失恋したゲイの僕が、それでも「モー娘。」を応援する理由

失恋したゲイの僕が、それでも「モー娘。」を応援する理由

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 最近失恋した。それはもう猛烈な失恋をした。

 どう猛烈かというと、29歳にもなって2年近くその人だけを思って片思いし、あっさり振られてしまったのだ。振られたのは夜中まで飲んだ未明も未明で、闇に紛れて消えたくなるほど気が滅入ったが、なんとか「分かったよ」とクールに伝えて帰ってきた。

 ゲイの人々の間には「ノンケっぽい(ゲイではない男性っぽい)」という代表的な褒め言葉がある。これは「あなたって自然な感じで男性性(オトコ)を携えていらっしゃるんですね」という意味で、それだけ皆“オトコ”への憧憬と渇きがある世界なのだろう。僕も恋の終わりくらい、良い男として“オトコ”らしく締めたかった。

 だけどそれも無駄だった。帰り道でどうしても気になってしまうのはパジャマ姿でコンビニで立ち読みする男女のささやきや、夜の公園で青く光るブランコ、小さく寒そうにしている月で、聴きたくなるのは断然「aiko」。失恋した僕の中で泣いてるのは“オトコ”というより完全に“オンナ”だった(ゲイの人は皆そんな感覚、というわけでは全くないが)。

 ちなみに聴いていたのは「三国駅」だ。aikoの出身大学の最寄り駅であり、実は僕の地元でもある。僕とaikoは同じ水を飲んで育ったわけだ。もしかしたら気付いてないだけで僕はaikoなのかもしれない。ていうかそうだと思う。寝てる間に曲作ってんのかもしれない。

 そういうわけでメンタルどしゃぶりで家についた僕は、なんとか生命維持をせねばと真っ暗な部屋でぼんやりテレビをみていた。録画欄には予約した記憶さえない番組が並んでいて、やれ温泉特集だの、花火大会がありますだの、独り身が爆死しかねないものばかりである。

 リモコンの「次」ボタンをガシガシ押しながらやっと見つけたのは音楽番組だった。これなら何も感じず見られそう。そんな気楽な気持ちで選んだ番組だったが、僕はそこで運命の出会いを果たした。『モーニング娘。’18』と出会ったのだ。

■モーニング娘。’18「もっと私だけ、愛に保証つけて」
僕「これじゃん…」

 彼女たちは時の新曲『Are you happy?』を披露するところだった。やたらめったら仰々しいライトを浴び、しずかに始まりを待つ彼女たちの表情は真剣そのもの。全員なんだか分からないが、「あたしたち、マジですからね……!?」とでも言いたげな顔をしていた。思わず「いや、知りませんけど……」と言いたくなる。しかしそのなりふり構ってない少女たちの勢いにリーダーシップともとれる覇気を感じて、急激に期待しはじめる自分がいた。

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 曲はいきなりセンターをつとめる牧野真莉愛ちゃんが「Are you happy?」とキメ顔で言い放つところから始まった。ズー! ズッ! ズッ! ズーズッ! 心臓に響くようなビート音が鳴り始め、皆が一斉に踊り始める。

 娘たちは頭をガンガン振り、手なんてもうブン回しである。僕はみるみるその強烈な世界観に飲みこまれていった。佐藤優樹ちゃんがつぶやき始める、「もっと私だけ……」。更には他のメンバーも手をゆらゆらと振りながら加勢していく。「もっと私だけ……もっと私だけ……」。最後は全員が一列になり前方を指差して3度も叫んだ。

「愛に保証つけて!!!」

 真っ暗な部屋で僕は思った、「これじゃん……」。ステージが終わった後はひたすらYouTubeでモーニング娘。の過去動画を漁る自分がいて、そして僕は瞬く間に彼女たちの虜になっていた。

■“選ばれた人間”より、“意志のある人間”を集めるモーニング娘。

 思えばこれまでアイドルにハマったことはなかったのだが、それは「選ばれた女」が“オトコ”のために“オンナ”をやっていると感じていたからだ。僕の中の“オンナ”は幼い頃から「オカマっぽい」といじられる種で、誰かに評価されたり選ばれることなんてなかった。

 1次審査どころか、書類審査にさえ出せなかった僕の中の“オンナ”。彼女がアイドルに自己投影できるわけなんてなかったし、楽しんで消費できるわけもなかった。僕にとってアイドルは、極めて関係のない世界の住人だったのだ。

 だけど僕の目に写る『モーニング娘。’18』は「選ばれたかどうか」なんて微塵も気にしていない顔をしていて、そして何より、“オトコ”のためでも、誰のためでもなく、自分のために、“オンナ”を叫んでいるように見えた。

 つんく♂さんはモーニング娘。の人選について、「努力で自分を変えようという強い意志がある子を選んでいる」と語っている。それは元をたどれば一期生からそうだ。オーディション番組で落選し、「選ばれなかった5人(中澤裕子、石黒彩、飯田圭織、安倍なつみ、福田明日香)」が「CDを5万枚手売りで売る」ことを条件にメジャーデビューしたグループがモーニング娘。なのだ。「選ばれたかどうか」じゃなくて、彼女らは自らの道を「選ぶ」ことで進んできた。

 グループ名に「18」という、年ごとに進化を遂げて行くという意思が付された今も、「アイドルになるために生まれた」と一目で分かるような存在の集まりではなく、どこか「光るもの」を持ち、そして努力でその原石を磨き続けられる子たちが集っている。

まだカクカクだった頃の飯窪春菜さんが見られる

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 例えば先日卒業を発表した飯窪春菜ちゃん(動画内茶色)なんて長年ダンスがカクカクだったが、先の『Are you happy?』しかり、ずいぶんと踊れるようになって、自分らしい魅せ方を身につけてきた。飯窪さんは加入後、今が間違いなくパフォーマンスもルックスも一番完成度が高く、卒業するのは惜しいが、ストイックに向上し続ける姿勢はどこに行っても彼女を輝かせるのだろう(涙)。

■もはや“オトコ”を蹴散らす、爆発的な歌詞

 そしてモーニング娘。の“オトコのため”感のなさは、歌詞を見ればまず一目瞭然である。

 例えば先の楽曲『Are you happy?』の中では、歌の背後でずっとメンバーの誰かが何かを叫んでいて、よく聞いてみて欲しい、叫んでいるのは「ローンリネーーーーーーーース!!!!」だ。

「いや、大丈夫か?」と聞きたくなるが、このオトコ受けとの距離ある叫びに僕は気持ちを持っていかれるのである。

 それ以外にも現在の「EDM期」と呼ばれるモーニング娘。となり、初のオリコン1位を獲得した「Help me!!」(作詞:つんく 作曲:つんく)。この曲も歌詞を読んで欲しい。

助けてお願い
か弱い私は
涙も出そうにない
(Ha)
(Ha)
(Ha)
本音が言えない
本音が言えない
?言えナイチンゲール

「言えナイチンゲール」なんて言われたらもう、こちとらお手上げなわけだが、この歌は最後、以下の歌詞で終わる。

キラキラしてる女の子
私は羽ばたくよ
グズグズしてる男の子
後悔しないでね

ピンチから
掴みとる
栄光

 どういうことや……。

 つんく♂さんはこの曲について「都会の中の孤独感とすぐそばにあるポジティブ力」をテーマにしたと語っているが、「言えナイチンゲール」は、ボケてしまうほどに余裕のあるポジティブ力の表れだったのか、それとも寂しさ煮詰まってハイになっちゃうほどの孤独感を表しているのか、はたまたそのどちらともなのか、とにかくこのカオスに “オンナ”の開放というか、“オトコ”の目を蹴散らすほどの爆発を感じるのである。

■「あんたの中の“オンナ”は、マジのあんたなんでしょ?」

 僕はモーニング娘。の過去動画を見漁った後、これからの自分の人生には彼女たちの爆風が追い風として必須だと感じていた。モーニング娘。の本質は爆発性にあるんじゃないかと僕は思う。『サマーナイトタウン』も『LOVEマシーン』も『Help me!!』も『Are you happy?』も「どないしたんですか…?」と聞きたくなる凄みがある。彼女たちはいつの時代も勝手に大マジなのだ。

 つまり僕は彼女たちに「あんたの中の“オンナ”は、マジのあんたなんでしょ? もっと堂々としてな?」と言われた気がしたのだ。思春期には蓋をされ続け、ゲイであることをオープンにしてやっと出てこれた僕の中の“オンナ”。でも彼女は、恋に目がくらんだ僕に再び袖にされ続けてきた。誰かに選ばれることの方が僕はずっと大切だったのだ。

 でも僕の中の “オンナ”は、誰のためのものでもなく、ただ僕が僕であるために必要な感性だと『モーニング娘。’18』に出会って改めて気付いた。彼女は確実に僕の一部だ。そう思えた瞬間、もうなんだか自分が愛しく思えてきてしまって急にダラダラ泣けてきた。そして気付けば失恋とかどうでもよく思えてきていた。ていうか僕を振ったあいつとか、よく考えれば全然格好良くなくない? 全然もっといい男いるくない!? はぁ!? 絶対いるよね!?!?

 OGの吉澤ひとみが飲酒ひき逃げ事故を起こすなど、ネガティブな爆発報道が続く「モー娘。」だが、どうか爆発のベクトルだけをしっかり見定めて、これからも「あたしたち、マジですからね……!?」という顔で僕に勇気と元気をわけてほしい。

 誰かに選ばれる必要も、評価される筋合いもない。僕もこれから『モーニング娘。’18』みたいに叫んでいきたいと思う。「ローンリネーーーーーーーーース!!!」。

(太田 尚樹)

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