《2021大学駅伝シーズン開幕》箱根Vメンバーは足並み揃わずも…駒大“一強”は揺るがず! 対抗馬は青学大、ダークホースはオリンピアン擁する「あの大学」

《2021大学駅伝シーズン開幕》箱根Vメンバーは足並み揃わずも…駒大“一強”は揺るがず! 対抗馬は青学大、ダークホースはオリンピアン擁する「あの大学」

一昨年の出雲駅伝スタートの様子 出雲駅伝公式HPより

 今年は2年ぶりに“神在月”の出雲路に大学生ランナーの足音が響き渡る。

 昨年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止になった出雲駅伝が、10月10日に2年ぶりに開催される。

 1年間を通して試合自体は数多く開催されているが、多くの大学生ランナーが目標としている舞台が、出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝の「学生三大駅伝」だろう。

 もちろん関東の大学は箱根駅伝を最大の目標としている場合が多いが、地方の大学にとっては、全国中継のある出雲駅伝と全日本大学駅伝は、母校をアピールするまたとない機会になる。コロナ禍真っただ中だった昨年の出雲駅伝は、台風による悪天候で中止になった2014年以来2度目の中止となり、落胆した大学生ランナーは多かったのではないだろうか?

■出雲駅伝の面白み

 ようやくトラックの試合は開催されるようになった(三重国体など中止になった大会もある)が、ハーフマラソン等のロードレースは、感染状況を鑑み昨年に引き続き、今年も数多く中止になっており、ロードでの実戦の場が少ないのが現状だ。だからこそ今季の駅伝シーズンを睨むうえで、出雲は貴重なロードレースの1つとなる。

 昨年12月からはトラックの長距離レース(800m以上)で着用できるシューズのソールの厚さは「25mm以下」と規定が変わった。つまり、トラックレースでは昨今主流の“厚底シューズ”が使用不可となり、なかなか実際のレースで履く機会がない。

 ロードレースではソールの厚さが40mm以下のものまで使用可ということもあり、レースで厚底シューズを試せる貴重な機会にもなる。また、今回からは前日に6区間のオーダーを登録し、当日にも2名まで補欠選手からオーダー変更が可能になった。各校のレース前日からの駆け引きも見逃せない。

 大学駅伝初戦からタイトルを狙いに行くチームもあれば、出雲を経験の場とし、それを踏み台にして全日本、箱根へと調子を上げて行くチームもある。出雲駅伝には様々な側面があり、各校の思惑を窺い知れるのもこの駅伝の面白みだ。

◆◆◆

■駒澤大は今年も昨年度以上に戦力が充実

 学生三大駅伝の全てを制し三冠を成し遂げたのは過去に4校しかない。昨年度(2020―21年シーズン)は、駒澤大が全日本と箱根の二冠を果たした。仮に出雲が開催されていれば、史上5校目の三冠を達成していた可能性もあっただけに、無念にも新型コロナ禍に快挙を阻まれた形になった。

 その駒澤大は今年も昨年度以上に戦力が充実している印象があり、出雲でも優勝候補筆頭の呼び声が高い。

 今年5月3日の日本選手権10000mでは、東京オリンピックの代表選考がかかった大舞台で、エースの田澤廉(3年)が2位、鈴木芽吹(2年)が3位に入った。実業団選手をも含めた真の日本一を決める舞台の表彰台を、2人も駒大勢が占めたのだ。記録も、それぞれ27分39秒21、27分41秒68と、日本人学生歴代2、3位に入る好記録をマークしており、学生の枠を超えた活躍を見せている。

■エントリー選手10人全員が13分台のタイム

 さらに、昨年度は箱根で6区の控えだった唐澤拓海(2年)が、田澤、鈴木に続く、チームの核となる選手に成長。この三本柱は強力だ。ルーキーの篠原倖太朗も、9月の日本インカレ5000mで2位に入るなど即戦力の活躍を見せている。

 また、ひと昔前までは「5000m13分台」が学生トップランナーの証とされていた。今では珍しくなくなったとはいえ、駒大のエントリー選手10人全員が13分台のタイムを持つ。今年1月の箱根優勝メンバーからは、石川拓慎と酒井亮太の2人が部を離れ、今回のエントリー選手に白鳥哲汰(2年)と花崎悠紀(4年)の名前はないが、要所を担う選手が揃う上に、選手層が厚く、抜かりはない。

■選手層の厚さでは、駒澤大をも凌ぐ青山学院大

 青山学院大もエントリーメンバー10人を5000m13分台の選手でそろえた。今季の青学大は、出雲のエントリー選手を含め、合計22人が5000m13分台の自己記録を持っており、選手層の厚さという点では、駒澤大をも凌ぐほどだ。しかし、駅伝で優勝を狙うには核となる選手が不在で、エース力という点でライバル校に劣っているように思われていた。だが、その懸念材料を吹き飛ばしたのが3年生の近藤幸太郎だ。今季はここまで絶好調で、5000m、10000mの2種目で、過去の名だたる先輩の記録を破り、青学大記録を打ち立てた。9月の日本インカレでは5000mで優勝し、勝負強さも出てきた。

 昨年度は、全日本、箱根と共に4位に終わっているが、本命視されていない時に圧倒的な強さを発揮するのが青学大というチームでもある。また、出雲にエントリーされた1年生は若林宏樹だけだったが、今季はルーキーが充実しており、出雲で優勝すれば一気に勢いづく可能性もある。

 2年前は、7年ぶりの出場だった國學院大が下馬評を覆して初優勝を果たしたが、今回ダークホースとなりそうなのが初出場の東京国際大だ。

■東京国際大の勝負の鍵を握るのは…

 箱根駅伝では2年連続で驚異的な走りを見せ2区間で区間記録を持つイェゴン・ヴィンセント(3年)は、5000mの日本学生記録(13分15秒15)保持者でもあり、20q超の距離だけでなく短い距離でも強い。出雲ではおそらく最長区間の6区(10.2q)起用が予想される。そうなると、他校は東京国際大との差を気にしながらレースを進めなければならない。

 勝負の鍵を握るのは日本人エースの丹所健(3年)だ。

 東京国際大の先輩には今夏の東京オリンピック男子10000m代表の伊藤達彦(Honda)がいるが、丹所はトラックの5000m、10000mの記録で、在学中の伊藤の記録を早くも上回っている。日本インカレでは5000m3位に入り、他校のエース格と互角に戦えるのを示した。丹所で好位置に付ければ、一気に頂点も見えてくる。メンバーは全員が3年生以下の顔ぶれで挑むが、1年生にも好選手がそろい、チームに勢いがある。

■順天堂大や早稲田大も顔ぶれが豪華

 東京オリンピック男子3000m障害7位入賞の三浦龍司(2年)を擁する順天堂大も侮れない。三浦にとって、出雲駅伝は地元・島根への凱旋レースになる。三浦は日本記録保持者である3000m障害の実績が突出しているが、3000mとハーフマラソンで20歳未満の日本記録を持ち、クロスカントリー競技でも日本一に輝いているオールラウンダーでもあり、駅伝でもチームの軸となる選手。また、野村優作、伊豫田達弥(以上3年)、石井一希(2年)といった面々も力があり、十分に頂点を狙える布陣を築ける。

 また、日本人学生で10000mを27分台で走った選手は、歴代で20人しかいないが、そのうち3人を現役選手として擁する早稲田大も顔ぶれが豪華だ。その27分台の3人、中谷雄飛、太田直希(以上4年)、井川龍人(3年)や主将の千明龍之佑(4年)らが順当にエントリー。1、2年生にも力がある選手がそろう。大学駅伝三冠を果たした2010年度以来、駅伝で優勝から遠ざかっているが、今季は十分にチャンスがある。

■多くの大学に優勝のチャンスがある

 ここまでで関東の5大学を挙げたが、2年前の優勝校の國學院大や、近年安定した実績を挙げている帝京大も、順当な顔ぶれをエントリーできた。一方で、東洋大は、注目のルーキー石田洸介は名前を連ねたものの、宮下隼人(4年)、松山和希(2年)の二枚看板がメンバー外。東海大も、大エースの石原翔太郎(2年)をエントリーできなかったのは大きな痛手だ。

 ただ、関東の大学は箱根駅伝の20q超に対応するために9月まで走り込んでいるチームも多く、エントリータイムが当てにならないこともある。優勝を目標に掲げているチームはもちろん調子を合わせてくるだろうが、出雲と箱根とではレースの特色が全く異なるため、出雲駅伝仕様に仕上げているかどうかで、順位はがらりと変わってくる。

 また、全6区間、45.1qと距離が短い出雲駅伝では、1区間でもミスがあれば挽回するのは難しく、番狂わせも起きやすい。言い換えれば、多くの大学に優勝のチャンスがあると言っていい。

■今年も目が離せないレースが繰り広げられる

 関東以外の大学では、2年前の2019年大会で6位、18年も7位と、関東勢に割って入っている立命館大に注目だ。1年時からチームの主力として活躍している山田真生(3年)を軸に、今回も入賞ラインに食い込めるか。同じ関西勢では関西学院大も充実している。日本インカレの10000mではエース上田颯汰(3年)が、日本人トップの5位と、関東の主力選手に競り勝った。東海地区代表の皇學館大は、昨年度まで大黒柱だった川瀬翔矢(Honda)が卒業したが、佐藤楓馬(2年)が新エースとなり、力のある1年生も多数入学し、フレッシュな顔ぶれで挑む。

 また、個人では初出場の北海道大学から高橋佑輔(4年)に注目したい。高校時代にインターハイ800mで優勝した実績を提げて、北の大地では理学部に学びつつ、力を蓄えてきた。今年の日本選手権では1500m4位と、日本のトップランナーと互角に戦った。日本インカレも1500m3位。スピードを武器に、関東勢に一矢報いる走りを見せてくれそうだ。

 王者・駒澤大が突っ走るのか、はたまたその牙城を崩すチームは現れるのか――。12時5分の号砲から、あっという間の2時間。目が離せないレースが繰り広げられそうだ。

(和田 悟志/Webオリジナル(特集班))

関連記事(外部サイト)