいいふうに思っていない俺もいますけど、文化としては魅力的だから広めよう、と考えることもできますよね。たとえば和彫りも、日本の文化ですし。

―― 今までやくざと彫り物ってある意味背中合わせだったと思うんですが、そこをビジュアルとして切り離していくということもアリ、ということでしょうか。

倉本 そのとおりだし、いいんじゃないですか? 今となっては、やくざは関係ない世界だし、まったくよく思ってない。でも、やくざ役のコスプレ集団として楽しく芸能界で暴れられれば。

■一番気にしているのは、他人に迷惑をかけること

―― 元いた世界ではなく、堅気の世界で暴れる……気を遣うことはありませんか。

倉本 普段、撮影前に高倉組時間の集合時間っていうのを必ず設けてあるんだけれども、俺が一番気にしているのは、他の人に迷惑をかけることなんです。存在自体が派手なものですから。

 だから、たとえば打ち上げだったら、必ず店長のところに名刺を持って行かせて、「こういう不良な感じだけど、今日は1時間だけお世話になります」とあいさつするように必ず心がけています。現場も、ファミレスも、喫茶店でも。まあ、これも、「高倉組」の売名がしたいという下心もあるんですけどね。

◆◆◆

 いま暴力団組員は代紋のバッジをつけただけで罰せられるが、高倉組は堂々とそれを身につける。なにしろ警察に照会をして「登録」がないことが確認されないと組員にはなれないのだから、いわばカタギの証明書である。

 おまけに代紋はハートをモチーフにしている。見た目が怖いだけでなく「守れる人がいること」が採用の条件という高倉組らしいデザインだ。LOVE IS POWERである。そしてアウトローに戻らないためにアウトローを演じる。エンタメのチカラとその広がりを信じる倉本組長でもあった。

写真=石川啓次/文藝春秋

※一部不適切な表現があり、読者からの指摘で修正いたしました。2/11. 22:52

(urbansea)

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