諦めなければその時はやってくる…フジテレビを辞めて「オリックス優勝」を妄想し続けてきたアナウンサーの話

諦めなければその時はやってくる…フジテレビを辞めて「オリックス優勝」を妄想し続けてきたアナウンサーの話

©文藝春秋

※今回は今まで話していなかった僕のフジテレビ退社時の事、野球実況の事を書かせて頂きます。アナウンサー田中大貴ではなく、イチ野球ファン田中大貴として読んで下さいね。嘘のようで本当の話。最後まで読んでください。

■今でも忘れられないフジテレビ退社時のインタビュー

「オリックスの実況したくてフジテレビを辞めたのはホンマですか??」

 これまで何人の方に言われたか……もう数え切れまへん。

「それがホンマやったら田中さん、めちゃくちゃ良い人ですね」

 こも何人の方に言われたことか……数え切れまへん。

 今でもそうですが、仕事では常にフラットに、常にバランスよく、ニュートラルに。

 選手、ファン、視聴者ファーストで。

 ただ、プライベートは故郷に思いを馳せ、オリックスをこっそりと心の中で熱く応援してきたフジテレビ時代の僕。

 2018年、退社時に新た一歩を踏み出す僕にスポーツ系メディアの人がインタビューに集まってくれました。

「やはりスポーツの仕事を中心に活動されますか?」
「テレビだけではなくインターネット配信のメディアにも興味を持たれているんですか?」
「30代、若くして退社した一番の理由は何ですか?」
「フリーアナウンサーとして目指す場所は?」

 3年前の夏、矢継ぎ早に色んな質問が飛んできました。それぞれの質問に丁寧に答えていた僕。

 そして、スポーツ新聞の記者の皆さんから飛んできた質問。

「フジテレビ時代はヤクルト中心でしたが、やはり関西出身として地元・阪神タイガースの実況もかなり興味は持たれていますか?」

「うーん、実はオリックスファンでして……グリーンスタジアムでオリックスの実況を担当してみたくて……」

 目の前にいる記者の皆さんはひっくり返っていた。

 “田中アナ、阪神戦実況デビューへ、フリー挑戦”

 こんな見出しを考えていたであろう記者の皆さんはまさかの返答に大困惑。

 あの顔は今でも忘れられへん……もう一回聞かれました。「ホンマにオリックスファンなんですか?」と。記者の皆さんの顔に「うそやん(汗)」って書いてあった(笑)。

 次の日の新聞は“オリックス実況を夢見てフリーで再出発”という見出しは大きくは踊らず、ほとんどの記者がオリックスのことは詳しく書いてくれへんかった(涙)。いくつかのメディアは逆に面白がって少し書いてくれたけど(笑)。

 言われましたわ、当時、周りの皆さんこんなふうに(笑)。

「オリックス戦の実況しても日本シリーズもクライマックスシリーズも出る日は来るの? 来ないんじゃない? 大貴、大丈夫か??」

 でも、皆さん、来ましたよ。その年が、その日が。諦めず、信じている者だけが達成できる……この言葉を日本を代表するレジェンドアスリートの皆さんからインタビューで僕は何度も聞いてきました。この言葉を信じてきました。

 だから疑うことなく信念を持って妄想してきました。オリックス戦の実況フレーズを。いつかその日が来ると思って、信じ続けてきました。

■オリックス優勝の瞬間を伝えるフレーズを考えてみた

 オリックスと言えばブルーウエーブで育った僕。

 オリックスと近鉄が球団再編で一つになって創設されたオリックス・バファローズ。

 だから勝った時には、“赤き猛牛軍団が、青き波に乗っていく”というフレーズを言わせてもらおう。近鉄の赤と猛牛を、ブルーウエーブの青と波を入れようと。

 そして、吉田正尚君、山本由伸君らが若手が台頭してきて、毎年2月1日はオリックスキャンプに取材に行くようにして、ここ数年、確信したことがある。

「若手の力、素質、才能は12球団トップクラス。若手が絶対伸びてくる」

 だから、さっきのフレーズの別パターンで、“若き猛牛軍団が蒼き波に乗っていく”というフレーズを考えた。「青き」を「蒼き」に変えたのは、「蒼い」という意味には未熟という意味が含まれているから。“まだ未熟な若手が勝利の波に乗って、機は熟して、必ず逞しくなる”。そんな思いを込めて考えたフレーズ。

 オリックスが上位争いをし始めてからは、“逞しき猛牛軍団が青き高き波に乗っていく”というフレーズに変えました。機は熟しました。

 オリックスというチームをもう実況させてもらえたら……どんな言葉を使って表現しようか? この数年間、ずっと考えて来ました。歩きながらブツブツと妄想実況していて、怪しまれたことも幾度となくありました。実況資料作りと実況フレーズを考えるのは気が付けばもう20年ほど続けている日課になっていました。これといった趣味は無いし、毎日続けていることはほぼ無いけど、この二つは実況に携わるようになってからはずっと続けてきました。

 周りからは滑稽に見えるかも知れないけれど、諦めず信じていればいつか、その日、その時がやってくる。人生て不思議で愉しすぎますね。20年くらいかかったけれど、その瞬間がやって来るかも知れない。

 さあ、オリックス優勝の瞬間を伝えるフレーズは何にしようか……どんな実況資料を作ろうか。みなさんも妄想して下さいね。みなさんならどんな優勝実況フレーズがいいですか? そして諦めず信じ続けましょうね。

 今日も僕は妄想実況中。「捉えたぁぁぁ、杉本裕太郎、クライマックスシリーズ第1号! 吉田正尚に向かってガッツポーズ! 逞しき猛牛軍団が青き高き波に乗っていきます!」なんてね。

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(田中 大貴)

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