「やっぱり石川雅規さんや石山泰稚には思い入れがある」引退から3年、久古健太郎が語るスワローズへの思い

「やっぱり石川雅規さんや石山泰稚には思い入れがある」引退から3年、久古健太郎が語るスワローズへの思い

現役時代の筆者 ©文藝春秋

■心はいつもスワローズとともに

 皆さん、お久しぶりです。元東京ヤクルトスワローズの久古健太郎です。まずは遅まきながら、6年ぶりの優勝、本当におめでとうございます!

 僕は2018年を最後に現役を引退して、現在はコンサルティング会社でサラリーマンとして働いています。ユニフォームを脱いでもう3年になりますが、それでも心はスワローズとともにあります。なので今年の優勝はとても嬉しかったです。それに、一緒に戦った選手や監督・コーチがたくさんいますので、とても思い入れのある優勝になりました。

■神宮球場でのビールかけが最高の思い出

 覚えてもらっているかどうか分かりませんが、ヤクルトが前回優勝した2015年、今年で引退した雄平さんのサヨナラヒットで優勝を決めた試合(10月2日阪神戦)で、僕も中継ぎとして投げさせてもらっていました。試合後に神宮のグラウンドで行ったビールかけは、8年間のプロ野球生活でも最高の思い出です。あれを経験できたのは自分の野球人生でもすごく大きかったですし、あの経験があったから悔いなく現役を終えることができたのだと思っています。

 その一方で、個人的には1年間一軍にいたわけではなかったので、何かやり残したような感じもありました。優勝を決めた試合で、サヨナラのホームを踏んだシンゴ(川端慎吾)が泣いているのを見た時に、自分もシーズンを通して一軍で活躍した上で優勝の喜びを味わいたいなと思ったのを覚えています。

■6年前の日本シリーズ敗退の借りを返してほしい

 日本シリーズでも、3試合に投げさせてもらいました。初めての舞台でしたが、僕自身はどちらかというと自信を持って臨めていたので、良い緊張感、良いメンタルの状態でマウンドに上がることができていました。相手はソフトバンク。当時は柳田(悠岐)選手がトリプルスリー達成でノリにノッていたのですが、シーズン終盤にデッドボールを当てられた影響で、インコースのボールに対して怖さを持っているように見えました。なのでしっかりインコースに投げることができれば抑える確率は高いと思っていて、そういう意味でも精神的に優位に立てていたと思います。

 ところがソフトバンクはめちゃくちゃ強かったです。結局、1勝するのがやっとで、圧倒されたまま日本シリーズを終えてしまいました。今年はヤクルトにとって、それ以来の日本シリーズ。僕らはあの時にすごく悔しい思いをしているので、今回は相手がオリックスですが、何とかその借りを返してほしいという思いがあります。

■正直、今年も優勝は難しいと思っていた

 正直なところ、昨年までの戦いを見ていて今年も優勝は難しいと思っていました。今もプライベートやお付き合いなどで年に4、5回は神宮に足を運びますし、時間がある時はテレビで試合を見ることもありますが、そこまでチームを追えているわけでありません。それでもシーズンが進むにつれて、昨年までとは違うなという印象を持つようになりました。

 たとえばローテーション以外の、いわゆる谷間の先発が投げる試合。今までなら、そこで打たれて負けてしまうことも多かったと思うのですが、今年はその辺りのピッチャーのレベルが上がっていて、しっかり勝ちを拾えていました。中継ぎだったら今野(龍太)君とか、前半だと近藤(弘樹)君がすごく頑張っていて、底上げができているというか、今までとは違う層の厚さみたいなものを感じるようになりました。

 4月の後半ぐらいからはずっとAクラス。ある程度、戦い方もハッキリしてきていたので、6月ぐらいには後半戦もたぶんこのまま落ちることはないだろうなと思うようになっていました。

■投手は「勝負しろ」と背中を押してほしい

 高津(臣吾)監督が終盤、ミーティングで言った「絶対大丈夫」という言葉もすごく良かったですよね。動画も見ましたけど、自分がもし選手だったら、マウンドに立ってしんどい時や、緊張する場面などでああいう言葉が1つあるとそれだけで落ち着くし、心のよりどころになるだろうなと思いながら見ていました。

 あと印象に残っているのが、高津さんがピッチャーに「打者と勝負をしろ」と言っていたことです。今まではどちらかというと「フォアボールを出すな」など、ピッチャーにとってはネガティブなワードが出ていて、そこを改善しろと言われることが多かったと思います。もちろん意味としてはどちらも同じだと思うのですが、「勝負しろ」と言われたら、勝負して打たれたらしょうがないという割り切りがピッチャーの中でできます。ある意味、結果を気にせずにやるべきことに集中できるので、その辺りのメンタル的な部分も大きかったのかなと思っています。

■伊藤智仁投手コーチはデータを元に根拠を持った指導をしている

 それに加えて、トモさん(伊藤智仁投手コーチ)がデータ分析を元に、根拠を持った指導をしているという話を聞いて、意識だけではなくその辺りの違いも感じました。何が良くて何が悪かったかというのを数字で見ることができれば、今度は差分が見えてきます。いろいろな数字を取ることで、良かった時と悪かった時の比較もできますし、どの数値が悪くなったからどの数値が下がったなどの関係性も見えてくるので、そうすると自分が何をすべきなのかというのが明確になってきます。僕の現役時代にこれだけのデータがあれば、と思いますね(笑)。

■チーム力はヤクルトのほうが上

 11月20日に始まった日本シリーズに関しても、僕はヤクルトが勝つチャンスは十分にあると思っていて、第1戦でその思いは強くなりました。オリックスの山本由伸君を相手に打線があれだけ粘って、奥川(恭伸)君よりも早く降板させたわけです。あれを見て、チーム力という点ではヤクルトの方が上ではないかと思いました。

 第2戦でもオリックスの宮城(大弥)君があれだけのピッチングをしていたのに、ワンチャンスをモノにして勝ったのも、本当にすごいなと思いました。何よりケイジ(高橋奎二)が133球で完封ですから。高津さんは二軍監督の時から目をかけてケイジを育ててきていましたし、それを見てきた僕らからしてもすごく印象深い試合でした。

■石川、石山に思い入れ

 もちろん選手には全員、頑張ってほしい気持ちがあります。それが大前提ですけど、やっぱり石川(雅規)さんや石山(泰稚)には思い入れがあります。大学の先輩でもある石川さんには本当にお世話になりましたし、石山とはブルペンで一緒にやってきましたから。第3戦ではその石山が中継ぎで勝ち投手になって、第4戦では石川さんも先発で日本シリーズ初勝利。もう最高すぎましたね。あとは6年前の借りを返して、日本一になってくれることを願うばかりです。

■ヤクルトは多くの人に喜びや元気を与えている

 引退した今、外からヤクルトを見るようになって、中にいた時は気付かなかったことがたくさんあると実感しました。ヤクルトの優勝にしても、その1つのことですごくたくさんの人が喜びを分かち合える。それだけでもすごく大きな価値、大きな影響を生んでいると思います。選手は一生懸命、野球をやることが役目なのですが、結果的にこれだけ多くの人にたくさんの喜びや元気を与えるというのは、現役の時よりも今の方が感じます。優勝することの意味というのが、いまさらながらよく分かったように思います。

■来年以降はAクラス常連に、そして連覇へ

 個人的にも、今回このような機会をいただけたのもヤクルトが優勝したからですし、いろいろなところに影響を与えているのだなと感じています。今年の戦いを見ていると、来年以降もすごく期待が持てるというか、これからAクラス常連になるのではないかという印象を受けます。まずは今年、日本一になって、来年以降も連覇するようなチームになってほしいと思います。それがいちOB、いちファンとしての願いです。

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(久古 健太郎)

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