優勝目前に復習したい、黄金時代の胴上げとビールかけ秘話

優勝目前に復習したい、黄金時代の胴上げとビールかけ秘話

1987年日本シリーズ第6戦 優勝しスタンドに向かってバンザイして飛跳ねる工藤公康(右)

「最高です!」「最高で〜す!」「最高!」何度も何度もこの言葉が飛びかった26日の夜。広島が優勝を決めた祝勝会の様子だ。選手たちはこれを目標に日々練習を積んでいるので、この瞬間に喜びもピークに達するのだ。3連覇を果たしたものの昨年、一昨年はビジターで決めたものなので、地元でのビールかけは格別だったと思う。

 今ではプロ野球のチームが優勝を決めると必ず行われるビールかけ。歴史を調べてみると、1959年に南海(現ソフトバンク)が巨人を破り日本一を決めた時が最初と言われている。アメリカでプレーしたことがあるカールトン半田が、シャンパンファイトをヒントに行ったそうだ。60年近くも前の話になる。「ビールがもったいない」という言葉も耳にするが、そこはひとつ大目によろしく。

■「豆乳」がビール代わりに? 黄金期の思い出

 試合を戦って勝利して優勝を決めるのが理想だが、相手の動向にもよるのでいろいろな形の優勝がある。西武が最初に優勝したのは、この年まで前後期制が採用されていた1982年の前期。6月25日、後楽園球場での日本ハム戦はナイターだったが、マジック対象の阪急がデーゲームで敗れたために決まったもの。そして、そのナイターは引き分けに終わり、喜びも中途半端だった記憶がある。しかし、10月14日に後期優勝の日本ハムとのプレーオフを制し、リーグチャンピオンに輝いたときは相手に勝利してのものだったので、喜びを爆発させての胴上げが行なわれた。

 この胴上げ、慣れていない選手たちは喜びにあふれて、腕に力が入らずうまく行かないものと口々に語る。その気持ちも分かるような気がする。最近目にする胴上げの輪の外側で、カメラを意識してジャンプする姿。これは、工藤公康(現ソフトバンク監督)ら「目立ちたがり屋」のアイデアからのものだ。でも、胴上げにお尻を向けるのは不謹慎、という声もある。

 そして、祝勝会会場に移動してのビールかけ。これも、初めのうちは球団スタッフがノウハウを持ち併せていないため、冷蔵庫でギンギンに冷やされたものが出されていた。これでは冷たいやら、泡は出ないやら。翌年からは生ぬるい、泡の出やすいものが用意されていたのは「学習効果」か。また、準備するビールの本数が少なくなり、どこから持ってきたのか当時の広岡達朗監督が勧めていた「豆乳」がビール代わりになっていたこともあった。

 私もインタビュー要員として参加したことがある。事前に着替えや雨合羽を準備して用意周到で臨んだものの、靴がびしょ濡れになることまで想定できず、グジュグジュ鳴らしながら帰宅したのは今では良い思い出だ。最近は選手たちの準備もよく、ゴーグルは必需品になっている。いつごろから導入されたかは定かでないが、これは「ヒット商品」。目に入ると、しみて充血し真っ赤になってしまうので。また、準備期間が十分に取れればビールかけ用の帽子やTシャツも球団から用意される。

■ファンがビールかけに参加できることも

 地元でのビールかけには、様々な形でファンも参加できることもある。以前、球団事務所の3階にある宴会場で行った時、バルコニーの下に大勢のファンが詰めかけていた。会場内で一通り騒いだ後、選手たちは代わる代わるそのバルコニーからファンたちにビールを浴びせるのだ。瓶ではもどかしいので、もっぱらバケツに入れてそれをまき散らす。そのたびに歓声を挙げて喜びを表現する光景は、まさにファンとの一体感が伝わってくる。

 90年のルーキーイヤーにビールかけに参加した鈴木哲(現編成部)の言葉が印象に残っている。「やっぱりプロとアマ(熊谷組)では違いますねえ」と。当然、ビールの量のことかと思ったが、「アマの時は、後片付けを自分たちでモップを持ってやりましたけど、プロはスタッフがやってくれますから」。当たり前のことだが、アマの選手たちのその姿を想像するだけでも微笑ましい。

 こんな楽しいイベントも、何年も続くと感激も薄れてしまうもの。選手会長の音頭の前に喜びのあまりフライングを犯して誰かが始めてしまうのがいつもの流れも、黄金期の最後の頃はみんなが比較的冷静に。さて、と始まればそれなりに盛り上がるが、時間も短めになる。これはリーグ優勝時のこと。次なる日本一が最終目標ということが誰もが分かっているからこそのものなのだ。まあ、贅沢といえば贅沢な話。

 西武は29日にマジック「1」で迎えた地元最終戦に敗れ、20年ぶりの地元胴上げは叶わなかった。これで胴上げ、ビールかけは30日からの札幌での日本ハム戦以降となった。ビールの本場だが、気温が低いのでくれぐれも風邪に注意を。

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(中川 充四郎)

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