昨季96敗のヤクルト 2018年に希望の光はあるのか?

昨季96敗のヤクルト 2018年に希望の光はあるのか?

7年ぶりにヤクルトに復帰した青木宣親

 開幕戦特有の、この清々しい雰囲気が大好きだ。以前、「プロ野球ファンには3回の正月がある」と書いたことがあるけれど、「3度目の正月」が来て、晴れやかな気持ちでこの日を迎えている。ちなみに、「3回の正月」とは、新年の訪れである1月1日、キャンプが始まる2月1日、そして、開幕戦のことである。

 開幕戦とは、その年のチームの戦い方、大げさに言ってしまえば「哲学」のようなものを表明する場なのだと僕は考えている。「今シーズンのうちは彼を中心に戦っていきますよ」「今年はこのような打順で得点を奪いに行きますよ」「今季のリリーフ陣にはこんな顔ぶれがそろっていますよ」と、球団からファンへのお披露目興行のような側面もあるように思うのだ。今年、開幕マウンドを託されることになったのは来日2年目のブキャナンだ。「今シーズンのヤクルトはブキャナンを中心に展開していきますよ!」という小川淳司監督からのメッセージ。しかと受け止めたい。

■チームメイトを「家族」と呼ぶナイスガイに託した開幕戦

 それにしても、ブキャナンはナイスガイだ。来日早々となる昨年の開幕前には、日本語で「家族」と書かれたTシャツをプロデュースし、チームメイトやスタッフに配布した。ファンサービスにも積極的で、特に子どもファンに対しては自らの練習ウェアやスパイクなど、惜しげもなくサイン入りであげている光景をしばしば目にした。

 昨年は好投するものの、打線の援護に恵まれずに6勝13敗と黒星が先行した。それでも、QSを達成しながら勝利を挙げることができなかった試合は、実に11度もあった。チームで唯一、規定投球回をクリアしたのもこの男だった。昨年まで一軍投手コーチを務めていた伊藤智仁(現・富山GRNサンダーバーズ監督)はかつて、彼をこう評した。

「彼のプレースタイルは本当に気持ちがいい。周りに“彼を勝たせたい”と思わせるピッチャーだからね。常に闘志をむき出しにしているし、バッティングも守備も、何をやらせても一生懸命。試合になると、普段とは別人のような表情だしね。自分が降板した試合でも、チームが勝てば普通に喜んでいるし、キャンプでも外国人用の特別メニューじゃなくて、日本人と同じメニューで夜間練習までしていましたからね」

 昨年5月30日のオリックス・バファローズとの一戦に先発した際には痛烈な打球を足に当てたものの、それでも平然とマウンドに立ち続けた。当時の伊藤コーチが「一度、ベンチに戻って手当をした方がいい」と諭したものの、ブキャナンは「ノー!」と拒否したという。このとき、ブキャナンは言った。

「オレは絶対に引き下がらない。絶対にマウンドに居続けるんだ!」

 一度マウンドに上がったのならば、最後までそれを守り続ける。先発投手ならではの矜持は他のどの投手よりも強い。そんな男が、再起を図るチームの2018年開幕マウンドを託されたのだ。ブキャナンが意気に感じていないはずがない――。

■ファンに聞いた「2018年の希望の光」とは?

 ……さて、ここまで何食わぬ顔で、普通の「開幕原稿」を書き綴ってきたけれど、ヤクルトにとって2018年の開幕は、決して「普通」ではない。「96敗」という球団ワーストとなるシーズン敗戦記録を経験した屈辱の17年シーズンを経て、再起を図る大切なシーズン。それが2018年だ。

 開幕前に、ヤクルトファンによるヤクルトファンのための『スワらしい時間』というYouTubeの番組にゲスト出演させてもらった。先週発売されたばかりの新刊『96敗 東京ヤクルトスワローズ それでも見える、希望の光』のプロモーションを兼ねてのゲスト出演だったのだが、その際に僕は視聴者の方に向けて、自著のタイトルに絡めて、「あなたが考える2018年ヤクルトの希望の光は?」という質問を投げかけ、ツイッターで投稿してもらった。すると、瞬く間にタイムライン上は「希望の光」で埋まることとなった。

 具体的な個人名では、「メジャーリーグで戦ってきた百戦錬磨のミスタースワローズが、変わろうとしているスワローズに明るい、未来へ導く光を見せてくれる」という理由で青木宣親を挙げる人が多かった。さらに、「青木選手が帰ってきてマークが分散されることで、またトリプルスリーが狙えるくらい活躍してくれるのではないか」と山田哲人に対する期待の声も目立った。

 あるいは若手の名前では、「あのフルスイングはたまらない」と廣岡大志を挙げる人が圧倒的に多かった。他にも、「センスがあるし、何よりあの明るいところがとても好ましい」という理由で奥村展征の名前もあったし、「今年こそ」と高橋奎二に対する声援もあった。

 目立ったのは小川淳司監督に対するエールだった。笑ったのは「強烈な個性のコーチ、才能あふれる選手の間に立ち、チームのトップでありながら中間管理職のような立場」という指摘。みんな同じことを考えているんだなぁ(笑)。でも、自ら「調整型」を任じる小川監督だからこそ、百戦錬磨のコーチ陣と、捲土重来に燃える選手たちとのバランスをきちんととってくれるのだと、僕は期待している。

 そして、選手や首脳陣ではなく、「96敗でも応援し続けたファンの存在」とか、「スワローズを愛する人たちの力」など、「96敗しても、批判や暴言を吐かずに熱心に応援したファン」を「希望の光」と考えている人が多いのが印象的だった。

 確かに、昨年は基本的には負け試合ばかりを見続けることになったにもかかわらず、それでも神宮球場に足繁く通ったり、あるいはテレビの前で声を嗄らしたり、携帯を握りしめながら一球速報に思いを託したりしていた熱心なヤクルトファンの存在は、どん底にあえぐチームの支えとなっていたのは間違いない。そして、それはヤクルトの宝であり、力でもある。今年も多くのファンがツバメ戦士たちを後押しすべく、力の限りの声援を送ることだろう。僕もまたその一部となりたい。

 ここでは紹介できなかった意見はたくさんあるので、ぜひ「#2018希望の光」で検索してみてほしい。数々の希望の光が強烈な光の束となって、真っ直ぐに神宮球場に降り注ぎ、まばゆいばかりの光の中で躍動するスワローズナインたちの姿が浮かんでくるはずだから。

 開幕戦当日の試合前までは、昨年日本一の福岡ソフトバンクホークスも、96敗の東京ヤクルトスワローズも、12球団すべてが「貯金0、借金0」の対等な立場だ。しかし、今日の夜からは食うか、食われるかの過酷な戦いがスタートする。ここからの半年余りは一喜一憂する日々が続く。一喜一憂ならちょうど5割。昨年は一喜二憂以下のペースだった。今年は二喜一憂のペースで喜びを味わいたい。そうすれば、勝率は.666だ。いやいや、前年96敗のチームだ。ここは謙虚に一喜一憂で御の字だろう。

 今年も、プロ野球が始まろうとしている。楽しくもあり、苦しくもあり、やっぱり楽しさしかない毎日。今年もどうぞよろしくお願いいたします!

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(長谷川 晶一)

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