“黒人のルックス”、“東南アジア出身者の韓国語”をジョークに… 韓国グループの「人種意識」を変えたBTSのファンの“底力”

“黒人のルックス”、“東南アジア出身者の韓国語”をジョークに… 韓国グループの「人種意識」を変えたBTSのファンの“底力”

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「BTS関連のハッシュタグは1年で1億超え」 BTSのファン「ARMY」のPR能力はなぜ?別格”なのか から続く

 2021年5月21日に公開された新曲「Butter」のMVは、4日間でYouTubeの再生回数が2億回を突破。2020年にリリースされた「Dynamite」は、ビルボードシングルチャート「ホット100」で1位を3度獲得。また、国連総会で演説を行ったり、『TIME』誌の表紙を飾るなど、BTSの偉業は数えきれない。

 このようなBTSの快進撃を支えてきたのはA.R.M.Y(アーミー、 Adorable Representative M. C for Youth、 以下 ARMY) と呼ばれる彼らのファンたちだ。BTSの音楽に込められたメッセージを熱心に拡散する「ARMY」とはどのような共同体なのだろうか。社会学者のイ・ジヘン氏が執筆した『 BTSとARMY わたしたちは連帯する 』(イースト・プレス)より、一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目。 1回目 を読む)

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■K-POPシーンの人種差別

 K-POP全般に存在する深刻な人種差別は、海外ファンの間でよく知られている事実だ。黒人のルックスや韓国で働く東南アジア出身の労働者の話し方が「コメディのモチーフ」となってきたことを見ても、韓国社会が文化の多様性にいかに鈍感であるか分かるだろう。

 このような社会の雰囲気は、K-POPシーンにもそのまま表れている。「ブレードヘア」のように、黒人の外見的な特性のみを真似する傾向が幅を利かせ、抑圧された環境に声を上げるヒップホップ精神は、韓国では高価な時計や車、女性をひけらかすことに変容してしまった。黒人英語を芸のネタにしてテレビで見せるアイドルも多い。マイノリティ・カルチャーの特性を社会的・文化的な意味を理解しないまま利用するK-POPシーンを、海外のファンは非難する。時にはひどい発言をすることもある。とあるK-POPグループのメンバーがファンを対象にしたライブ配信で、黒いリップクリームを塗ったメンバーを見て「クンタ・キンテみたい」(注1)と笑ったシーンは、海外ファンの怒りを誘った。アフリカ人の奴隷の歴史について理解が足らず、思慮に欠ける行動だった。

 初期のBTSも同じようなところがあった。RMがメディアで黒人英語が「個人技」だといったり、ヒップホップアイドルを標榜するグループらしく黒人風のスタイルで差別化を図ろうとしたりしていたのだ。『Amino』や『Reddit』のような海外のファンコミュニティでは、BTSを含むK-POPシーンの人種差別が繰り返し議論されていた。そんななか、BTSはこのような批判に耳を傾け、同じ過ちを繰り返さないように努めた。黒人を卑下する「Nワード」と似たような発音の韓国語の歌詞を、似たような発音の別の単語に修正したのが、代表的な例だ。おそらく、ファンダムがグローバル化するなかで、ファンダムの文化的多様性をどのように見つめ尊重すべきか、BTSや所属事務所で話し合ったのだろう。

■ファンダム内の人種主義

 しかし、BTSのファンダム内部では、黒人ファンへの人種差別的な態度をめぐり、激しいやりとりが続いていた。それが表面化したのは、黒人ARMYたちが声を上げたことがきっかけだ。黒人ファンは、「匿名でメッセージをやりとりするSNS『Curious Cat』のような場で、黒人ARMYにたいする差別的発言があった」とし、その内容を暴露した。ところが、これにたいするファンダムの反応は、黒人ARMYの怒りをさらに煽った。「差別発言が外部に知られると、BTSにたいする印象が悪くなる恐れがあるため、公にしないでほしい」と要求したのだ。歴史的に差別と抑圧を経験してきた黒人コミュニティに、差別について語らないよう求めるのは、おかしなことだ。そのうえ、一部の韓国ARMYも人種差別的なメッセージを黒人ARMYに送り、事態は悪化した。韓国ARMYは、BTSのメンバーに悪いジョークともとれるコメントを送る黒人ARMYを不快に思う一方で、黒人ARMYは、韓国のホムマ(注2)がBTSメンバーの写真を白い肌に修正する(注3)ことに不満を募らせていた。感情の溝が深まるなか、一部の韓国ARMYから「『BTSは黒人が嫌いだ』『ファンダムから出ていってほしい』とNワードが入った文章で叩かれた」と、黒人ARMYが相次いで証言した。ついに、このファンダム内での衝突は、ある外国メディアで報道され、注目を浴びることになった。

 韓国人の大部分は多様性の幅があまり広くない社会で暮らしてきたため、他の国に比べると人種にたいする敏感さに欠けるのは事実だ。黒人のルックスの真似や、東南アジアの労働者の韓国語をジョークのネタに使うのが失礼である理由が、公の場で語られるようになったのも比較的最近のことだ。多様性に欠ける空気のなかで育った韓国ARMYの態度がこれまで問題視されなかったのは、BTSもまた韓国人だからだろう。韓国のグループを愛する他国のファンが、アーティストと同じ国のファンを非難するのは、心の重荷になったのかもしれない。アーティストの母国のファンの文化的な感性を責めるのは、アーティスト自身のルーツを批判しているようにも映る懸念も多少あったはずだ。いずれにせよ、人種差別にたいする黒人ARMYの告発は、これまで伏せてきたいろいろなことが一気に噴き出すきっかけとなった。

■対話を始める力こそ、ARMYの底力

 人種差別をめぐり異なる立場のファンが批判合戦を繰り広げる様子を、わたしは重い気持ちで見守っていた。世界各地に広がる、多彩な人がいるファンダム、ARMY。これは、BTSの活動が世界に広がり、ファンダムの構成にも影響を及ぼした結果だ。しかし、文化が衝突するたびに、それぞれの批判を並べ立てていたら、ファンダムはひとつになれない。そんななか、わたしは一筋の希望を見出した。ARMYたちは人種問題に背を向けず、双方の立場に対等に耳を傾けるために対話と議論を始めたのだ。

 彼/彼女たちの誠実な姿勢は、議論の成否はともかく、ファンダムの未来に大きな可能性をしめした。対話の内容は印象深く、わたしは、ARMYはすぐに完璧にはなれなくとも、正しい方向性とともに前進するグループだと感じた。差別と攻撃がまん延するこの世界で、互いの考えを理解し、誤解を減らすために対話を始める力こそ、ARMYというファンダムの底力だと思った。

*1(訳注) 奴隷として売られアメリカにやってきた黒人を描くアメリカの小説『ルーツ』の主人公。テレビドラマも制作されている。

*2(原注)「ホームマスター」の略で、アーティストの日常を追いかけ、クオリティの高い写真を撮ったり編集 したりするファンを指す。?人気の高いアイドルほどホムマが多く、ホムマ自身が有名人になることも多い。

*3(原注) 黒人ARMYは、これを「ホワイトウォッシング(whitewashing)」と表現する。本来は、ホワイトウォッシングとは映像作品でアジア系の役を白人俳優に任せたり、白人俳優だけをキャスティングしたりする、白人中心主義な配役を指す言葉だ。 韓国をはじめとするアジア諸国が白い肌を理想とするのは、「白人に対する憧れ」の影響もあるが、歴史的に美の基準は文化圏の格差構造と密接な関係を持つ。過去に豊満な体つきが理想とされたのは、一般の人が栄養を十分に摂るのが難しかったためであり、近年スリムなスタイルが好まれるのは、身体に投資してボディメイクをする余裕を表しているためだ。同じように、欧米で日焼けした小麦色の肌が人気なのは、日差しの下で休暇を楽しむ余裕があることをしめす。一方、アジア圏では肉体労働をイメージさせない白い肌を好む傾向があり、欧米とは逆である。

(イ・ジヘン,桑畑 優香)

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