筒美京平自らが選曲した“アイドルものの原点”とは――近田春夫の考えるヒット

筒美京平自らが選曲した“アイドルものの原点”とは――近田春夫の考えるヒット

絵=安斎肇

『筒美京平自選作品集 アイドル・クラシックス』(Victor)

 ある意味キャリアのスタートともいえる、ヴィレッジ・シンガーズに提供した『バラ色の雲』の大ヒットから数えて今年で50年という節目を迎えた京平さんであるが、なんと遂に! はじめて“ベスト盤の自選”をされたとのニュースを耳にして好奇心を抑えきれなくなり、取り寄せてもらおうと編集に相談したところ、Columbia、Universal、そしてVictorの各社から、それぞれテーマ別にて膨大なカタログ数での発表だそうで、その全てを網羅しての感想となると、紙幅の関係からいって物理的にも無理があろうという判断が下り、とりあえず今回はVictor盤の、アイドルものだけでまとめられた作品集のみにしぼりたいと……。

 まぁこの『アイドル・クラシックス』だけでも全40曲ともなれば単純計算、3社分の総ボリュームは120作ということになろうか。それはたしかに編集のおっしゃる通りではありますが、本音をいうとフルセット欲しかったょ〜。こればっかりは流石の俺もWEBの検索じゃなくって、ちゃんとCDで通して聴きたかったもん。

 とかなんとか自分で買わずに済ませようとする、こちらの甘い魂胆を見透かされた?格好の私ではあったが、久々に、単に音をチェックしたいのではなくパッケージを手に入れたい。そんな思いにも駆られたという訳で、この辺りの心理を掘り下げていけば、まだまだCD産業に未来はあるのかも……。そんなことも考えさせられた次第ではある。

 それにしても気になるのが、御自身のチョイスは一体どのようになっているのか? だ。早速2枚組CDの曲目順に目をやると、DISC-1のM1が石田ゆりの『悲しみのアリア』(1970)となっている。恥を忍んで正直に申し上げるが、俺、この曲知らなかった(読者諸兄におかれましても、事情はおなじようなものなのでは?)。

 おそらくはアルバムの構成が、発表時期に従ったものとの可能性もあるにせよ、それにしてもこの曲、アルバム全体の筆頭となっている訳で、ポジションは決して軽くない。いってみれば“筒美京平アイドルものの原点”としての選曲であったとするならば、やはり一ファンとしては大変に興味深い。なんとなれば『悲しみのアリア』その一曲が次の『17才』以降と比べるとダントツに歌謡曲臭が強い。いわゆる和製ポップスを世に定着させたといって過言ではない作曲家にとって、果たしてそれが何を意味するのか。

 そんなことを考えながら、このアルバムを流れに沿って聴いていくと――先程もチラリと触れたが――ネットなどでバラバラに曲をひろって楽しむのとは明らかに違う喜びや発見が待っている。筒美京平という音楽家の内側にあるものが、ボンヤリとではあるが、透けて見えてくるような、そんな気にもさせられるのである。

 個人的には、編曲を本人が手掛けたものとそうでないものの違い。そこいらへんの再確認が楽しかったっすね。

『筒美京平自選作品集 アイドル・クラシックス』(Victor)
大人の歌謡曲中心のColumbia『AOR歌謡』、ニューミュージックよりのUniversal『シティ・ポップス』との同時発売。南沙織『17才』(1971年)、麻丘めぐみ『わたしの彼は左きき』(73)、太田裕美『木綿のハンカチーフ』(75)、松本伊代『センチメンタル・ジャーニー』(81)、斉藤由貴『卒業』(85)、小泉今日子『なんてったってアイドル』(85)、高橋由美子『元気!元気!元気!』(91)など、全40曲を収録。

(近田 春夫)

関連記事(外部サイト)