長澤まさみ34歳が明かしていた「10年仕事を続けて疲れた20代」、東出昌大とは「男女の関係に踏み込めない」

長澤まさみ34歳が明かしていた「10年仕事を続けて疲れた20代」、東出昌大とは「男女の関係に踏み込めない」

長澤まさみ ©getty

 6月3日に34歳の誕生日を迎えた、俳優の長澤まさみ。現在、出世作であり16年ぶりの続編『ドラゴン桜』に出演中、7月にはヒロインを務めた中国の大ヒット・シリーズ『唐人街探案』の第3弾『唐人街探偵 東京MISSION』が公開予定、さらに庵野秀明が企画・脚本を手掛ける『シン・ウルトラマン』(公開日未定)、木村拓哉と共演した『マスカレード・ホテル』(19)の続編『マスカレード・ナイト』(21)、来年にはシリーズ第3弾『コンフィデンスマンJP 英雄編』も控える。

 今年でデビュー20周年、第一線を走り続けてきた長澤にも仕事へのモチベーションが落ちていた時期があったという。清楚で可憐なヒロインからコメディエンヌへ、座長として活躍する現在に至るなかで、いかにして彼女は“壁”を打ち破ってきたのだろうか。

■デビューのきっかけは、小6の「東宝シンデレラ」

 デビューのきっかけは、小6の時に幼馴染みの母親と自身の母に強く勧められた「東宝シンデレラ」の第5回オーディション。ピンとこないままに受けてみるが、見事グランプリに輝く。

『クロスファイア』(00)の超能力少女役でデビューし、『なごり雪』(02)、『阿修羅のごとく』(03)、『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(03)などでの助演が続くなか、『ロボコン』(03)で初主演を果たす。演じたのは、やりたいことが見出せない高専生徒の葉沢里美。まだ演技というものが把握できなかった長澤だが、古厩智之監督から「犬になれ」「つくった演技をするな」と指導され、「セリフがあまりないので、その分、表情とか動作に比重があって。私、もともと体が動かないんです。だから犬のように喜怒哀楽を」と、感情を身体で表現する自然体の演技を意識したという(※1)(※2)。

 翌2004年。『世界の中心で、愛をさけぶ』で、白血病に冒されるヒロインの広瀬亜紀に扮する。行定勲監督から「素の自分」じゃなくて、「他人」になってくれと言われた彼女は、自然体の演技を意識した『ロボコン』とは真逆の“演じる”ことに重きを置く。そして自分なりに亜紀というキャラクターの行動や思考を考え、自身と同期させていくうちに「朝から晩まで、『亜紀ならこんな時どう思うんだろう』って、役のことばっかり考えていたら、だんだんほんとに亜紀になっていって。あの、自分が消えていく感じは新鮮でしたね」と、もうひとつの演技の境地に至ったことを語っている(※1)。

■興収85億円の大ヒット『世界の中心で、愛をさけぶ』

 演技に対するふたつのアプローチを体得し、『世界の中心で、愛をさけぶ』も興行収入85億円の大ヒットに。ブレイクを果たした彼女は、新進女優のひとりから若手女優の急先鋒となる。

 あだち充の代表作を実写映画化した『タッチ』(05)と『ラフ ROUGH』(06)。妻夫木聡の妹役で共演した『涙そうそう』(06)。阿部寛、長谷川京子、山下智久、小池徹平、新垣結衣、サエコ(現・紗栄子)、中尾明慶という今となっては錚々たる顔触れと共演した『ドラゴン桜』(05)と、映画、ドラマの双方でヒット作、話題作を連発する。

■21、22歳の頃「10年仕事を続け、少し疲れていたのだと思います」

 しかし、20歳を過ぎた頃に俳優業を続けるモチベーションが揺らぎ出したようだ。「実は21、22歳の頃、ちょっと仕事へのモチベーションが落ちていた時期がありました。10年仕事を続け、少し疲れていたのだと思います。(中略)私はもう十分頑張ってきたつもりなのに、まだやらなきゃいけないのか、という気分に」と当時を振り返っている(※3)。

 その背景には東宝シンデレラという女優の出自があったのかもしれない。恋人のDVに苦しむ女性を演じた意欲作『ラスト・フレンズ』(08)もあったが、どこか東宝シンデレラ特有の可憐や清楚といった印象がつきまとっていたし、こちらも感じてはいた。あくまで憶測だが、そういった固定された印象が壁になっていたのではないか。

 だが、それらを間違いなく打ち破ったのが『モテキ』(11)だろう。演じたのは、自意識過剰な草食男子・藤本幸世の前に現れる雑誌編集者の松尾みゆき。明朗活発でサバサバしているが、恋人がいる身にも関わらず幸世に気のある素振りを見せて振り回しまくる。

 自分の部屋で酔いつぶれてしまったみゆきが目を覚ましたのに気づき、コップに水を汲んで差し出す幸世。ゴクリと飲んだ後、みゆきは「飲む?」と口に水を含んで口移しで幸世に飲ませる。このキス・シーンを観た時には、従来のイメージが崩れる大きな音がどこかから聞こえてきた。また、飲みの席から離脱する際の彼女が、ニンニン・ポーズで「私、ここでドロンします」と挨拶した後に投げたエア手裏剣は、観た者の胸に刺さって抜けなくなったままのはずだ。そして、なによりもショート・カットである。長澤自身の内面にある葛藤も断ち切ったように見えて仕方なかった。

■『曲がれ!スプーン』と『クレイジーハニー』で得た“気づき”

『モテキ』と共に、この時期の重要作に挙げたいのが『曲がれ!スプーン』(09)と本谷有希子の作・演出による舞台『クレイジーハニー』(11)だ。

 前者は劇団ヨーロッパ企画の戯曲の映画化で、共演者に小劇団の俳優が揃ったこともあってエチュード(即興芝居)を現場で実践。臨機応変に台詞を投げて投げられるエチュードが、共演者との距離を縮めると共に作品を良いものにしようとする固い結束力を生んだそうだ(※4)。

 後者では、体を動かしながら台詞を身につけていく感覚が新鮮で、「映画やドラマだと言い終えた台詞はすぐに遠いものになってしまいますが、舞台の台詞は自分の中に言葉がちゃんと息づいていくように思え」たという(※5)。

■座長としても采配を振るった『コンフィデンスマンJP』

 その“気づき”が昇華したのが、『コンフィデンスマンJP』シリーズ(19〜20)だ。演じるのは、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)、五十嵐(小手伸也)を率いて信用詐欺を繰り返すダー子。同シリーズで圧倒され、笑わされるのが、コミカルでスピーディーな台詞回しと、東出、小日向との演技とも本気ともつかないやり取り。これは、この3人組の結束力と化学反応が生んだものと語る。

「百戦錬磨の方だからと言って、小日向さんが私たちに力を抜いた芝居をするようなことは一度もなくて。だからいい化学反応が生まれたのかな、と。(中略)東出(昌大)君は優しくて穏やかで、実年齢より若く見られますが、普段はとても賢くて大人な人で、素朴さも持ち合わせているので、“ボクちゃん”という、みんなにイジられ、うだつが上がらない男みたいな雰囲気やキャラクターにもぴったりハマっていて(笑)」(※6)

 ダー子は詐欺師グループのリーダーだが、実際に長澤が現場で座長としても采配を振るっていたそうで、それが作品にも良い意味で反映されていたのではないか。その気配を如実に感じたのが、昨年7月、急逝した三浦春馬さんも出演していた『コンフィデンスマンJP プリンセス編』公開初日のこと。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2カ月半あまり公開が延期され、リモートでの舞台挨拶で長澤は、「愛すべきコンフィデンスマンたちが、みんなそれぞれ、映画の中で頑張ってます。その姿をたくさんの人に観ていただきたいなという風に思います」と語った。

 同日朝からはフジテレビの情報番組へ立て続けに出演。「めざましテレビ」で軽部真一アナウンサーから三浦さんについて訊かれた長澤は、「愛敬があって人懐っこくて、とても正義感の強い子だったんじゃないかなと思います。私も弟のように思っていたところがあったので、とても残念ですが、コンフィデンスマンの映画に映っている春馬くんはとてもキラキラと輝いておりますので、その姿をみんなの目に焼き付けてほしいなという気持ちです」と気丈に話していたことが深い印象を残した。

■「人物像をつかめないまま演じたのは、実は初めての経験です」

 ダー子熱にやられた連中を急速冷凍させたのが、育児放棄するシングルマザーの三隅秋子を演じた『MOTHER マザー』(20)。観ていて嫌悪感しか抱けない役柄は、ショッキングであると同時にまた新たなフェーズに進んだのだと思い知らされた。長澤自身も秋子の行動がどうにも理解できず、キャラクターではなく物語に寄り添うことに。感情のままに生きていると落ちるとこまで落ちることを物語が訴えていると解釈し、場面ごとに秋子の感情を探ったという。「人物像をつかめないまま演じたのは、実は初めての経験です」(※7)と語っているが、そこから新たな演技のアプローチを掴んだのではないだろうか。

 ダー子と秋子。この振り幅の凄まじさに呆気にとられたが、本人も「どんどん、どう見られているかわからなくなっていて(笑)」(※8)と、ここ数年の目まぐるしい変貌に戸惑っているようだ。

■「お互い男女の関係に踏み込めないというのも一つの愛」

 今春、『コンフィデンスマンJP 英雄編』の撮影が行われていたというが、かつて東出演じるボクちゃんとダー子の関係性について「ボクちゃんの思いにダー子が応えることは、これからの未来、あるのでしょうか?」と問われると、

「いや、ないでしょう(笑)。恋愛感情もないんじゃないかな。スタッフさんの中には“あるんじゃない?”という人もいますが、私はないと思います。だって今さら恥ずかしくないですか!? 散々好き勝手やっておいて、今さら実は好きだなんて、嘘っぽくて白々しい。(中略)お互い男女の関係に踏み込めないというのも一つの愛であり、その象徴という感じがします」(※6)と話していた長澤。

『ドラゴン桜』は今期放送中のドラマでも高視聴率をキープ、今年8月には長澤のデビュー20周年を記念した写真集の発売も決定している。なにかの型にはまる前に、その型を壊して次へと進む、そうした彼女の俳優道に今後も驚き、唸りたい。

※1 『Quick Japan』Vol.67(2006年8月)
※2 『ピクトアップ』2003年10月号
※3 『婦人公論』2012年7月22日号
※4 『Amebaスペシャルインタビュー Blog by Ameba』FILE19
※5 『週刊文春』2011年7月14日号
※6 『テレビブロス』2019年7月号
※7 『婦人公論』2020年7月14日号
※8 『ピクトアップ』2019年6月号

(平田 裕介/文藝春秋 digital)

関連記事(外部サイト)