「自分でも不思議なくらい嘘が嫌い」…“生きにくい”人間・光浦靖子(50)が芸能界で見つけた「居場所」

「自分でも不思議なくらい嘘が嫌い」…“生きにくい”人間・光浦靖子(50)が芸能界で見つけた「居場所」

光浦靖子さん

「私ら世代が20年。もういい加減消えて、ですよね」光浦靖子(50)が考える“好感度が急に上がった理由” から続く

「思っていたことをしゃべっていただけ」。光浦靖子のネガティブな思考とその表現力は、『めちゃイケ』という明るすぎる番組にクッキリとした影を与え、気づけば女性芸人のトップランカーになっていた。そして今、『めちゃイケ』が作り上げた「芸人・光浦靖子」を光浦靖子自身がゆるやかに解いていく。「2個目の職業」と「自由」を求めて、50歳の向かう先は。(全3回の第2回/ 第1回 から読む)

◆ ◆ ◆

■テレビと視聴者の“共犯関係”があった ?

――7年ぐらい前なんですが『Quick Japan』(太田出版)という雑誌で『めちゃイケ』特集号がありまして……あの時、私が担当したインタビュー記事に間違いがあって、編集部でめちゃイケメンバーに謝罪に行くというのが番組企画になったんです。

光浦 ああ、ありました。おぼえてます。シンディ(武田真治)のインタビューの最後が切れちゃって怒ってたやつ。

――私たちは「謝罪してるんだけど、なんかちょいちょい失礼」という立ち位置で、そこをメンバーにツッコんでもらっていたのですが、それがすごく難しくて。迷っていた時に、カメラに映らないところで光浦さんたちが「こうやって」って、助け舟を出してくれたんです。

光浦 あれも今の時代だったら、大変だったでしょうね。その人本人とコントの違いが分からない人が増えちゃったから、クレームだらけだったんじゃないかな。あの時代はまだコントはコントって、どれだけ失礼なことを言っても「絶対台本あるでしょ」って観ている人も分かってくれたけど、今はそれが難しくなっちゃった。

――確かに当時はまだテレビと視聴者の“共犯関係”みたいなものがありましたね。

光浦 そう。だからやりづらくなったよね。リアルコントっていうの、もうできなくなっちゃったんですよね。

――光浦さんは『めちゃイケ』でそれをずっとやられていた。ドキュメンタリー担当部門として。

光浦 今思うと倍のお金をもらってもよかったかな。だいぶお金いただいたと思うけど、やっぱりもう倍もらっても全然よかったよなって。人生を振り返るとね(笑)。

■「芸人」という肩書きではない ?

――先日、爆笑問題さんにインタビューする機会がありまして、その時に太田(光)さんがふと「この間、光浦がラジオのゲストに来て」と。「あんなに面白いのに、『めちゃイケ』っていうすごい番組もやってたのに、なんであいつはあんなに自信がないんだ」みたいなお話をされたんです。『50歳になりまして』には、そういう光浦さんがたくさん出てきて、そこに光浦さん自身が一個一個ツッコミを入れている。

光浦 そうね。爆笑さんがそう言ってくれたのは、本当にうれしかったんですよ。でも、『めちゃイケ』はナイナイの番組であって、スタッフもすごい人たちが動いて作った番組であって、私はそこの一構成員なんですよ。爆笑さんみたいに自分の番組を持ったことなんて一度もないからさ。

――その時の『Quick Japan』のインタビューをあらためて読むと、光浦さんは「自分はこの番組にそんなに役に立ってない」みたいなことを話されていました。

光浦 私も思うんだけど、私のことを「芸人」というカテゴリーに入れるから、面白いだ面白くないだって言われちゃって。もう一個別の名前の職業が、私にフィットする職業の名前があったら、たぶん私はもっと堂々と生きていたのかなと思います。

――『50歳になりまして』の中でも「自分は芸人という肩書きではない」と書かれていますよね。芸人という肩書きに違和感はありますか?

光浦 舞台でスタンドマイク一丁で「さあ、笑いを取ってください」と言われたらできないから、やっぱりその職業ではないんだろうなって思う。「おしゃべり」っていう職業があればね(笑)。そうすればフィットしてたのかな。

――肩書き「おしゃべり」。

光浦 私の肩書きが「おしゃべり」だったらもっと自由に生きていたかなぁ。

■人生2個目の職業に向けて「よし、今だ」

――留学を決めたのはその「自由」への第一歩ということでしょうか。先日伊集院(光)さんのラジオで光浦さんが「願望地縛霊」のお話をされていて、あの時ああしていれば……という願望に縛られ続けるのが嫌で、だったら今からそれを叶えていこうと。確かに自分もそういう言い訳たくさんしながら生きてるなって思いました。

光浦 そうね……。あとは、私は職業も特殊だし、ちょっと他の人と違うしね。結婚してないし、子どもも居ないというのは、私の世代だとすごいマイノリティになると思うんですよ。だから、みんなが同じようにできるかどうかは分からない。ただ私は、再就職先じゃないけど……人生、2個目の職業って絶対あると思うんです。

――2個目の職業。

光浦 女性なんか特にね。子どもを産んで子育てして、もう一回復職する人も多い。そこからは死ぬまでやる、そういう2個目の職業って、ザックリするとあるじゃないですか。私は1回目の就職はうまいことヒョロッと行けちゃったんです。何の努力もせずに。だから、今は2個目の職業に向けて、ボチボチね、人生初の就職活動のためのお勉強をしようかなって。

――自らの意思で職業を選ぶということですね。

光浦 そうそう。自分の体力とキャラクターを分かったうえで。

――考えてみたら、私も20歳前後で自分のことなど全然わからないまま、何となく最初の仕事に就いた気がします。

光浦 そうですよね。あと、今度は家庭ができちゃうと「私、実はラーメン屋やりたかったの」って言っても「お母さん何言ってるの?」ってなっちゃうでしょ。やっぱり家族がいると大変だけど、私は自分1人だから。くたばっちまうのも自分1人だし、そこは強いですよね。コツコツ貯めてきた貯金もあるし。

「よし、今だ」って思ったんですよ。いろんなことから「よーし、自由になるぞ」っていう。

――1個目の職業が苛烈だったからこそ、自由に価値がありそうです。

光浦 最近自宅を整理してたら昔の給料明細とか出てきて「あ、こんなにもらってたんだ」と思いつつも、「でも、命削ったわけだからな。もうちょっともらってもよかった」とも思ってます(笑)。命の代償だからなと思って。

――『めちゃイケ』は人生を賭ける番組だったんですね。

光浦 そう。これは私の命の値段かと思って。

――(制作統括の)片岡飛鳥さん自身がそういうふうにやってらっしゃったから。

光浦 でも、どの番組よりお世話になったし、生かしてくれたしね。

■腹が立ったときは4回くらい同じトークを?

――今回、本を書いたことで、光浦さんの中でどんな変化がありましたか?

光浦 デトックスじゃないけど、次のステップに行けるなと思いました。行こう行こうとはしてたけど、言葉にして、あと、こうやってインタビューを受けてしゃべっているうちに、自分の考えがまとまっていくというか。言葉って面白いね。言っていくとそういうふうになっていくのか、自分がコントロールされていくのか。何でしょうね。

――書いていて「あ、私はそんなこと考えてたんだ」と気づくことも多いですか?

光浦 そう、そうやって自分で自分をだましていくのかもね(笑)。あと、感情がいい意味で乗らなくなるのかもしれない。腹が立ったことも、4回ぐらい同じトークをしていると、もう腹が立たなくなるじゃないですか。私はそれをよくやるんです。腹立った時は、同じトークを、お友達から何から3回ぐらい言うんです。そうすると忘れられる。

――段々とトークが磨かれていく……。

光浦 そうそう。ブラッシュアップされてね。小さく上手にまとめられるし。感情が収まっていくから、より冷静になっていく。文章も最初は怒りで書いていると、便秘気味なグチャグチャな感じになるけど、それをお通じよく整えていくうちに、私も落ち着く。

 たぶんセラピーみたいなものじゃないですか。自問自答セラピーじゃないけど、1人2役3役でね。めんどくさいので、普段私は日記とか書かないから、こういうエッセイが何年か分の日記だと思ってます。

――書いていて、恥ずかしい気持ちはなかったですか? この部分は見せたくないな、隠しておきたいな、という。

光浦 あんまりなかったかな。もしかしたら私は何も隠すことはないのかな。

■前世は冤罪で処刑されたんじゃないか

――それは50歳を迎えてそうなった感じですか? それとももともと?

光浦 もともと、隠してるとなんかわからないけど気持ち悪くて、負い目を感じちゃうんですよね。嘘の感情でしゃべってるのが。それが大人なんですけどね。それが大人だし、円滑に物事を進めるためには必要なことなのに、その一歩ができなくて。

 だからこの世界でよかったな、みたいなところはあるんですよ。普通の会社だったらとっくにつまはじきになってると思う。だからバイトいっぱいクビになったんだろうな、今思えば。

――嘘をつけなかったから。

光浦 どっちかというと目先の気持ちよさを取っちゃうタイプなんです。私にとって目先の気持ちよさは、嘘つかないことでした。

――本の中にも「嘘嫌い」のエピソードはたくさん出てきます。

光浦 嘘が本当に駄目なんだよな。それってたぶん前世の影響じゃないかなと思って。

――前世ですか?

光浦 前世の私は冤罪で処刑されたんじゃないのかな。こんなに嘘が嫌いなのはおかしいなと自分でも思って。

――「嘘が嫌い」というとちょっとかっこいい感じもしますが。

光浦 いや、わがままっちゃわがままなので。このわがままをどこまで通せるかというのはね。上手に知恵をつけながら。

――視聴者から見たら、芸能界って嘘ばかりなんじゃないか、嘘というか、虚構というか、まさにリアルコントみたいなイメージがあると思います。でも、光浦さんはいわゆる一般企業よりも、自分の性格は芸能界でより生かされたと思った。

光浦 芸能界は嘘だもんね。コントとかお芝居だもんね。「さあ、嘘をやるよ」っていうのを真剣にやるっていう。嘘の設定を嘘つかずにやるっていう感じの、なんかちょっと変な感じだもんね。

――「嘘をつく」ことに関しては嘘ついてない。

光浦 みんなで「さあ、嘘のことをやるよ」といって、「はい」って、そこから本気でやるじゃないですか。「この芝居はよくないと思う」なんて、しょせん嘘の芝居なのに。芸能界は、なんか変な世界なんですよ。

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撮影=鈴木七絵/文藝春秋

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頭でっかち、言い訳ばかり…光浦靖子(50)が「言葉が通じんところに行ってこい」と自分に命じるワケ へ続く

(西澤 千央)

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