トレード直後に届いたLINE…15年目の電撃移籍、木村文紀の波乱万丈

トレード直後に届いたLINE…15年目の電撃移籍、木村文紀の波乱万丈

西武時代の木村文紀

 今回は、ある一人の選手への思いを書かせていただきます。波瀾万丈な野球人生を送る、一人の選手です。

 この仕事をやっていると、担当球団のことばかりに集中してしまい、他球団の結果はさらっと流してしまうことも少なくない。

 今季なら、やはり担当である西武ライオンズのことがいつも頭にある。1軍だけでなく、2軍で誰が好調かも、見に行けないときもできる限り記録などをチェックするようにしている。

 でも、8月12日を境に、私は西武だけでなく、北海道日本ハムファイターズの結果を気にするようになった。

 木村文紀のトレードである。

 西武の木村、佐藤龍世と日本ハムの公文克彦、平沼翔太のトレードが発表されたのがこの日だった。

 私は本格的に野球記者となって14年目。だが、木村との付き合いは、15年以上になる。当時、まだ埼玉の地方記者だった私が初めて取材をした「ドラ1」が木村だった。だから、思い入れは人一倍強い。

 木村の野球人生はプロ入り前から波乱に満ちていた。

 埼玉栄高校2年だった2005年の夏。埼玉大会決勝のマウンドにいた木村は、9回2死まで4−1で春日部共栄をリードしていた。

 が、そこから同点三塁打に勝ち越し打。甲子園の夢はあと一歩のところで消えた。のちに、「同点三塁打を打たれた後の記憶がない」と聞いたことがある。

 最速150キロ超。翌年、将来を期待されるエース候補として西武から高校生ドラフト1位指名された。

 が、プロに入ってからも「事件」は何度も起きた。

■もう少し早く転向したかった……

 10年には自らのすさまじい能力、腕の振りに身体がついてこられず、右ひじを疲労骨折した。翌年は車を運転中に追突されて腰を痛めた。

 ただ、度重なる災難にも、木村は「参ったっすよ」と言いながら、いつも笑顔で報告してくるのだった。だから、こちらも悲愴感なくそんな話を聞くことができた。

 そして、木村は前向きに努力し続けてきた。

 投手としては制球難に苦しんだ。持ち前の長打力と俊足を期待され、12年に野手転向。「本当なら、もう少し早く転向したかったんですけど」というのも、後に聞いた話だ。それだけ、投手として球団の期待が大きかったのだろう。

 元々、能力だけで野球をやっていた男が、走塁や守備を徹底的に学んだ。今季が始まる前には「めっちゃ練習したし、勉強したっすよ。今では、守備ならチームでも1番って言えるくらいの自信がありますよ」とも話していた。

 今季は西武生え抜きで15年目のシーズンだった。チームでの立ち位置も変わった。これまでは炭谷銀仁朗(楽天)を頼っていたオフの自主トレも、「そろそろ自分も後輩を引っ張っていかないと」と、後輩の西川愛也と2人でやった。

 昨春には子どもも生まれ、プライベートでも新たなモチベーションができた。それでも、やはり、木村の人生は波瀾万丈だ。

■33歳バースデー後、初のメットDへ

 今年5月、新型コロナウイルスの陽性反応が出た源田壮亮の「濃厚接触者」と特定され、広島で隔離生活を余儀なくされた。登録を抹消されると、そのまま1軍に復帰することなく、今回のトレードが発表された。

「正直、寂しいです」

 トレードが決まった直後に木村から届いたLINEの内容だ。

 それが、つい最近は「少しは慣れましたね」になった。奥さんと、まだ1歳の子どもと離れ、札幌での単身生活についてはやはり、「寂しいです」とも。

 さあ、そんな木村が14日からの西武3連戦でメットライフドームへ戻ってきた。移籍後2度目となる、古巣の本拠地での試合だ。14日の試合前には西武の選手や関係者らに挨拶して回っていた。聞くと、前日のオフには家族にも会えたそうだ。

 色んなことが起きる野球人生。このコラムではマイナスの思い出ばかりを紹介してしまったが、もちろん、華々しい活躍もある。西武では満塁本塁打もあれば、19年9月15日のロッテ戦では木村が打った飛球を相手の外野手同士が衝突して失策する間に一気にサヨナラの本塁を踏み、チームの優勝マジックが点灯するなど、劇的な場面を何度も生み出してきた。外野からのバックホームは、ほれぼれするようなレーザービームだ。

 13日に33歳となったばかり。14日は出場の機会はなかったが、15日以降、出番が来れば、西武ファンからも日本ハムファンからも大きな声援が送られることだろう。

 屈託のない性格で、新天地でもファンや仲間から愛される選手になるのは間違いない。前回のメットライフ3連戦では安打を打てなかった。できることなら、15日でも16日でも、古巣との一戦であいさつがわりの大活躍を、と書いたらライオンズファンに怒られるだろうか。それでも、木村の野球人生にまた新たな名シーンが刻まれることを願わずにはいられない。

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(山口 史朗)

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