毎打席「生きるか死ぬかよみうりランドか」 巨人・廣岡大志の一発に見た“覚悟”

毎打席「生きるか死ぬかよみうりランドか」 巨人・廣岡大志の一発に見た“覚悟”

廣岡大志

「おっ!? おーー、うおおおー!!!!!」

 という、およそ10000人のマスク越しに漏れたどよめき!!

 つい先月、トレードで巨人軍にやって来た未完の若武者が、前年度沢村賞の剛腕サウスポーから放った、ライトスタンドへの美しい放物線。

 背番号32は弾けるように右手を挙げ、しかし直ぐに自分の成し遂げた事にビックリした様に、ハニカミながら小走りでダイヤモンドを一周した。

 それは、文字通り「値千金」の一打であった。

■17時45分開始って早くないですか?

 ってすんません!!! 原稿を書くのが、涙のセカンドゴロ・吉村禎章ばりに久々だったので、ガラにもなくノンフィクションの出来損ないっぽくなりました。

 改めまして。昨年度この文春野球にて不肖ながら巨人の監督を1年間務めさせていただいた、スタイリストの伊賀大介という只の巨人ファンです。

 いやー、堀内政権並みに厳しかった昨シーズン。勝敗以前に、とにかくローテだけは守らねばならん! と頑張りましたが、ソフバン相手の日シリと同じく力及ばずで黒星街道。「原稿のセンスが無い」と、新庄剛志の様にバックレたいと思った夜もありました。が、今となってはスイート・メモリーズ。

 これからは、気軽にプロ野球を100倍楽しもうと思っていた矢先、新監督・菊地選手より「負け逃げは許されない! 大ちゃんシビれる所で行くよ!!」と、まさかのスクランブル登板指令!!

 ビビってたじろぎながらも、意を決して「ワタシはキクチの兵隊だ」と、リングスのロシアの狼、ヴォルク・ハンの言葉を思い出し、恥ずかしながらの帰還を果たした次第です。

 となれば、やっぱりプロ野球ニュースとDAZNだけでは物足りない。

 ここは今シーズン初観戦しかねぇ! と、思った月曜深夜。

 なんとか都合が付くのは明日だけだ。ワンチャンあるか!? と、チケット調べたらドラゴンズ戦のFC指定・一塁側最前列をあっさり入手。

 嬉しくもあるが、前日でコレってコロナ禍での球団経営は大丈夫なのか? なんて余計な心配したりして。

 とにかく明日は巨人、いやさプロ野球が観れるのだ、今日は寝よう。

 因みに最近の寝巻は、ミズノプロコレクションのパーカーだ(流石に着心地良し)。

 火曜。働きつつも心は水道橋方面へ。

 てか、17時45分開始って早くないですか?? たった15分だが、労働者の15分はかくも重い。

 一球速報も見ずにダッシュで駆けつけたが、3回表中日の攻撃。内野陣のボール回し、セカンドの背番号0を見てよっしゃオレの尚輝!!! スタメンでよかったねー、なんて思ってたら増田じゃねえか!!(いや全然増田好き。去年の丸セカンドゴロ〜ホーム突入は名シーン!)

 慌ててスコアボードに目を移すと、三番梶谷! ファースト廣岡!! レフト石川慎吾!!という、オープン戦序盤の様なマジカルなオーダー。

 一瞬ファッ!! と思ったが、巨人ファンが辰徳(愛を込めて敬称略)に文句を言ってはいけない。浪人時代に孫子の兵法と三国志演義インストールしてんだから。あのエモやんが認めた男が決めたスタメンに口を出すべきではない。

■ヤング・ジャイアンツの躍動に千金の価値があった春の夜

 尚輝か湯浅クン終盤に守備固め入らないかなー、と思いつつイニング間に野球ニュースを見ると、試合前練習に新外国人スモーク、テームズ合流! シート打撃でパワフルなサク越え連発!!! との見出しが飛び込んでくる。

 俺たちは呑気に楽しみにしているが、 若手ピラニア軍団 達は気が気じゃないだろう。

 が、2人増えれば、2人がよみうりランド行きなのは当たり前。だったら結果を出し続けるしかないのだ。

 そんな事を思いつつ、微妙な雰囲気の膠着戦(サンチェスのノーヒットだが1失点とか)に、風穴をブチ開けたのが、前述の崖っぷち野郎・廣岡大志であった!

 そういえば4月頭のヤクルト戦でも一旦2軍落ちになった筈なのに、丸らのコロナ感染で即日1軍カムバックして代打で決勝3ベース! という、それが何かはわからないが、確かに何かは持っていそうな男、廣岡。

 皆「ロマン枠」などと半笑いで気軽に言うが、ロマンだけじゃメシは食えねぇし、そもそもベンチにも入れない。

 毎打席「生きるか死ぬかよみうりランドか」な覚悟で打席に立つ廣岡の気合いが、最後の一伸びの後押しをしたのかもしれない。

 ヒーローインタビューを聞きながら、3年くらい前にヤクルト狂の友達とした会話を思い出した。神宮でノビノビと5の5打たれたちょっと後だ。

「あのショートの子、マン振り気持ちいいねー!! 石井琢朗と宮本慎也にシゴかれて1軍で使い続けて貰ったらそのうちブンブン丸2世っしょ!! 山田との二遊間結構怖えわー。あ、そういや村上くんは2軍??」

 正直スマンかった! 当時、シン・ゴジラはまだ覚醒前だったのだ。

 三たび近藤唯之の言葉を引用させてもらうが、マジで「未来の事は誰にもわからない」。

 今じゃ琢朗も大志も巨人のユニフォームだし、俊太は横浜、田口もこの間はナイピーだった。そして遠くボストンではSAWAMURAが!!!

 辰徳の「くすぶってるヤツ補完計画」が、正しかったかどうか答え合わせするだけでも毎日の野球が面白くてたまらない。

 ちなみに「値千金」の語源を調べた所、中国の詩人・蘇軾の起句「春宵一刻値千金」という句に由来し、「春の夜はほんのひとときでも千金の価値がある」という意であるとの事。

 低調だった巨人打線に活を入れたかの様な、この夜の決勝ホームラン。

 その輝きが、ほんのひとときで終わるかどうかは、廣岡自身に懸かっている。

 新外国人にはワクワクするが、ケツに火つきっぱなしのヤング・ジャイアンツを見るのはもっと楽しみだ。

「奪っちまえよ、レギュラー!!!」

 毎度尚輝推しの俺だけど、そんなロマン溢れるフレーズをカマしたくなる、イイ春の夜の出来事。

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(伊賀 大介)

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