この寂しさはどこから…? “逃げ恥婚”で女性も「ガッキーロス」になった理由

この寂しさはどこから…?  “逃げ恥婚”で女性も「ガッキーロス」になった理由

新垣結衣さん ©?AFLO

「うぉっ」。この日ニュース速報を見て、思わず声を出してしまった方も多いだろう。5月19日。そう、新垣結衣さんと星野源さんが結婚を発表した、逃げ恥婚(発表)記念日である。

 コメント欄やツイッターを見ると「めでたい」という祝福とともに「俺のガッキーが!」「青春が終わった」という悲痛なガッキーロスのコメントが続々。それだけでなく仮想通貨相場が暴落し、常に冷静沈着な日本テレビの藤井貴彦アナウンサーが、興奮のあまり噛み……。スターの結婚とは、世の中にこんなに影響を与えるものなのだと感動した。

■“ガッキーロス”になった女性も多い

 私もその日の帰り、駅でサラリーマン2人組の「俺、明日から誰を支えに生きていこう……」という悲痛な会話を聞いた。

 わかる、わかるぞ。私もオバサンだが、祝福の気持ちと同時に、心の隅にふんわり寂しさが浮かんでいる。ちょっとしたガッキーロスなのである。

 改めてツイッターやコメントを追うと、女性でもガッキーロスという方はとても多い。もしかしたら星野源ロスより多い。「私のミューズが!」「星野源に取られた」「ガッキーはみんなのガッキー」など、熱い書き込みがズラリ。彼女の女性人気の高さは非常に興味深い。男性が高倉健に憧れるのと似ている……のか? ううむ、ちょっと違う気も。どちらにしても、郷ひろみの「お嫁サンバ」ではないが「ひとりのものにならないで」という気持ちになるスターである。

 私の彼女のイメージは「少女剣士」である。ガッチリした肩幅。すらりと伸びた手脚。きりりとした眉毛。爽やかかつ勢いのある高い声。ガッキーの水着写真集を見たいとはこれっぽっちも思わないが、袴姿の写真集が出たら迷わず買うだろう。ドロリとしたエロスを感じないし、濡れ場を見たくない女優さんナンバー1。「逃げるは恥だが役に立つ」はギリギリOKゾーンだった。

■挑戦と成長を繰り返すガッキー

 多分、彼女の出演作が、恋愛を主軸にしたものより成長ドラマのほうが多かったからだろう。私が「良い女優さんだなあ」と意識した最初の作品は、2007年の「パパとムスメの7日間」。パパ役の舘ひろしと心が入れ替わるドラマで、ガニマタでオッサン言葉を話すガッキーがとても微笑ましかった。

 その後も、「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」、「フレフレ少女」、「リーガル・ハイ」、「空飛ぶ広報室」、「ミックス。」など、挑戦と成長を繰り返す彼女は、スクスクと伸びるタケノコのようで本当に眩しかった。

 特に「リーガル・ハイ」! 古美門研介演じる堺雅人の長ゼリフに脅威を感じたが、同時に新垣結衣の愛嬌、ツッコミのタイミング、そして育ち盛りの子どものような独特の存在感に、大物ぶりを感じたものである。

■出演作の“ヒット率”が高い!

 万華鏡の如く豊かな表情を見せるタイプではないが、笑顔と苦悩する顔の破壊力がすごい。だからこそ「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」の白石恵役は、まさに当たり役。しかも戸田恵梨香演じる情熱家・緋山とのコンビは、キャラの対比が最高。おかげで今回、戸田の結婚からたった半年で、ガッキーも結婚を発表したことに妄想がさく裂してしまった。緋山が「アンタも結婚すんの? やだ真似しないでよ」とか言いつつ、ニヤニヤと白石の肩を叩く……。ああ、鮮明にイメージできる。萌える!

 ドラマファンの間で「ガッキーが猛烈にかわいい」と評価の高い2006年の「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」を、リアルタイムで見逃したのは悔やまれる。主演が長瀬智也、共演が手越祐也など、今となってはレアなキャストではないか。痛恨の極み!

 というふうに、ガッキーを思うだけで、もう一度見たい作品がガスガスと浮かぶ。心が走る! 結局Amazonプライムで彼女の出演作を片っ端から観てしまい、記事を書くのがこんな遅れたタイミングになってしまった。

 改めて「他にどんな作品に出ていたのだろう」と彼女の出演作をウィキペディアでチェックすると、意外なほど数は少ない。ヒットの確率の高さに驚いてしまった。

■「平匡さん」の浸透力はすごい……

 さて、星野源と交際するきっかけになったドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」。社会現象を起こすほどのブームとなったが、このドラマでは、女性でも星野演じる「平匡さん」に自分を重ねた人は多いのではないだろうか。とにかく「愛されることへの自信のなさ、恋愛に対するコンプレックス」を理想的な清潔さで体現したキャラクターだったと思う。

 みくりにどう接するのがベターか悩むシーンの生真面目さ。ハグをしたとき目をつむる顔の子犬感。誠実さを余すところなく表現できている黒縁メガネ。毎回、清潔さとセンスの良さを感じるオシャレシャツ。言葉の丁寧さ。筋の通った話の仕方。外見から仕草から、下心や嫌味を消臭剤で吸い取っているかの如く、無臭なイメージである。恋愛ドラマに全く興味のない80の母ですら「邪気が全く感じられない」と、平匡に夢中になった。若年層から老年層まで広く心に入り込む、平匡というキャラの浸透力のすごさ……。

 結婚のニュースを知ったとき、母は「ガッキーが平匡さんと結婚ってぴったりね」とご機嫌だったが、ガッキーと結婚するのは星野源である。「平匡」の浸透力が凄すぎて、ドラマと混同してしまっている。あくまで私のなかでだが、星野源は多才で器用なモテ男という印象がある。平匡というキャラクターの間には、ナイル川ほどの大きな差がある気がしてならない。いや、星野源と面識がなく、素を知らない私が、勝手に平匡とのギャップを想像するなど失礼な話だ。やめよう。そもそも、多才で器用に越したことはないじゃないか。

 アーティスト、俳優、文筆家としても大きな評価を得る星野源。彼の魅力の沼は、なかなか深いということだけは間違いない。

■歌手・新垣結衣の“たまらない魅力”

 星野源は「SUN」「うちで踊ろう」「恋」などヒット曲を連発。その太く柔らかな美声は言わずもがなだが、声の良さなら、新垣結衣も素晴らしい。「逃げ恥」第5話「ハグの日、始めました!」のワンシーンで、星野源に抱きつく前の「ヤー」という掛け声はビックリした、かわい過ぎて! あの声で来られて「結構です」と拒否できる人などおろうか。断言する。いない!

 歌手としてもシングル4枚、アルバム3枚を発表している彼女。声と表現力が温かく、可憐な野の花のよう。総合歌唱力という点では評価は分かれるが、ウィスパーボイスが好きな人にはたまらない声だ。私も菊池桃子、伊藤つかさ、原田知世と合わせてプレイリストを作り、心が落ち着かない夜、聴いている。寝る前に彼女の「heavenly days」「小さな恋のうた」を聴くと、心のギザギザが丸くなり、明日は全人類にやさしくなろうと思う。耳がこそばくて切なくてたまらない!

 ガッキーロスが重症の方は、今聴くと破壊力が凄すぎるかもしれない。ということで、心に余裕のある人に限り、彼女の大きな恋と幸せを願いつつ、澄んだ歌声に浸ろう。当然ながらイヤホン推奨だ。

■まだまだガッキーを見ていたい

 さて、私の場合は薄めではあるが、ガッキーロスはもうしばらく続きそうだ。「ロス」という言葉は、心に空いた穴をたった2文字で共有できる、とても便利な言葉だ。今までの大好きが溢れ、寂しさと混ざってたまらなくなり書いてしまう2文字。「ロス」の先にあるのは、やっぱり期待なのである。

 2022年からは、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に、主人公・北条義時(小栗旬)の初恋の人、八重役で出演が決まっている新垣結衣。とても楽しみだが、大河出演をもって引退、もしくは芸能界から距離を置くのでは……という噂も飛び交っている。頼むから女優をやめないでほしい、と切に願う。本格的なロスはまだまだ先にしてほしい。

(田中 稲)

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