「他の芸人さんより技術がない」ジャルジャルが語った“次世代の戦い方”《神コント「しょぼい新入社員だと思ったらすごい奴」の裏側》

「他の芸人さんより技術がない」ジャルジャルが語った“次世代の戦い方”《神コント「しょぼい新入社員だと思ったらすごい奴」の裏側》

ジャルジャル 撮影/平松市聖 ©文藝春秋

 2009年から出演した「爆笑レッドシアター」(フジテレビ系)で一世を風靡し、2010年11月からは「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ系)のレギュラーに抜擢。2020年には13回目の挑戦にして、コント頂上決戦「キングオブコント」の13代目キングとなったジャルジャル(後藤淳平・福徳秀介)だが、現在レギュラー番組は0本。テレビで見かけることは少なくなったように感じられるかもしれない。

 だが、それは彼らの“主戦場”が別の場所に移っただけだ。

 今となっては芸人がYouTubeチャンネルを持つのが当たり前となっているが、ジャルジャルは2018年2月に、誰よりも早くYouTubeチャンネル『ジャルジャルタワー(JARUJARU TOWER)』を開設。単独ライブのネタに入りきらなかった“ネタのタネ”を、毎日1本ずつ更新してきた。現在の登録者数は119万人、総再生回数は5億回突破と、圧倒的な人気を誇っている。

 そんな彼らが昨年8月、新たに開設したのが『ジャルジャルアイランド(JARUJARU ISLAND)』だ。美容室やバーなど実際にある場所を使ったコント、のん、YOASOBI、GENERATIONSなど実在する有名人とのコント、電話やZoomといった実際に利用する通信ツールを使ったコント、ネタサロン『ジャルジャルに興味ある奴』の会員と一緒に演じるコント――。 “ジャルジャルタワーの住人”と称するキャラクターと現実を融合させた、新しいかたちのコントを配信し続けている。

 変わったキャラクターや、ジャルジャルらしいシュールな世界観に目が行きがちだが、彼らのコントはそれだけではない。いま急速に形を変える社会への鋭い風刺すらも感じさせるリアリティを内包しているのだ。

◆◆◆

■コントの作り方は?「即興です!」

――『ジャルジャルアイランド』と『ジャルジャルタワー』がありますが、どうすみ分けをしているんですか?

後藤 スタッフさんから、まずネタを上に積み上げていって『タワー』を作っていく。で、島のように横へネタを広げていく『アイランド』をやりたいと説明されたことがあったんです。僕らも面白そうやなと思っていて、昨年、それをかたちにしてくれました。1発目としてあげたオールバックのコントはだいぶ前に撮った地味めなネタやったんですけど、いい感じに観てもらえて幸先がよかったというか。最初から多くの人に観てもらえてラッキーでしたね。

――どのネタも即興に近いかたちで作られていくそうですね。

福徳 即興と言いながらも、即興ではないんですけどね。説明が難しくていちばんわかりやすく、且つ近い表現としてそう言っているだけです。どういう感じで進めてるかと聞かれても、結局、即興ですとしか伝えられへんというか。説明しても変な感じになりそうやから、そう伝えてます。

――例えば、具体的にはどのように?

福徳 即興です!

――やっぱりその言い方がいちばんしっくりくるんですね……(笑)。『タワー』のネタはその即興的なやり方でできるでしょうが、『アイランド』はエキストラが絡むものもありますし、キャラクターの造形を膨らませていく作業も必要だと思います。どうやって作り込んでいくんですか。

後藤 事前に、作家さんがこの場所でこのネタをやろうって、ピックアップしてくれるんです。で、現場に行って、この場所を使ってこうしようとか、後半はこういう感じにしようとか決めてやっていく感じですね。

福徳 まぁ、大まかな流れは決まっているので、そこまで作り込むという感じでもないんです。

■コント「しょぼい新入社員だと思ったらすごい奴」

――なかでも、「しょぼい新入社員だと思ったらすごい奴」が抜群に面白かったです。取引先とオンライン会議するという設定で、ジャルジャルさん演じる先輩社員が何もできないとナメてかかっていた新入社員が、ビジネス用語を超高速でまくし立てる取引先女性と対等に渡り合い、さらに会議中、かかってきた電話には英語で応対するハイスペックさを見せつける、というものですが。

福徳 あははは! はいはい。

後藤 あれ、面白いですよね(笑)。僕もあのコントは何回も観ました。いちばん観たかもしれないです。

――再生回数もずば抜けていますよね。登場する新入社員と、ビジネス用語を多用する取引先の女性は、エキストラの方ですよね?  特に女性の方は「KPI」とか「ニューフィーチャー」とか「パラダイムシフト」とか、横文字言葉をものすごく早口で話すので、圧倒されました。

福徳 『ジャルジャルに興味ある奴』という“ネタサロン”があって、そこの会員さんが演じてます。会員には学生とか会社員とか、中には俳優の仕事をやっているような方もいるみたいです。この会員さんからエキストラを募集してるんですよ。こちらが決めたテーマで動画撮って送ってもらって選ぶんですけど、あるテーマで募集した時に、できる新入社員をやってくれた男性がビジネス用語をバリバリに話す動画を送ってきてくれて。テーマとは違ったけれど、これおもろいなぁってなって、この方向でコントを作ろうぜということになったんです。なので、あのネタは彼の動画ありきでできたものです。

後藤 何回も応募してくれる会員さんのことは、この人はこういうことができるとか、この人はこういうのが得意やなとか、僕らも認識してるんです。取引先の女性を演じてくれたのは何回か(オンラインでのコントに)参加してくれている方なんですけど、この男性に対応できる人やと思ったのでお願いしました。

■「僕らがついにエキストラに!」

――あの2人のキャラクターは、どうやって作っていったんですか?

後藤 僕らは一切、関与してないんですよ。

福徳 川上くんっていうめっちゃしっかり者の構成作家とあの2人で、1時間くらい打ち合わせして決めて。リハーサルもやってましたし、本番の前日に稽古もしてました。

後藤 僕らがついにエキストラになってしまったコントです(笑)。本番で初めて観たんですけど、速いスピードで会話のやりとりをしていて、びっくりしました。想定を超えてました。

福徳 川上くんも手応えがあったのか、「いい感じなので、当日楽しみにしてください」って言ってましたしね。

後藤 服装もエキストラの方の自前なんですよ。だからよりリアルな感じが出たんやと思います。

■ビジネス用語会話が「ちゃんとコントに」

――お2人の焦った表情も面白かったですが、あれはリアルな気持ちから出たものでもあったんですね(笑)。ということは、取引先の女性が話すビジネス用語もお三方で作られたと。

後藤 そこも基本、あの男の子が送ってきてくれた動画が元になってます。英語を使わないといけない会社で働いてるみたいで、ビジネス用語の事例をめっちゃ知ってたんやと思います。

福徳 本番はキーワードだけ書いてやってたんじゃないですかね。

後藤 僕らも彼らのビジネス用語だらけの会話は、ほんまになんにもわからなかった。

福徳 新入社員が途中、海外からかかってきた電話に出て、英語を喋るじゃないですか。それも僕らは本番まで知らなかったことで。

後藤 電話がかかってくる設定はあったんですけど、まさかあんなに達者な英語しゃべるなんで思ってませんでした。あそこは彼が喋りながら、別の端末から音を鳴らして、電話に出たふりをして英語で喋ってくれてるんです。

――あの2人の横文字だらけの会話に圧倒されましたが、ふと我に返って耳を傾けると、「次世代のスマホは食べられるか食べられないかが重要だ」みたいな会話になっていたりして。

福徳 そうなんです。ちゃんとコントになってるのもすごいですよね。 

■「あっ、一緒にコントしてた人や!」

――ネタサロンの会員のみなさんとは、コント以外で関わることもあるんですか?

後藤 実際に会ったことは一度もないですねぇ。

福徳 今やっている単独ライブ中、舞台上から何気なく客席を見て、「あっ、一緒にコントしてた人や!」と気づくことはあります。少し見渡すと、あそこにもおる、あそこにもおるってなるのはちょっと面白いですね。

――ほかに、ネタサロン会員の動画が発端になったコントはありますか?

福徳 「冒険家のくせに顔に経験出てない奴」とかもそうですね。

――後藤さんがオンラインでインタビューする団体が、過酷なヒマラヤ山脈の登山チームなのに、経験が顔に出ていない普通の大学生みたいな人ばかり。見た目と経験の差が面白いコントですよね。

?

福徳 元々、不動産屋の演技を動画で募集していたんです。ほんなら、中学生みたいな女の子が不動産屋のふりして送ってきて。「どこが不動産屋やねん!」ってなって(笑)、そのギャップの面白さからコントにしようということになりました。

■電話コントらしい「おしっこの音に返事する奴」

――『タワー』に公開しているコントは、数年前ものを今時のツールを使ってリメイクしたものも多いですよね。「真夜中に電話する奴」シリーズは電話でのかけあいをモチーフにしたコントですが、そのなかの「明るいけどほんまは暗い奴との電話」は、以前『タワー』で公開されたコントの別バージョンでした。

後藤 このシリーズは、その場で何をしようか、パッと決めて撮るんです。例えば福徳の家にある扇風機の音を使って「スカイダイビングしながら人生相談乗る奴」っていうコントにしたりと、ファンタジーなものでもイケるというか。声だけやからこそ、普段でけへん展開が生まれることはあるかもしれないですね。

福徳 いつもは後藤と横に並んで電話しているという体で録ってるんですけど、たまにほんまに電話しながら録ることもあります。

後藤 「寂しがり屋のボスと電話するジョボっていう奴」というマフィアのボスと手下を題材にしたものは、ほんまの電話を使って録りました。僕がやってる手下のジョボが、福徳がやってる命を狙われているっていうボスに電話をかけて。ボスがトイレに行ってするおしっこのジョボジョボっていう音に、名前を呼ばれたと勘違いしたジョボが返事をするっていうところがあるんですけど、その音は水道の水でやりました。

■「僕らはほかの芸人さんより、技術が足りてない」

――ジャルジャルさんのコントに出てくる登場人物って、奥行きがありますよね。キャラクターの設定が緻密だからか、同じキャラクターでリアルコントや電話、Zoomなど提示方法を変えてネタにしても、何度でも笑えるといいますか。

福徳 いや、本来なら、お客さんのことを意識して、もっと分かりやすい笑いを広げていかなあかんと思うんです。けど、僕らはそこを全く無視していて。キャラクターの役作りに専念しているから、奥行きができていくんです。ほんまの芸人さんはプロなので、もっとわかりやすく見えるように、前に前にアプローチするんですよ。僕らはそこが欠けている分、逆に後ろが分厚くなってるだけなんです。

――欠けてるっていう印象を持たれているんですね。

福徳 僕らはほかの芸人さんに比べて、お客さんに伝える技術が足りてないので。

後藤 そういうところが、YouTubeに向いているのかも。有料のお客さんの前ではなく、無料で見てもらえるからこそ(キャラクターを活かしたコントを)広げられているような気がします。

■福徳が動画で見る“独裁者の卵(っぽい人)”とは

――「独裁者の卵な奴」シリーズも、怖いくらい奥行きが深すぎるキャラクターが出てきます。福徳さん演じる「独裁者の卵」が、後藤さん演じる学生へサークルへの勧誘を早口ですすめるという。このシリーズにいまっぽさを強く感じました。

後藤 おぉ! けど、いまっぽいかな。

福徳 大昔から、歴史上にも独裁者は絶対におる人間じゃないですか?

――そうなんですけれど、最近、そういう人が身近に増えてきた印象ってないですか? YouTuberやオンラインサロンのオーナーに、チラホラと共通点を感じる人がいるような……。

福徳 あぁ(笑)。本番前には、特定の人たちの動画を決まって観てるんですよ。ある種、“独裁者の卵”みたいな吸引力がある人って早口なことが多い。だから本番前は早口で喋る人の動画をYouTubeで観て、1回、耳を慣らしたり、言い回しを参考にしたりしています。もちろん、実際にその人が独裁者の卵かどうかはわからないですけどね。

――話すスピード。考える隙を与えないのは、詐欺の常套手段だとよく聞きますよね。

福徳 たしかに訪問の営業販売とかって、そんな感じですよね。家に来た訪問営業の方もそうでした。めっちゃ早口で(営業の内容を)説明してたんで、思わず「大変ですねぇ」って言ってしまったことがあります(笑)。

■大学時代の秘められた“おふざけ”

――独裁者の卵役の福徳さんが着ている洋服も、独特ですよね。全身黒の服に、ベレー帽を被っているという……。

福徳 なんとなくのイメージです。

後藤 よく見たら、仮面ライダーのショッカーですけどね(笑)。

――あのキャラクターは、どこから着想を得たものなんですか?

福徳 元になってるコントは10年前くらいのネタやから、記憶が曖昧なんですよね。タイトルは思い出せないんですけど、大学時代、独裁者っぽい人が出てくる映画を観たことから思いついたような気がします。当時、後藤と2人で、大学の図書館にある休憩室で、変なサークルに勧誘されて引っかかるっていうおふざけをしていたんです。それを他の人に盗み聞きさせて、ちょっとだけ心配させるみたいな。

後藤 お互い、他人のふりをして。

福徳 僕が休憩室に入っていって、先にいた後藤に声をかけて「こういうサークルなんやけど入らない?」って誘うんです。

後藤 で、僕は吸い寄せられるように入ってしまうっていうやりとりなんです。

福徳 このネタのかたちはその頃からやっているものなので、以前からああいう光景ってきっとあったんですよ。

――独裁者の卵を演じている福徳さんの目にも、コント中、後藤さんが発する“吸い寄せられそう”っていう言葉そのまま、独裁者感が出ているように感じます。

福徳 あれは、後藤ありきというか。あのツッコミによって、そんなふうに見えるだけなんです。僕が独裁者の卵を演じてますけど、結果、後藤がみんなを洗脳している。真の独裁者やということです。

■オーディションに受かるため「被らないネタを」

――その構造も、大学時代にはすでに生まれていたわけですよね。

福徳 いま思うと、いちばんおもろかったのは、あの頃かもしれないですね。

後藤 誰にも顔が知られてないからこそできる遊びだったというか。

福徳 いきなり殴り合うフリをして、その場にいた人を驚かせることもありました。非常識なことでもあるので申し訳なかったなと思う部分もあるんですけど、今はもう絶対にできないことなのでおもろかったなと思えるところもあります。

――いたずらっ子ですね。あの、何が目的でそんなことをしていたんですか……?

後藤 ……なんなんでしょうねぇ?(笑)。僕ら、大学に通いながら、吉本の養成所に通ってたんですよ。大学生で芸人になったので。当時、舞台に出る機会自体がなかったこともあって、大学でよくネタみたいなことをやってたんです。

――舞台に出るためには、劇場のオーディションに受からないといけませんもんね。

後藤 劇場のオーディションに受かるのは、すごく大変でしたね。無茶苦茶なエントリー数から、ほんの一握りしか受からない。しかも、チャンスは月に1回だけ。周りと同じことをしてるといくら面白くても埋もれてしまうんですよ。それで他の人と絶対に被らない、尚且つ自分たちがやっててめっちゃ笑けるものをやっていたやと思います。それがいまに繋がっている気がしますね。

■相方に厳しい人って、面白い(笑)

――ジャルジャルさんのコントにはよく若手芸人が登場しますが、実際の経験から着想を得たものが多いんですか? たとえば「めっちゃ練習する奴」は、オーディションまでに同じリズムネタを何度も何度も稽古する若手コンビのコントですよね。異様な厳しさで稽古を強要する相方に、もう一方がキレ出すという。

後藤 相方に厳しい人って、面白いんですよ(笑)。

福徳 ああいう芸人はマジでいます。誇張なしです。僕ら、根本的に芸人の真似をするのが好きで。若手の頃は、オリラジ(オリエンタルラジオ)とか我が家さんのネタの完コピをようやってましたね。我が家さんだったら、杉山さんの「言わせねーよ?」っていうツッコミが単純に面白くて。オリラジも真似したくなるでしょう?

後藤 武勇伝はやりたくなりますよね。たぶん、カラオケでアーティストの歌を歌うような感覚で、他の芸人さんのネタを真似してました。

■作家が「このネタの表現は危ういですよ」

――そういう過去があったんですね。身近な人やものから着想を得ているから時代に合ったコントができるのでしょうか。特に最近は、昔と比べて笑いに対する制限が増えていますが。

福徳 3年くらい前にテレビでやってたちょっと過激なネタは、もう今はできない。それくらい時代は変わってますよね。でも僕らとしては案外気にならないというか。いま批判されがちなイジり芸系のものは単純に下手やったんで、やってなかったんです。

後藤 それでも、作家さんから「このネタの表現は危ういですよ」とか「今と合ってないです」って言われることもあります。だいぶ前に作ったネタは、時代と合わなくなってくることがあるので。

福徳 まぁ、それでも時代の波みたいなものはあるなと思っていて。「独裁者の卵」とか10年くらい前に出したものがいまっぽいと感じてもらえるなら、いま作っているものが受け入れられなくても、10年後に出したら面白いと思ってもらえる可能性もあるのかなと思っています。

INFORMATION

8月1日に千秋楽を迎える全国ツアー『JARUJARU TOWER 2021―ジャルってんじゃねえよ―』

 ジャルジャルの新ネタコントライブ。「オンラインチケットの売り上げは、目指せ1万人! です。でも、いまはだいぶ厳しいですね! だいぶ厳しい!」(福徳)「アーカイブでも何日か見られるので、ぜひとも買っていただきたいです!」(後藤)

プロフィール

後藤淳平(1984年3月20日生まれ、大阪府出身)と福徳秀介(1983年10月5日生まれ、兵庫県出身)が、2003年にコンビ結成。若手の頃から異色のコント師として知られ、2010年より「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ系)にレギュラー出演。コント頂上決戦「キングオブコント」が初回から毎年挑戦しており、2020年に13代目キングの座に輝いた。現在、「JARUJARU TOWER 2021 ―ジャルってんじゃねえよ―」の大阪公演開催中。8月1日(日)の千秋楽の様子は、オンラインで配信予定。チケットはオンラインチケットよしもと(https://online-ticket.yoshimoto.co.jp)にて発売中。

(高本 亜紀/Webオリジナル(特集班))

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