〈民放連賞・優秀賞受賞〉「一生懸命な人って大体“イタい”ですよ。でも…」28歳デビューの“異色女優”、独自ポジションの秘訣

〈民放連賞・優秀賞受賞〉「一生懸命な人って大体“イタい”ですよ。でも…」28歳デビューの“異色女優”、独自ポジションの秘訣

©鈴木七絵/文藝春秋

出版社への就職に里山暮らし、でも“満たされなかった”…異色の女優・山田真歩「20代の反省」 から続く

 ドラマ『ナイルパーチの女子会』が2021年日本民間放送連盟賞のテレビドラマ番組部門で優秀賞を受賞した。同ドラマで丸尾翔子役を演じた山田真歩さんのインタビュー記事を再公開する(初出2021年1月30日、肩書き、年齢等は当時のまま)。

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 そこまで熱心に映画やドラマを観ていなくても、年に数本、「ハッ」とするような作品と出会う。そんな数少ないタイトルの中に高頻度で現れる俳優が、山田真歩さんだ。

 山田さんが演じるとどんな役でも「こんな人、いる!」という実存感がハンパなく、物語が一気に自分ごとになる。

 そんな山田さんが、第28回山本周五郎賞を受賞した柚木麻子さんの小説 『ナイルパーチの女子会』のドラマ化 (BSテレ東、毎週土曜21:00〜)に登板する。

「20代からずっと感じていた不安や空洞が小説の中にあった」と語る山田さんに、作品の魅力と、自身の半生について聞いた。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

「つまりさ、頑張ってもどうにか出来るもんじゃないんだよ。友達だけはさ」(『ナイルパーチの女子会』より。以降、引用は本書より)

 山田さん演じる丸尾翔子は主婦ブロガー「おひょう」として人気を集めており、キラキラしてないリアルな(というか怠惰な)日常をさらけ出すことでフォロワーを獲得していた。

 そんな飾らない彼女に惹かれていくのが、商社に勤める容姿端麗なお嬢様・志村?栄利子(水川あさみ)だ。栄利子は諜報員のごとくおひょうのブログを解析し、翔子と「女友だち」になるべく接近していくが……。

 文字にすると栄利子がクレイジーに見えるが、SNS全盛の今、気になる人の近況を調べたことくらい、誰にでも経験があるのではないだろうか。

■SNSは向いてない

 ドラマは新型コロナが流行している現代を舞台に、リモートワークやオンライン飲み会といった独特な空間が見事に映像化されているのだが(オンライン会議の見せ方は必見)、山田さん自身は、SNSの距離感があまり得意ではないという。

「リモート会議とかって、背後にある自分のプライベート空間が相手に覗かれている感じがありませんか。ドラマではその雰囲気を可視化するチャレンジをしているので、そこも見どころのひとつです。

 私もmixiからはじまってFacebook、Twitter、Instagramとひと通りのSNSはやってみたんですけど、今でも続けているのは結局ブログだけで、あとは全部やめちゃいましたね。Facebookはこの人を“友達”にしたのにこの人は“友達”じゃなくていいのか……みたいな線引きにいちいち悩んでしまって、3日でギブアップしました。

 そもそも私は相手の私生活をそんなに覗きたいとも思わないし、自分のも見てほしいとも思わないんですよね。あの、家族でもない人の日常がダーッと流れ込んでくる感じが自分にはしんどかったです。

 7つ下の妹がいるんですけど、わたしが昨日書いたつぶやきを『今日はこんな気持ちじゃないから消そう』とかって削除していたら、『お姉ちゃんみたいに一言一言重く考えていたらSNSなんてできないよ』と言われて、自分はSNSに向いてない、とはっきり悟りました」

■「女ともだち」という切実な問題

「女の上っ面の慰め合いや愚痴や井戸端会議を、軽蔑したり、莫迦にして笑う男……、そうだね、女にもよく居るよね。じゃあ遠くで笑うやつらに何が出来るってのよって感じ。相手の心をえぐって真実を突きつける辛辣さが、人を傷つけないように配慮された言葉よりも高尚だなんて誰が言えるのよ」

 SNSを通じて出会った栄利子と翔子は、共に「女友だち」がいない。世間では友だちは多いほうがいいとされているし、特に女にとっては(たとえは古いが『SEX AND THE CITY』のような)、女友だちさえいれば人生の艱難辛苦も乗り越えられるといった類の創作物を浴びて育ってきていることもあり、男のそれより切迫した、切実な問題だ。

 加えて、女同士の関係を「ドロドロしてそう」と忌み嫌い、「さばけた話のわかる女」だけを仲間と認める男社会の規範を自分の中に取り込んでしまう女もいる。

 女ともだちを持たない女は卑屈になり、男の視点を内在化した女はねじくれ、「女子会」的なものに敵意をむき出しにする。それでも、傷つきながら必死に女友だちを求める栄利子は、あなたの目に滑稽に映るだろうか。

■ 「一生懸命生きている人ってだいたい“イタい”ですよ」

「一生懸命生きている人ってだいたい“イタい”ですよ。でも、そうやって頑張っている人を『あいつはヤバい』『イタいやつ』と遠くから言うのは簡単ですが、痛い思いをしないと成長もできないと思うんです。

 翔子は栄利子とは反対で、痛い思いをしないように避けたり、向き合わなきゃいけないことから逃げたりするところがありますが、そうして大人になりそびれた人が、真に大人になるというのはどういうことかも描いているんです。

 水川(あさみ)さんが栄利子を演じた時、なんとかして彼女の気持ちに共感できるように模索したという話しをされていましたけど、私はその行為がまさに“大人”なんじゃないかと思うんです」

 名バイプレイヤーと称されることも多い山田さん。芸能界で独自のポジションを築いているように見えるが、何か意識していることはあるのだろうか。?

「最初は、周囲の目にそう映っていることにさえ気がつきませんでした。今日は撮影があるのでかけてませんけど、あまり女優さんはかけないメガネを普段つけているのも、それが自分にとっての “普通”だっただけで。?

 求められる“女優像”に応えようと頑張った時期もありましたが、向いていなかったし……今は『1人ぐらい、こういうのがいてもいいだろう』と思っています」?

 後編では、出版社を辞めて27歳から俳優を志し、翌年には主演で銀幕デビューした山田さんの異色のキャリアと、「20代の時の反省」を聞いた。

【後編へ続く】 出版社への就職に里山暮らし、でも“満たされなかった”…異色の女優・山田真歩「20代の後悔」

写真=鈴木七絵/文藝春秋

〈民放連賞・優秀賞受賞〉出版社への就職に里山暮らし、でも“満たされなかった”…異色の女優・山田真歩「20代の反省」 へ続く

(小泉 なつみ)

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