さらば頼れる男 仲間思いでファン思いの小谷野栄一よ、永遠に

さらば頼れる男 仲間思いでファン思いの小谷野栄一よ、永遠に

2015年にFAで日本ハムからオリックスに移籍した小谷野栄一

 昔ある所に、一人の“野球木こり”の男が住んでいました。木こりは数人の野球選手を所有していましたが、特に球界を代表するスーパースターや、強烈なカリスマ性でチームを牽引するリーダーは持っていません。しかし、今の自分の選手達を大切に育て、苦しいながらも立派にペナントレースを戦っていました。

 ある日、木こりは作業中に大切な自分の選手を池に落としてしまいます。木こりは大層焦り、嘆き悲しみました。

「あぁ、なんと言う事だろう。この選手が居ないとペナントレースが戦えない」

 涙する木こり。すると何という事でしょう、池の中から一人の女性が現れます。彼女は自分の事を神だと名乗り、木こりにこう言いました。

「木こりよ、お前が落とした選手は、この球界を代表するスーパースター選手ですか? それともこちらの強烈なカリスマ性でチームを牽引するリーダー選手ですか?」

 キラキラと輝く選手達を見た木こりですが、正直者の木こりはこう答えます。

「いえ、神様。私が落とした選手はそんなキラキラと輝く選手ではありません。派手さは無いがコツコツと真摯に野球に取り組む選手、チームプレーを最優先する、自分にとってはそれはそれは大切な選手なんです」

 木こりの言葉を聞いた女神はこう言いました。

「木こりよ。お前は何と正直者なのでしょう。それではお前が落とした選手に加えて、この、打点王を獲得した経験があり、且つリーダーシップを強く発揮しチームを牽引する、北の大地で活躍しているこの選手をお前に授けましょう。」

 こうして木こりの選手達の中に、一人の男が加わる事になりました。2015年の出来事です。

■チームメイト思いでファン思いな王者の最後の戦い

 その男は類まれなる勝負強さと、堅実な三塁の守備で勝利に貢献し続けました。多くの選手が故障し戦えない中でも、男はずっと定位置を守り続けました。時に激しく、時に静かに、精神的支柱として、若手選手のお手本としてチームを鼓舞し続けました。普段は余り喜怒哀楽を表に出さない指揮官の勝利監督インタビューの時も、その男の話題になれば「期待に応えてくれた」「彼ならばやってくれると、全てを任せていた」と自然と笑みがこぼれます。

 ある日、チームメートに向けて心無い野次がスタンドから飛び込んできました。チームメートの頑張りをよく知っていた男は、自分が野次を浴びるより遥かに激昂し、スタンドに向けて怒りを露わにしました。自分の先輩の引退セレモニー、進行に手違いがあった時も、その先輩の門出に対して失礼だと、自分の事のように悲しみ、進行に異を唱えました。

 とある記者から「ファンの方達にも、もっと一つになって球場を盛り上げて欲しいのではないか?」と問われた時、「それは誰に対しての質問なのか? 毎試合俺たちに勇気と力を与えてくれるファンの方々に俺たちが何を望むんだ? それは聞く相手を間違えている。俺たちがファンの方々にああして欲しい、こうして欲しいと望める訳がないだろう!」と答えました。

 その姿勢を見続けた若き選手達も、プロ野球選手の本当のあり方を知り、真摯に練習に、そして試合に取り組みました。日に日にチームは戦うプロの集団に変貌を遂げていきます。本当はその男も病魔と闘いながら、満身創痍でグラウンドに立っていたのに。刻々と迫り来る終焉の時を感じながら、男は最後の一滴まで、その汗をオリックス・バファローズの為に流し続けました。打点王で、優勝の立役者で、日本代表だった男の最後の戦いでした。

■答えを出すのは意思を受け継いだ選手達の戦いだ

 あの日、木こりが出会ったのは、本当は女神様ではなかったのかもしれません。何故なら、彼女は木こりに素晴らしい選手を授けてくれましたが、それでもチームは優勝出来なかったからです。しかし、彼女が授けてくれたその男は、チームに途方もなく大きな財産を残してくれました。野球に取り組む姿勢と、チームメイトへの愛情と、ファンへ向けた感謝の気持ち。それはそれは大きな物でした。

 その後、その意思を受け継いだ選手達が優勝と言う夢の先に辿り着いたのならば、あの日出会った女性は本当に女神様だったと言う事になりますが、このお話はここまで。続きは来季以降も続くペナントレースが伝えてくれることでしょう。ありがとう小谷野栄一。

打ち捌け さぁ広角に その感性で

勝負強さ今 如何なく揮わせ 一瞬の隙も逃さない 頼れる男

小谷野 小谷野 かっ飛ばせ 小谷野

小谷野栄一応援歌/オリックス・バファローズ私設応援団

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(DOMI)

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