小柳ルミ子「蹴球と私」――年間2000試合以上、3試合同時観戦することも

小柳ルミ子「蹴球と私」――年間2000試合以上、3試合同時観戦することも

©フライングダッシュ

「瀬戸の花嫁」から、45年が経ちました。歌はもちろん、演技に、ダンスにと邁進してきましたが、この夏は、新たなジャンルでお仕事をいただきました。

 8月31日は、日本が来年のサッカーワールドカップ(W杯)に出場できるかどうかの大一番。このオーストラリア戦のラジオの実況中継では、ロンドン五輪代表監督だった関塚隆さんが解説を務められたのですが、そこにゲストとして、出演したのです。本当に光栄なことで、望外の喜びでした。

 2002年の日韓W杯までは、サッカーは眺める程度。そこに、ベッカムフィーバーが起こりました。甘いマスクのすごい選手くらいの認識でしたから、なぜベッカムが人気なのか? どうして世界中の人はサッカーに夢中なのか? それを知りたいと思いました。

 実は、昔から私はヒットや流行の理由を考えたり、分析したりするのが好きで、「瀬戸の花嫁」はシンプルなメロディと瀬戸内海の美しい情景、そして男女だけでなく、家族や島に対する大きく普遍的な愛を歌っている――その総合力が、みなさんに愛されたのだと、考えています。

 最初はルールを覚えるところからでしたが、アルゼンチン代表で、スペイン・バルセロナのチームで活躍するメッシ選手の登場で、俄然のめり込みました。

 今では、メッシ選手がいる欧州サッカーを中心に、1日に平均5、6試合、年間2000試合以上を観ています。

 サッカーでは、選手の性格が如実に表れます。全員が主役にもなり、脇役にもなるドラマを、演出家なしに、ライブでやっているのですから、観ていて本当に面白い。だから私は、録画ではなく、ライブで観ることにこだわります。

 幸い、ヨーロッパとは時差があるので、試合は深夜から始まります。仕事を終え、帰宅してから、寝る間を惜しんでのサッカー観戦です。睡眠時間は毎日3、4時間くらいでしょうか。テレビ、タブレット端末、スマホと優先順位をつけて、自宅「三元中継」で、3試合を同時進行で観ることもあります。

 10余年来、観てきてわかったことは、「サッカーは人生の縮図、社会の縮図、人間関係の縮図」だということ。

 優秀な社員に仕事が集中するように、蹴りやすいところにパスを出してくれる選手には味方からのボールが集まります。ときには、自分にボールが回ってこなくて、不貞腐れたくなるような場面だってあります。仕事で不遇な時代もあった私としては、そんなときでも懸命に走って、プレーする選手を応援したくなるのです。

 実社会同様、やはりサッカーも最後は人間性。愛するメッシは、世界が認めるスターですが、驕り高ぶらず、謙虚な人間です。だからこそ、チームのみんなから尊敬され、その信頼に応えたプレーが、得点につながるのだと思います。

 観戦中は気になった点をメモに取り、試合終了後は専用のサッカーノートに、感想と自分なりの考察を清書します。

 だから、日本代表への愛あるアドバイスとして受けとめてもらいたいのですが……。先日のオーストラリア戦は、ベテラン選手がゲームをつくり、若者がゴールを決めるという、良い青写真が描けたように思います。一方で、今のサッカーはスピードがないと勝てません。W杯に向けて、緩急つけた動きを、さらに伸ばして欲しいと思いました。

 現在、私は65歳。こんなに夢中になれて、人生最後まで楽しめるものがみつかって、これほど幸せなことはありません。同年代の方のなかには、退職後に何をしていいのかわからない、という人もいるようですが、自分にピッタリくるものは、きっとあるはずです。

 ときには、周りの人の言葉や情報に、耳を傾けてみても、いいのではないでしょうか。私も、「メッシというすごい選手がデビューした」と小耳にはさみ、それでメッシに夢中になって、サッカーの面白さにはまっていったのですから。楽しい人生を切り開くきっかけも、結局は自分次第なのです。

 サッカー選手はプレーひとつで大きなクラブチームからの誘いもあるし、試合時間90分で人生が変わることさえあります。不貞腐れずにやっている姿はきっと誰かが見ていてくれるはずです。

 私だって、人生の後半に、大好きなサッカーでお仕事をいただけるなんて、思いもしなかったのですから。

(小柳 ルミ子)

関連記事(外部サイト)