〈韓国「ポケモンパン」争奪戦のリアル〉おまけシールほしさに「300個爆買い」YouTuberも…パンはどこに消えた?

〈韓国「ポケモンパン」争奪戦のリアル〉おまけシールほしさに「300個爆買い」YouTuberも…パンはどこに消えた?

「ポケモンパン」は日本で1998年に発売開始された SPCサプリム社のサイトより

 いま、韓国全土で「ポケモンパン」争奪戦が起きている。ポケモンパンとは、1998年に日本で発売開始された菓子パンのこと。パッケージにはピカチュウをはじめとする人気ポケモンのイラストがあしらわれ、おまけの「デコキャラシール」が封入されている。韓国でも1998年に発売されたが、2006年に生産中止に。それが今年2月に再発売され、社会現象級の人気となっているわけだ。

■BTSも「争奪戦」に参加

 筆者が最初に韓国でのポケモンパンの人気を認識したのは、近所のコンビニでだった。店員の友人がぞろぞろと訪れていた際、店員の名前を大声で言っていたのですぐにわかった(#韓国あるある)。

客:「やー! キム・ユジン(仮名)!」

店員:「なに? 突然ビックリするじゃん。ポケモンパンないよ!」

 と話すのを聞き、ポケモンパン??? 何のこと?? と不思議に思った数日後、BTSメンバーがポケモンパンを探しているというニュースを読んで、このことだったのか! と繋がった。その後、本当に品切れになっているのか気になり、ソウル市内の様々なエリアを訪れるたびにコンビニをのぞいてみたけれど、本当にない。実はまだ一度も見たことがないのだ。まさに幻……ポケモンで言えば、さながらミュウのような感じだろうか。

「ポケモンパン品切れです」と可愛い手描きのイラストを添えた張り紙があるコンビニもよく見かけた。中には入口に大きく「ないです」と掲示しているところ、搬入時間を丁寧にお知らせしているところまである。

■いまさら人気に火がついた理由

 あまりに見かけないので、語学堂の先生にポケモンパンを見たことありますか? と聞いたところ、先生のお嬢さんたちは「12時(コンビニの搬入時間)にコンビニにいかなきゃ!」と毎日息巻いているそうだが、まだ買えたことがないという。入手困難であればあるほど欲しくなるのが人間の心理だけれど、全く関心がなかった私でも気になってしまうほど、見当たらないのだ。

 韓国でポケモンが流行ったのは、今のアラサー世代が子供の頃だが、いまだに高い認知度を誇っており、MZ世代のK-POPアイドルたちはもちろん、老若男女が知っている。

 韓国では楽しい思い出や、心に残るあたたかい記憶のことを「チュオク」と言うのだが、まさに子供時代のチュオクを探すように、ポケモンパンを求める大人たちがたくさんいるのだ。そこに若者のレトロブームやオープンラン現象(韓国の若者に流行しているお店が開く時間に合わせて並んで購入する現象)が加わり、より熱を増している。

■シールほしさに爆買いするYouTuber…パンの行方は?

 インスタグラムのハッシュタグは7万件越え(2022年3月30日時点)。ポケモンパンを大量購入し、どんなシールが出てくるかを楽しく紹介するYouTube動画など、SNSやメディアの影響もあり、もともと関心のなかった人にまで広がっているようだ。

 チャンネル登録者数390万人を越える韓国の人気YouTuber・Heopopさんは、300個のポケモンパンを開封し、159種類あるシールの収集に挑戦。 その様子を収めた動画 を公開した。あまりにたくさん買ったパンはもったいないので、友達に配ったとも話している。「食」を大事にする韓国らしい一面だ。

 流行になると、ものすごい速さと勢いで広まるのが韓国流だが、ポケモンパンをめぐり、様々なニュースが毎日のように飛び交っている。あまりに品薄ゆえ、これ以上文句を言われたくないと「ポケモンパン不売運動」を始めたコンビニもあるのだそう。前述した「ないです」の貼り紙も、在庫の有無を聞かれることを、事前回避するためだろう。

■コンビニ店員に激高、抱き合わせ販売も

 今月23日にはコンビニ店員からポケモンパンの品切れ案内をされた客が、「ポケモンパンがあるのに隠しているんじゃないか!?」と訴え、商品を足で蹴り、袋をひっくり返して警察が出動する事件まで起こった。韓国全土の至るところでポケモンパンと他の商品の抱き合わせ販売などの事例も相次いでいる。最近、韓国東南部の都市・大邱の某コンビニでは3万ウォン以上購入したレシートがなければポケモンパンは販売できないとし、世論から激しい批判を受けた。1500ウォンのポケモンパンを1800ウォンで販売するスーパーマーケットも登場し、高値で販売することが摘発されたりもした。

 また、「タングンマーケット」(メルカリのようなフリマアプリ)ではポケモンパンやシールがたくさん販売されており、1枚100円と良心的な価格から1500円ほどの高値まで価格帯は広い。人気インスタグラマーのnanheemangさんもシールへの情熱をコミカルに描いた、こんな投稿をしている。

「深夜1時に『メタモン』シールを手に入れるため、タングンマーケットで取引をした話」

 でも、こんな良いニュースもある。

「ポケモンパンを2箱買ったが転売せず、保育園に寄付をした市民」

 ポケモンパンを高く転売することを批判し、手に入れる事ができたときの笑顔や幸せな気持ちを子供達にも分けたいから寄付をすることにしたと、タングンマーケットのコミュニティに書き込まれていたそうだ。

■株価にも影響が

 1998年の発売開始当初は月に500万個ずつ売れていたが、再発売から35日で800万袋の販売を突破したそうだ。これを受け、ポケモンパンを販売する食品会社「SPCサムリプ」の株価は2022年1月末の7万ウォン台から、3月に入り9万ウォン台へと高騰した。

 ポケモンパンがないことで激高したり、店員に堂々と意見したり、さすがアジアのラテン・韓国らしいエピソードだと感じる一方、株式投資やビットコイン投資をする若者が多く、投資に対しても盛んなお国柄らしく、株価にまで影響するほど流行する熱量とスピード感もさすがとしか言いようがない。コロナ確定診断者が急増していることも、ここまで人気になっている理由のひとつのようだ。外で心配せずに遊びまわった幼い時を思い起こしたり、学生時代にポケモンシールを集めた青春時代を思い出したり。

 子供時代に思いきり買うことができなかったからこそ、お金を出してでも手に入れることのできる幸せを噛み締めているのだろう。たしかに、私も今でもセーラームーンのコスメやグッズを見ると胸がキュンとして、思わず買いたい!! 手に入れたい!! と思ってしまう。小さな頃に自分で買うことができなかった渇望感を思い起こしたり、夢中で遊んだ子供時代を思い返したりできるからだ。

 チュオクは国や年齢問わず、誰しもが持っているものなのだ。今こうやって一生懸命ポケモンパンを探していることも、誰かのチュオクになるかもしれない。かくいう私は、純粋なミーハー心から、一度は食べてみたいと願っている。

(東山 サリー)

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