マリンに個性的なフードメニューを 元ロッテ投手の新たな挑戦

マリンに個性的なフードメニューを 元ロッテ投手の新たな挑戦

開幕戦から登場する「井口監督のザ・豚骨ラーメン」と「井口監督の強炭酸ワサビハイボール」 ©梶原紀章

 初仕事は井口資仁監督へのプレゼンだった。若者は緊張した面持ちで立ち尽くしていた。試合前練習を終えた指揮官が食堂に入ってきた。席に座ると、昨年現役を引退し、今年1月からマリーンズの飲食担当として働く黒沢翔太さんは挨拶をした。「おお、クロ(黒沢)」と笑顔で応えてくれた。

 まず提案したメニューは豚骨ラーメン。春季キャンプ中に事前にお願いしていたアンケートで「細麺の豚骨ラーメンしか食べない」という事前情報を収集していた。だから、それにこだわったメニューを提案した。「いいね。美味しいよ。選手食堂にも出して欲しいぐらい」。そう言ってスープまで飲み干した。「井口監督のザ・豚骨ラーメン」が完成した瞬間。今シーズン開幕戦からZOZOマリンスタジアム内で販売となる。

■井口監督は「いろいろなものにワサビをつける」

 もう1点は異色の一品。その名も「強炭酸ワサビハイボール」。監督がハイボール好きということで練り出された、こん身の一品だ。

「監督のアンケートに『いろいろなものにワサビをつける』と書いてありました。それを見て、ああ、これだと思いましたね。白い山ワサビを入れたハイボールが話題になっているとも聞いていたので、それが一つに繋がりました」と黒沢翔太さんは自信満々に説明をした。

 最初は「ハイボールにワサビ?」と少し怪訝な表情をしていた指揮官も若者の熱意と説明に押され納得。試合前だけにアルコールを試飲することは出来なかったが、ジンジャーエールバージョンで味わいを確かめ、笑顔でOKサインを出した。これにて「井口監督の強炭酸ワサビハイボール」というちょっと風変わりなドリンクが誕生。こちらも今シーズン開幕戦から登場となる。

「現役時代はそんなに接点はないですけど、球場とかでは声をよくかけてもらっていました。今日は緊張しましたね」

 プレゼンを終え、開幕戦からデビューとなる井口監督の新メニューは無事にレールに乗った。撮影も終えると充実した表情を浮かべた。

■「特徴がない選手」と言われ続け……

 黒沢さんは10年ドラフトの育成1位でマリーンズに入団。13年7月に支配下選手登録をされると、一軍で14試合に登板をした。プロ初登板は13年8月29日の福岡ソフトバンクホークス戦(ヤフオクドーム)。最初に対戦をした打者は細川亨捕手(現イーグルス)。内野手がファンブルして内野安打を許した。初奪三振は松田宣浩内野手。そしてプロ最終年となった17年は2試合に登板。最後に投げたのは昨年のジャイアンツ戦(東京D)。阿部慎之助内野手をライトフライに打ち取ったのが最後のアウトとなった。

 その年のオフに戦力構想から外れたが、その場で球団から「残らないか?」と提案を受けた。最初は現役続行も視野に入れたがマリーンズ愛が勝った。今後は陰から支える側になる事で貢献をしたいと思った。打撃投手などのチームスタッフかと思っていたが提案されたのは職員だった。今度は営業職を想像したが、具体的に指示されたのは飲食担当。漠然としかイメージは思い浮かばなかったがすぐに面白さを感じた。

「元選手だから今の現役選手ともコミュニケーションをとりやすい。選手メニューを充実させられるかもしれないと思った。挑戦したいと思った」

■「存在感のあるメニューを作りたい」

 1月から出社をするとパソコンでの資料作りなどを覚えながら2018年シーズンに向けて監督、選手の飲食メニュー11点を考案した。石垣島で春季キャンプを行っていたチームの選手全員にアンケートの提出をお願いした。回収されたアンケートを目にして意外だったのはパフェ好きの選手が多いことだった。自身もパフェなどのデザートメニューを充実させたいという想いもあり、女性人気の高いプロ3年目の平沢大河内野手のメニューはパフェにした。黒蜜きなこパフェだ。

「食事の締めにパフェを食べるのが流行っている。ぜひスタジアムでも『締めパフェ』の流れを作っていきたいと思っています」

 オープン戦が始まると売店のあるコンコースを歩いてファンがどのような商品を買っているのか視察を繰り返す毎日。時には気付かれ、「頑張ってください」と声をかけられることもある。プライベートでもフードコートや高速道路のサービスエリアでどのようなフードが売れているかが気になるようになってきた。一日も早く新しい職場で存在感を出せるように日々、研究を重ねる。そんな時、ふと現役時代に言われ続けていたことが頭をよぎった。

「自分は全部が平均的な選手でした。悪い意味で特徴がなかった。サイドから投げているぐらいで、もう一つ何かを身につけないといけなかった。それはずっと言われ続けていたことだったのですが、なかなかそれを見つけることが出来なかった。だから今度こそ、ひと際、存在感のあるメニューを作りたいんです。特徴のあるフードメニューを作ってマリーンズに話題を作りたいです」

 29歳で始まった第二の人生に目を輝かせながら、取り組む姿がまぶしい。プロ野球生活で打たれた本塁打は中田翔(ファイターズ)、大谷翔平(当時ファイターズ)、マギー(ジャイアンツ)の3本。いずれも名のある強打者。悔しい想いは現役を引退した今もあるが、なぜか誇らしい気持ちも芽生えている。

 2018年、昨年までユニフォームを着ていた元選手が企画考案した選手メニューから目が離せない。今季の千葉ロッテマリーンズはフィールドはもちろん、大谷から打たれた男が次なるフィールドでどのような存在感と個性を出すかにも注目をして欲しい。

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

(梶原 紀章)

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