〈Wii誕生から15年〉「リモコンを振り回す未知のゲーム」はどうして不評を乗り越え大ヒットを連発したのか

〈Wii誕生から15年〉「リモコンを振り回す未知のゲーム」はどうして不評を乗り越え大ヒットを連発したのか

12月2日で国内発売から15年が経つWii ©iStock.com

 12月2日で、任天堂の家庭用ゲーム機「Wii(ウィー)」は国内発売から15年を迎えます。ゲーム機の高性能化を追求する時代、“業界の常識”を否定して「操作端末のリセット」というアイデアを提示。新規層を獲得して一度は奪われた据え置き型ゲーム機の“王座”を奪還し、ゲームの可能性と間口を広げました。その歩みを振り返ってみましょう。

■Wii本体購入者の約8割が買った「真の怪物」ソフト

「Wii」は、テレビのリモコンのように見える異色のコントローラー「Wiiリモコン」が特徴の家庭用ゲーム機です。Wiiリモコンをテニスのラケットや野球のバットに見立てて振り回せる人気ソフト「Wii Sports」は、世界で8290万本を販売しました。実にWii本体購入者の約8割が買っている計算です。

 ニンテンドースイッチで世界的に大ヒットをした「あつまれ どうぶつの森」(9月末時点で3485万本)の約2.4倍。「真の怪物」というのがふさわしい実績でした。

 もちろん「マリオカートWii」(3738万本)や「New スーパーマリオブラザーズ Wii」(3032万本)、「大乱闘スマッシュブラザーズX」(1332万本)といった定番ソフトも人気を博しました。

 しかし、ボードの上でポーズを取る健康ソフト「Wii Fit」(2267万本)のように、革新的で従来にないソフトを提案。その上で大ヒットしたことこそ、Wiiの真骨頂でしょう。

■「リモコンを振り回す未知のゲーム」に当初は厳しい予想も…

 Wiiは、従来のゲームにない遊びを提示したため、ゲームを遊ばない消費者が買い求めました。一般層に広げるため、プロモーション戦略を含めたうまさもありました。

 そもそも発売前は、リモコンを振り回すという未知のゲームだけに、ゲームファンには総じて不評でした。理由は、ライバルに比べて、ゲーム機自体の飛躍的な性能のパワーアップがなかったこと。Wiiリモコンの魅力が実際に触らないと伝わらなかったためです。また、手の内をライバルに明かさなかったので、Wiiリモコンの披露は本体の発表に比べてずっと後になり、ベールに包まれて実態がよくわからなかったこともあげられます。

 それだけに、Wiiのコンセプトを具現化した「Wii Sports」の存在は大きく、Wiiの魅力は発売後すぐ伝わっていきました。

 ゲーム機の操作端末と言えば、おなじみの「コントローラー」ですが、ゲームに慣れない人には扱いが難しいという声があるのも確かです。PlayStation 5の発売直後も決定キーが「○」から「×」に変更され反響を呼びましたが、実際のところ「慣れた」人でもキーの操作感が変わればしばしば戸惑います。ゲームに慣れない人にとってはなおさらで、意外に「コントローラー」はちょっとした壁になっているのです。

 ところがWiiはリモコンを握って振るだけ。直感的で誰もが楽しく遊べました。むしろ、ゲームファンの方が体感型とも言える操作方法に苦労したといえるのかもしれません。

 白熱するあまり、Wiiリモコンを振り回して手からリモコンが抜け、テレビにぶつけて画面が壊れる……という現象も起きました。あまりに話題になり、Wiiリモコンの使用時にはストラップを手首に巻き付けて遊ぶようにと告知されるほどでした。

■「テレビCMでやっている“ファミコン”はこれかね?」

「ゲーム機が売れるかはソフト次第」という業界の格言があります。その言葉通り「Wii Sports」は、「万人がゲームを楽しめる」というWiiの魅力を存分にアピールできるソフトでした。ゲームファン以外も買い求め、Wiiは品薄になりました。

 任天堂が、Wii本体の修理受け付けを2020年3月31日の同社到着分をもって終えると発表した際、当時の人気ぶりについてとある編集者が「当時聞いていたラジオ番組でも、しばしばWii SportsやWii Fitが登場していた」と語っていました。ゲームをラジオで取り上げるという難しい企画のはずなのに、聞いている方も意外と楽しめていた記憶があるようで、画面が見えなくても「情景が浮かぶようなゲーム」だったのだと思います。

 実際、私自身が当時のゲーム販売店を取材した際にも、こんな話を聞いたことがあります。孫に頼まれたであろう年輩の男性が来店し、Wiiリモコンを手に取って、「テレビCMでやっている“ファミコン”はこれかね?」と言ってレジに来たそうです。

 もちろん“ファミコン”とはWiiのこと。店員が、Wiiのゲーム機本体が人気で売り切れで、リモコンだけではなくゲーム機本体と別にソフトを買う必要があると説明しました。ところが男性は、テレビCMにあるWiiリモコンが手元にあるのに買えないのはおかしいと食い下がったそうです。

 ある意味、ほほえましい話なのです。ゲーム機の特性を知らない層にすら訴求したのがWiiでした。Wiiの開発時のコードネームは「レボリューション」だったのですが、ゲーム業界に“革命”を起こしたわけです。

■「嫌われない」「邪魔にならない」の徹底の先にたどり着いた設計

 当時、任天堂を指揮していた岩田聡社長はマスコミ向けの会見で、Wiiについて「嫌われない」「邪魔にならない」という言葉を盛んに使っていました。同時にゲーム機の高性能化によるユーザーの先細りにも触れ、その主張は一貫していました。

 それはWiiの設計にも表れています。Wiiの本体の大きさはディスクケースを3枚分重ねた程度でコンパクトでした。Wiiリモコンもコードレスで、ゲーム機の機械音の大きさにも配慮。スリープ状態を維持してデータをダウンロードできました。現在のゲーム機でも備わっている仕組みを、いち早く取り入れていたのです。

■あまりにユニークすぎたゲーム機・Wii

 もちろんWiiとて、全てが完璧だったわけではありません。普及機の後半になると、ユニークな操作端末がネックになりました。他のゲーム機への移植が大変で、その結果多くのゲーム会社がソフトの投入を見送りました。ソフトのラインアップが不足し、ゲーム機の出荷数が急減したのです。

 また世の中には、リアリティーのあるグラフィックを売りにした高性能のゲームを求めるユーザーもいました。マシンパワーの必要なゲームがWiiに不向きだったのは確かです。

 しかしWiiのコンセプトやチャレンジは、実に意欲的でした。インターネットの接続率向上に力を入れたほか、ニュースや天気情報を配信するといったポータルの取り組みもありました。「ニンテンドースイッチ」でも使われているユーザーの分身キャラクター「Mii(ミー)」の試みがスタートしたのも同機です。

 ゲーム機の魅力を少しでも高めるために、失敗を恐れず挑戦する姿は、任天堂の“お家芸”でもあります。ゲームファンの大きな声に惑わされず、新規層の取り込みを意識して「ゲームユーザーの人口拡大」を成し遂げた功績は、今も燦然と輝いています。

(河村 鳴紘)

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