「ボレロ」を踊ることを許されたダンサー・柄本弾が挑むこと

「ボレロ」を踊ることを許されたダンサー・柄本弾が挑むこと

柄本弾さん ©深野未季/文藝春秋

 世界的振付家のモーリス・ベジャールの傑作『ボレロ』と『ザ・カブキ』が相次いで上演される。柄本さんは現在『ボレロ』を踊ることを許されているただひとりの日本人男性ダンサーだ。

 しかし、その『ボレロ』デビューはほろ苦いものだった。初めて踊ったのは2015年。足首の深刻な故障を抱えていた上に、突然の雨で屋外ステージに設置された赤い円卓には水たまりができていた。

「何一つ思うように踊れませんでした。袖に引っ込んだ瞬間に突っ伏して号泣しました」

 ジョルジュ・ドン、シルヴィ・ギエム……世界屈指のダンサーが踊ってきた『ボレロ』を、今回は〈20世紀の傑作バレエ2〉で、満を持して昼夜2回踊る。

 暗闇の中、赤い円卓の上の“メロディ”(柄本さん)が周囲を取り囲む大勢の“リズム”を挑発していき、やがて両者の熱気溢れる舞いは最高潮に達する。まさに全身全霊を捧げることを要求される作品で、ダンサーの精神性もむき出しになる怖さがある。

「主役を踊らせていただくようになって、いつも感じているのは、団員みんなが背中を押してくれるからこそ、中央に立っていられるということ。

『ボレロ』も、僕を見るみんなの視線に力をもらって踊りきることが出来るんです」

 周囲を圧倒する華を持つダンサーはあくまで謙虚だ。

 もう1つ、この年末に控える大舞台が『ザ・カブキ』。東京バレエ団の創始者、故・佐々木忠次さんが盟友ベジャールに創らせた作品で、歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』が下敷きとなっている。その感動的な誕生秘話は 『孤独な祝祭 佐々木忠次』 (追分日出子著 文藝春秋刊)に詳しい。

 1986年の初演以来、世界16カ国で197回上演されており、柄本さんは2012年にバレエの殿堂パリ・オペラ座で主役の由良之助を演じ、喝采を浴びた。今回は、秋元康臣さんと日替わりで由良之助を演じる。

「日本人の魂のこもった作品ですが、男性ダンサーがここまで活躍できる作品はほかにありません。現代の東京に生きる青年がタイムスリップし、由良之助として討入りを決意する。そのとき、四方八方から躍り出る四十七士が次々に桐の紋の襖(ふすま)を突き破っていくシーンは鳥肌が立ちます」

 来年7月、『ザ・カブキ』を引っ提げ、名門ウィーン国立歌劇場とミラノ・スカラ座に出演することも決定した。

「ぜひ、舞台狭しと暴れまわる四十七士の“討入り”を劇場で目撃してください」

つかもとだん/1989年京都府生まれ。5歳からバレエを始め、2008年に東京バレエ団に入団し、『ドナウの娘』で初舞台を踏む。10年『ラ・シルフィード』『ザ・カブキ』で主役を射止め、12年『ザ・カブキ』パリ・オペラ座公演で主役の由良之助を演じた。13年にプリンシパルとなった。

INFORMATION

〈20世紀の傑作バレエ2〉
11月30日〜12月2日
柄本さんの『ボレロ』は12月1日の13時、17時の回 11月30日、12月2日の『ボレロ』は上野水香さん ??
新国立劇場中劇場
https://www.nbs.or.jp/stages/2018/20ballet/index.html

『ザ・カブキ』
12月15日 由良之助 柄本弾
16日 由良之助 秋元康臣
東京文化会館
https://www.nbs.or.jp/stages/2018/kabuki/index.html

【問】NBSチケットセンター 03-3791-8888

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2018年9月20日号)

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