恋はDeepに、ネメシス、大豆田とわ子…「1クールを章分けするドラマ」が急増しているワケ

恋はDeepに、ネメシス、大豆田とわ子…「1クールを章分けするドラマ」が急増しているワケ

「恋はDeepに」で主演を務める石原さとみと綾野剛 ©AFLO/getty

 今期(4月〜6月)の連続ドラマもいよいよ終盤に差し掛かっている。最近は、このくらいのタイミングになると「いよいよ最終章」という煽りを目にすることが増えてきた。「最終章」の次によく見かけるのは「第一章完結、次週、第二章開始」というものである。

 今期の最終章煽りは、石原さとみと綾野剛のラブコメ「恋はDeepに」(日本テレビ系)が第8話の放送前に「人魚と人間の恋 最終章へ…」と謳い、櫻井翔と広瀬すずの探偵もの「ネメシス」(日本テレビ系)は第7話から「物語の最終章の幕開け」としている(いずれも公式ツイッターより)。

 宣伝上の煽りに留まらず、物語自体を明確に第一章、第二章に分けたドラマは坂元裕二脚本の「大豆田とわ子と三人の元夫」(フジテレビ系)で、第6話まで「第一章」、第7話から「第二章」と銘打っている。

■最終章突入で視聴率が上がった「恋はDeepに」

「第一章完結!」「衝撃の第二部へ!」「新章開幕!」「いよいよ最終章!」……と連ドラをいくつかの章に分ける理由は話題性と見やすさである。「第一章完結」や「いよいよ最終章」と言われると「はてさてどんなものだろう?」と、たとえ続けて見てなくてもなんだか気になるものである。

 実際「恋はDeepに」の第8話は下がりかけていた視聴率が上がり、持ち直して最終回の弾みになった。石原さとみ演じる主人公が人間ではなく人魚だったという驚きの展開が示唆され、人魚姿の石原さとみが見られると思って視聴した人もいたのではないだろうか。「ネメシス」は別の話がはじまったかのようにムードが変わり、広瀬すず演じるヒロインの大きな秘密がクローズアップされている。

 日テレが連ドラを章で区切るのは、映画化も準備中の秋元康企画によるミステリー「あなたの番です」(日本テレビ系 19年)の成功体験も大きいと考えられる。田中圭と原田知世が夫婦役、W主演と銘打たれたものの序盤の注目度はさほどでもなかった。

 それが中盤、主役のひとりである妻(原田知世)が亡くなり、あまりに意外な展開のまま第二章「あなたの番です―反撃編―」に突入。一気に話題の的になり、第二章の視聴率はぐんぐん上がっていったのだ(ただし、これは3ヶ月+3ヶ月の半年間の放送であった)。

 局は違うが、「大豆田とわ子」も第一章と第二章の間に、ひとりの主要人物(市川実日子)が亡くなって視聴者をざわつかせた。そして松たか子をはじめとする主要登場人物を取り囲む脇のキャラクターが入れ替わり、新たな物語が進行しはじめた。なんなら第二章から見てもついていけなくはない。

■“早送り視聴”の増加と背景は同じ?

 コロナ禍でリモートワークが定着したとはいえ、連ドラを10週間ほど毎週続けて見るのもなかなか骨が折れるものである。1回見そびれたら配信か録画で追っかければいいにしても、気づけば2話、3話と未見のものが溜まっていく。そうなるともう見るのがなんだか億劫だ。ネットであらすじやら感想などを見て、最低限の知識を頭に入れておくだけで済ましてしまいそうになる。

 昨今は録画や配信を早送りで見ている人も増えているようだ。みんな時間に追われているのである。その点、第一章、第二章と分かれていると、あとでまとめて見るにしても5話分で済む。10話の半分になるととても気が楽である。

 1年間や半年間の連ドラがあった時代は今や遥か昔。NHKの朝ドラと大河ドラマだけが特別な存在だが、これらも近年、世帯視聴率が下がってきているのは話が長いことも理由のひとつではないだろうか。世帯視聴率だけが人気の指標ではないとはいえ、視聴率が公表される以上、低いより高いほうがいい。少しでもキープしたいし、上がればなおいいというのが制作者側の本音だろう。

■「章分け=テコ入れ」とも限らないが……

 朝ドラや大河ドラマの場合、長丁場なので、地元編、上京編――たとえば現在放送中の朝ドラ「おかえりモネ」なら宮城編、東京編があり、大河ドラマ「青天を衝け」だと「血洗島編」「京都編」とあらかじめ分けて、事前に出演者の発表などをしている。

 一方、民放の連ドラの場合、第1話から見ていると、ある時、突然「第一章完、次回第二章」「いよいよ最終章」と予告で謳われる。全10話ほどのドラマのどこまでが序章で、全部で何章なのか、視聴者は知らされていない。小説だったら、目次に第一章、第二章などと書いてあるが、ドラマの場合、そういうのはない。ちなみに、最近の傾向では、最終章は「最終回とその前の回」の2話分ということが多い。

「あなたの番です」は第一章のあと第二章がはじまるサプライズ込みの企画だったようで、それがSNS受けした成功例だが、中にはテコ入れじゃないかと穿った見方をしてしまう作品もある。

■「半沢直樹」「下町ロケット」の成功体験

 逆に民放ドラマであらかじめ第一部、第二部に分けると発表していたのは、日曜劇場「半沢直樹」の第1シリーズ(13年)である。公式サイトで “ドラマは、第一作目「オレたちバブル入行組」をベースにした物語を〈第一部〉、第二作目「オレたち花のバブル組」をベースにした物語を〈第二部〉とし、前後半の二部構成でお送りします。”と明記するなど、原作の2作をまとめて放送することを決めていた。結果的に「半沢直樹」は高視聴率で大ヒット作となった。

 はたしてこの二部構成が成功要因だったのだろうか。それはわからない。ただ、第2シリーズ(2020年)も第一部「ロスジェネの逆襲」、第二部「銀翼のイカロス」とふたつの原作エピソードで構成された。同じく池井戸原作「下町ロケット」(15年)も第一部「下町ロケット ゴースト」編と第二部「下町ロケット ヤタガラス」編と二部構成だった。

「下町〜」は「半沢〜」と比べると出足は落ち着いていたが、第一部の最終回は視聴率が20%を超え、第二部への勢いがついた。最終回だけは見る人がいるものなので、中だるみしそうな中盤を(第一部の)最終回にすることはいい作戦といえるだろう。また、スポーツでもタイムをとると試合の流れが変わることはよくあり、章を変えて一旦リセットし、リスタートを図ることは悪いことではない。

 とりわけ原作ものの場合、1エピソードを無理に10回に引き伸ばそうとしてオリジナルエピソードなどを加えると失敗しかねない。潔く、原作ファンにも寄り添うことは大事である。『半沢直樹』などでは1クールに2作品見られるお得感と同時にちょっと物足りなさもあったという声もあるが、ライトユーザーにはこれくらいが程よいのであろう。

■坂元裕二作品の狙いは?

 坂元裕二ドラマに関しては、この章立て作戦は謎である。ヘヴィユーザーが多いので、話題性や見やすさを求めず、独自の道を歩んでもいいのではないか。ところが「カルテット」(TBS系 17年)も第6話から「第二章開幕!!夫の告白、妻の涙…迎える衝撃の結末」としていた。やはりプライムタイムのテレビドラマである以上、少しでも視聴率をキープしたいという姿勢も見せる必要があるのかもしれない。

■「1話完結」から「サザエさん」方式へ

 最近の視聴者は1話完結ものを好むと言われている。だから1話完結のミステリーや医療ものが好まれ、続けて見ないと結末がわからないものは敬遠されると考えられている。

 できるだけ早めに答えを知りたい。わざわざ最終回でがっかりして見た時間を損したくない。それももっともである。近年は1話完結どころでなく、1時間で2本立ての「サザエさん」方式(サザエさんは3本立てだが)も作られはじめた(「俺の話は長い」(日本テレビ系 19年)や「珈琲いかがでしょう」(テレビ東京 21年 一部2本立て)など)。

 1時間1話で完結させることは難しくとも、5話くらいの長さで一旦話を完結させられれば、視聴者にとっても見やすいドラマになる。朝ドラですら、15分×1話や、15分×2話分の短編からなる特別編を本編の途中に挿入する試みを行っているくらいである(「エール」では1週間の放送で3本の短編が放送された)。

■制作者側にもこんなメリットが

 また、連ドラは、前半の視聴者の反応を見ながら内容に手を加えていくこともあって、例えば、主人公が最終的に誰と結ばれるか、あるいは、恋人と別れるか結ばれるか決めていなかったり、犯人が誰か決めていなかったり(これが連ドラの驚くべきところ)、早くに亡くなる予定だった役を、視聴者の反響で長生きさせるなどして盛り上げていくことがある。だが、そうして展開が定まらないまま進んでいくよりも、エピソード(章)を替えることでリスタートしたほうがキャストもスタッフも心身共に楽であろう。

 主演は別として、その他の出演者も長いこと拘束しないで済む利点もある。つまり、短い作品のほうが見る側にも作る側にもリスクの軽減ができるのである。

 ただし、短ければ簡単に作ることができるかといえばそういうわけではない。短編には短編の技が必要だ。ぜひとも短編から才能ある作家が育っていってほしいと願う。

(木俣 冬)

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