《予想外すぎる超展開》「これは弁護になっているのだろうか?」裁判ウォッチャーが見た「ヤバい弁護士」

《予想外すぎる超展開》「これは弁護になっているのだろうか?」裁判ウォッチャーが見た「ヤバい弁護士」

これまで約2万件の刑事裁判を傍聴してきた裁判ウォッチャー阿曽山大噴火氏。彼が見た「ヤバい弁護士」とは… ©iStock.com

 裁判を傍聴していると「これは弁護になっているのだろうか?」と思うこともたまにありまして。

 それは、ある日の裁判のことでした。

 傍聴席に座って開廷を待っていると、胸元に弁護士バッジを付けたスーツ姿の男性が法廷に入って来て、書記官に「被告人どこ座るの? ここ? そっち? どこ?」とかなり高圧的な態度。

 被告人が座る椅子は決まってるのに、そんな事を確認する時点で刑事裁判慣れしてない弁護士さんって事だし、なんか苛立ってるような雰囲気もすぐに感じ取った訳ですが……。

 その弁護士の後ろに立っていた、長い金髪をなびかせて絵に描いたロック歌手みたいな格好をした男性が被告人席に着席して、裁判スタートです。

〈 罪名 建造物損壊

 被告人 ガールズバーの店長(24)〉

 起訴されたのは、被告人が東京都内のお弁当屋さんの店先で、持っていたバッグでガラス(被害金額15万290円)を叩き割ったという内容。

 罪状認否で被告人は「間違いありません」と罪を認めていました。

■1ヵ月前にも被告人は店とトラブルに?「両替を断ると…」

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は大学中退後にアルバイトを転々として、犯行当時は現場近くのガールズバーで店長をしていたそうです。前科は無いので、今回が初めての正式裁判になります。

 そして犯行当日。被告人はガールズバーの仕事を終えると、他のガールズバーへ行き店長と朝まで飲酒。閉店時間になり店を出ると、被告人は1人で犯行現場であるお弁当屋さんを訪れました。

 被告人は店員に声を掛けるも、無視をされて立腹。お店の外に出て、持っていたバッグを窓ガラスに叩きつけて破損したとのこと。店員が被告人に名前や連絡先を訊くと、被告人はウソの名前と連絡先を伝えてその場を後にしたようです。

 取り調べに対して、お弁当屋さんの店員は「被告人は犯行の1ヵ月前に両替をしに店に来たことがあった。両替を断ると1万円札で100円の商品を買うというのを何回もしてきて覚えていた」と述べているそうです。事件の前から被告人と被害店舗は何かトラブルがあったようですね。

 検察官の冒頭陳述ではどうやって被告人が逮捕されたのか詳細は述べられませんでしたが、被告人のガールズバーが被害店舗の近所にあるという話なので、偽名を名乗ってもすぐに居場所がバレたのかも知れません。

■「ホント?ウソだったら私帰りますよ!」となぜか食ってかかる弁護人

 そして被告人質問です。まずは弁護人から。

弁護人「このお弁当屋はよく行ってたんですか?」
被告人「2〜3回です」
弁護人「店員さんはあなたが何回も両替目当てで嫌がらせに来てたって言ってるみたいなんだけど、どうなの?」
被告人「それは私ではありません」

 度重なる両替に関しては人違いだというのが被告人の言い分です。これ以上誰も追及しなかったので、しつこくお弁当屋さんで両替してた人は誰か分からず。

弁護人「なんでガラス割ったんですか?」
被告人「店員さんと口論になったので」
弁護人「店員と揉めたと?」
被告人「はい。声掛けたのに無視されて……。気持ちが昂って、気持ちの整理がつかなくて……」
弁護人「それはお酒が入ってたから?」
被告人「そうですね」
弁護人「その日は何杯くらい飲んでたの?」
被告人「……1〜2杯です」
弁護人「ホント? ウソだったら私帰りますよ!」
被告人「ホントです」

 何故か被告人の返答を疑ってかかる弁護人。被告人の味方なのに「ウソだったら私帰りますよ!」なんて言い方をするなんて、ちょっと見ない光景です。

弁護人「ガラス割った後、弁償の話をしてから立ち去ったと?」
被告人「はい」
裁判官「当日は支払うって話をしたんですか?」
被告人「はい」
裁判官「でも後日、払わなかったと?」
被告人「電話で、金銭の交渉でしたら結構です、と言われて」
弁護人「検察官の冒頭陳述だと、弁償を拒んだって事になってるけど拒んだの?」
被告人「拒んでません」
弁護人「私に依頼しましたよね」

 結果的に示談には至らなかったんだけど、弁償や示談に関しては被告人が直接交渉するのも良くないって事で、弁護人が仲介して行っていたようです。

弁護人「事件から半年以上経ってますけど、反省した?」
被告人「はい」
弁護人「ウソだね!」

 またもや被告人の発言を否定する弁護人。

弁護人「だって、今日私の事務所来たの記憶してます?」
被告人「してます」
弁護人「その時何て言った? 『これは罰金払って終わりの話だ』って言ったよね! そんなの反省してないよね!」

 この初公判の直前に弁護士事務所で行った打ち合わせでの被告人の失言を暴露し始めたのです。

■突如明かされていく弁護人の過去

弁護人「言っておくけど、お酒で失敗した人はまたここに戻ってくる! 7割の確率で!」

 確かに、泥酔して事件を起こして何度も被告人になっているというパターンはよく傍聴します。とはいえ、一応弁護する役なんだし、そんなにキツく当たらなくても……。

 すると興奮していた弁護人は落ち着いて自分の過去を語り始めたのです。

弁護人「昔……私もガラス割りました……。酔ってちょっと足出したって事で逮捕されましたよ。起訴はされなかったけど……番号で呼ばれました。6番でした……。それで、お酒やめましたよ!」

 どうやら弁護人は被告人と似た様な事件を起こしていた人物なんですね。その事件以降は酒の失敗も無く、こうしてちゃんと生活してるって言いたいようです。多分ここまでの辛く厳しい態度は、私のように反省して3割の人間になれという叱咤激励なんでしょう。

弁護人「どう? 事務所で言ったか言ってないか」
被告人「……言いました……」
弁護人「だからそれ聞いて悲しかったねぇ……あぁ、反省してないんだって……」

 罰金払えばいいんでしょ、みたいな被告人のヘラヘラした態度を見て打ち合わせの時からイライラしてたんですね。その怒りがこの被告人質問で全てぶつけられたって訳です。そして最後に

弁護人「またガラス割るんだよ!……終わります」

 と捨てゼリフを吐いて弁護人の質問は終了。弁護側なのに再犯するだろうなんて締めは珍しい。敢えて被告人に対して厳しい態度を取って被告人をしょぼーんとさせるパターンの弁護人もたまにいるんだけど、これはほとんど弁護になってないですよねぇ。

■「偽名を名乗ったのは何故ですか?」「態度が気に入らなくて…」

 続いて検察官からの質問です。

検察官「店内の防犯カメラの映像見ると、犯行の45分前……6時15分に入店してるんだけど何の為に入ったの?」
被告人「お弁当を買いに」
検察官「お弁当は買いました?」
被告人「いや、その日は買わずです。店員の態度が気に入らずで、何度言ってもシカトされて」
検察官「それで大声を出したんですか?」
被告人「なんでシカトするんですか、と。口論になったので声も大きく……」
検察官「クルクルと回ってたのは何故ですか?」
被告人「イライラを抑える為です」
検察官「勢いつけてガラス割る為じゃないの?」
被告人「違います」
検察官「コバヤシって偽名を名乗ったのは何故ですか?」
被告人「態度が気に入らなくて……」

 と冒頭陳述よりも詳しい事件の状況が語られました。

■「その点については私が…」勢いよく挙手する弁護人の口から出た言葉

検察官「事件の2週間後に被害届が出て、割ったガラスの15万円って請求されました?」

被告人「全く請求されてません」
検察官「支払いを拒んだ訳じゃないの?」
被告人「こっちにも非があるという話にもなりまして、弁償はもういいですってことになりまして……」
検察官「それはいいとして、起訴されてから今日まで2ヵ月経ってますよね。その間に弁償とか謝罪文とかは?」
被告人「えっと……それは……」

 と被告人が返答に困っていると、弁護人が勢い良く挙手して

弁護人「その点については私が……」

 と追加で質問させてくれと立ち上がりました。という訳で、検察官からの質問のはずが弁護人からの追加質問です。

弁護人「急にあなたと連絡取れなくなったりしてね。こっちは交渉してたのに。示談出来なかったのはあなたのせいですよね?」
被告人「はい」

 お弁当屋さんと間に入って示談を進めてたのに音信不通になった事にも怒っている様子。

弁護人「話に聞いたけど、大体さ、検察庁での態度も悪過ぎるよ」

 と取り調べでも被告人のダメっぷりが爆発してたようで、弁護人は呆れながらも怒ってる感じ。

■明かされた驚愕の事実「なんとこの2人、店長と客という立場なんですね」

 まだまだ怒りは鎮まらないようで

弁護人「大体、金髪にしてロン毛でチャラチャラしてさ〜! 今日もスーツで来いって言ったよね?」

 と、外見についての文句です。人を見た目で判断しないのが裁判じゃないのかと言いたくもなりますが、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとは言ったもので、法廷に似合わぬファッションに怒り心頭。そして衝撃の告白です。

弁護人「あなたの店に行った事あるから、これもタダでやったけどさぁ……」

 なんとこの2人、店長と客という立場なんですね。弁護人としては店長の為にタダで刑事弁護を引き受けてる訳です。いや、もしかしたら店で美味しい思いが出来るかも知れないという下心があっての弁護かも知れませんが、とにかく無償で弁護をやってあげてるのに色々と酷過ぎるだろうという怒りが根っこにあったんですね。

 個人的には弁護人はお酒やめた訳じゃないの? とちょっとだけ気になりましたが、そこを質問する人はいないので。ここまで怒っても弁護人の怒りはまだ収まりません。

弁護人「事務所来た時もおかしいよ! 勝手にティッシュ使ったりさー!」

 断りもなくティッシュ使った事に文句。そして

弁護人「鏡ばっかり見て!」

 と身だしなみ整え過ぎの行動にも文句です。打ち合わせそっちのけで鏡を見ていたんでしょうかね、「罰金払って終わりの話だ」なんて言いながら。そして最後に

弁護人「生き方、行動、価値観は変えられるから! あなたはいっつも鏡見てさ……。今反省してよ、今!」

 と大激怒して追加の質問終了です。この質問は弁償に関しての追加だったはずなんですけどね。まさか無断でティッシュを使った事を叱責されるとは。

 この後、検察官も裁判官もちょっとだけ質問をして被告人質問終了。

■「被告人には社会内の更生が期待出来ます。私も知人ですのでお願いします」

 そして検察官は、被告人が被害弁償もしておらず反省の態度も見られないとして懲役1年を求刑です。

 この後、弁論。普通は弁護人が前もって書いてきた弁論用紙があって、それを読み上げる為に被告人質問や証拠を提出する訳です。証拠は反省文すら提出してないし、ここまで何の弁護もしてない弁護人がどんな弁論をするつもりなのか?

 すると、弁論用紙を用意してないのか、はたまた全てを暗記しているのか、弁護人は手ぶらの状態で立ち上がり

弁護人「え〜、検察官からは罰金刑ではなく懲役刑の求刑がありましたけど、そちらの方が反省も深まります。懲役の方がいいでしょう」

 と、より重い判決にすべきと語り始めたのです。なかなか驚きの弁論。しかしここからはそれっぽく

弁護人「被害者の方針で示談はしておりませんが、被告人としては申し出は行っています。あと建造物損壊とは言いましても、ガラスにひびが入った程度で被害店舗が入っているビル……え〜っと、なんとかビルも壊れてはおりません。被告人には社会内の更生が期待出来ます。私も知人ですのでお願いします」

 と締めて執行猶予付きの判決をお願いしていました。最後の方だけ聞くと普通の弁論なんですよね。

■被告人の「最後の言葉」に、弁護士は…

裁判官「では被告人、証言台の前に。これで審理を終結して、次回判決を言い渡す事になります。最後に言いたい事があったら述べて下さい」

 と被告人の最終陳述です。ここでは長々と反省の言葉を並べる人もいるんだけど、「特にありません」と何も言わない被告人が多数。何も言わないからダメなんて事は無いし、むしろノーコメントの方が時間が過ぎてる時なんかは有り難がられてる印象です。で、この被告人は何か言うのかと思ったら

被告人「大丈夫です」

 と。するとこれを聞いた弁護人が

弁護人「そこですいませんとか言えよ〜」

 といらぬアドバイス。被告人に何か言わないと気が済まないのかも知れませんね。すると

被告人「いろんな人に時間割いてもらって迷惑掛けてるので、反省しています」

 と述べて閉廷でした。

■「考えられる?あり得ないよ〜」

 1週間後、被告人に判決が言い渡されました。私は他の裁判と時間が被ったので傍聴してませんが、ロビーに弁護人がいて近くの知人らしき人物に

弁護人「考えられる? 自分の判決なのに遅刻してくるんだよ? あり得ないよ〜」

 と怒っているのを目撃してしまいました。ここまでやって報酬無しですからね。被告人のキャラクターが弁護人をこうさせたのか、弁護人がいつもこんな弁護をしているのかは分かりませんが、どんな事情にせよ、もし自分が逮捕・起訴された時にこの人だったらイヤだなぁと思ったのでした。

(阿曽山大噴火)

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