今でも土日休みの生活に憧れる…“令和の怪物”ロッテ・佐々木朗希の普通すぎる素顔

今でも土日休みの生活に憧れる…“令和の怪物”ロッテ・佐々木朗希の普通すぎる素顔

佐々木朗希 ©千葉ロッテマリーンス?

 千葉ロッテマリーンズの背番号「17」に日本中の注目が集まっている。令和の怪物 佐々木朗希投手。4月10日のバファローズ戦(ZOZOマリンスタジアム)で28年ぶり史上16人目の完全試合を達成すると、続く4月17日のファイターズ戦(ZOZOマリンスタジアム)では8回を投げてパーフェクト。2試合合計で17イニングをパーフェクトの偉業を成し遂げた。

 周囲の熱が、どんどんヒートアップする中、本人は至って、冷静。「ブルペンでは調子が悪かったのでどうなるか心配でした」と静かに語る。

■「起きようと思ったけど、身体が動かなかった」

 令和の怪物と言われると構えてしまうが、普段は至って普通の青年だ。プロ1年目。初めての石垣島キャンプ初日に目を輝かせながら宿舎近くから海を眺めていた。そして「いつか小笠原諸島に行ってみたいと思っている」と話をした。テレビ番組で小笠原諸島の特集をやっていたのを見て、興味を持ったようだ。石垣島の海を眺めながら、行ったことがない場所について目を輝かせながら想いを語った。

 もちろんプロ根性が垣間見える時もある。ジンクスに縛られる生活を良しとしない。だから、あえて崩していく。完全試合を達成した試合、そして次回登板。普通の感覚でいえば、あえて登板前夜も登板の朝も前回と同じ食事メニューで挑みそうなもの。しかし、全く違う選択をした。それもジンクスに縛られて生きたくはないからだ。ジンクスはあくまでジンクスで根拠はない。ジンクス打破とばかりに、まるで違う食事メニューを頼んだ。

 縛られると言えば、身体が動かなかったエピソードがある。昨年10月14日のバファローズ戦(京セラドーム)。先発を任されることになっていた佐々木朗希投手は朝10時に目を覚ました。ただ、身体は動かなかった。初めての経験だった。

「起きようと思ったけど、身体が動かなかった。自分で必死に身体を動かして、やっと思い通り動いた。初めての経験でしたね。あれが金縛りという現象ですかねえ」

 その試合は勝利して見事、シーズン3勝目。試合後に茶目っ気たっぷりに秘話を披露した。

「MAX164キロの剛速球を投げる」と周囲は一言で片づけてしまう側面があるが、日々、身体のためになにが良いかを考えながら過ごしている。プロ1年目。入寮した時に持ち込んだ本は「筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典」(荒川裕志、石井直方著、ナツメ社)だ。新型コロナウィルスの影響でプロ野球がチーム活動を中止した20年4月にも寮でじっくり身体に関する本を読み込んだ。

「入寮した際に持ちこんだ本を監修した石井直方さんが書かれた『トレーニングをする前に読む本』(講談社)です。前の本もそうですが筋肉の性質や動き、しくみはしっかりと知っていて損はないと思っています。前回の本は読破しました。今まで知らなかった筋肉の事を知ってさらに興味が湧いてきたので買いました。自分でもウェートや体幹をしている時にどこの筋肉を動かしていて、その筋肉が体のどのような役割を担っているかとかを知りながら行うのと知らないで漠然と行うのとでは全然違うと思います」と語っていた。

 超がつくほどの理論派で勉強家。自分が理解して、考えて納得してから行動に移すタイプ。だからこそ自分自身の身体のメカニズムはしっかりと知りたいという欲求がプロ1年目の彼を読書に駆り立てていたのだ。

■「今でも睡眠時間の確保は最優先にしています」

 そんな佐々木朗希がよく周囲から聞かれるのは「どうやって身長が伸びたか?」。これについては「睡眠」と明確に答え続けている。

「身長が大きいのは夜更かしをせずに寝ていたから! 小学生の時は20時には必ず寝ていました。これは間違いないです。今でも睡眠時間の確保は最優先にしています」と1メートル90センチの右腕はその理由を当たり前のように語る。

 確かにキャンプ中は出来れば20時にはベッドに入り、ウトウトと眠りに入り朝は5時に起きてストレッチをしたりとゆっくりとコンディション作りを行う日課を過ごしていた。そして、ある日はキャンプ中に見た夢を語ってくれたことがあった。

「12分間走のメニューがある前日に12分間走を終えた夢を見ました。ギリギリ目標を達成して『よっしゃあ、終わった』と思っていたら夢だった」と言ってクスクスと笑う。 

 キャンプ休日の朝食会場では食パンの上に様々なフルーツやジャムを乗せ、「ボクの朝食、オシャレかつ盛り付け上手でしょう!」と自慢げに披露し食パンを6枚、ペロリと平らげた。

 マウンドに上がった際に見せるモンスターのようなオーラを普段感じることはほぼなく、どちらかというとお茶目だ。それがMAX164キロ。平均でも150キロ台後半のストレートを当たり前のように投げ、試合後半でも160キロを計測。スタンドのファンも今では当たり前のことのようにこの数字と向き合う時代となっている。

■もし自分がそのまま大学生となっていたら…

 佐々木朗希を知る上で面白い小学生の時のエピソードがある。家族で仙台にプロ野球を見に行った。当時、スタジアム外でファン向けのイベントとしてスピードガンコンテストが行われていた。一番速い球を投げると試合の始球式に投げられるという優勝特典のついた企画だった。

 子供心として、とっさに思ったのは「もし一番になって始球式に投げることになったら恥ずかしい」という想いだった。今だからこその笑い話だ。

「今思うとそんな速い球、小学生が投げられるわけないですよ。確か優勝者は117キロ。たぶんボクがあの頃、うまく投げても80キロぐらいじゃないですか。でも子供って不思議ですよね。なぜか優勝して沢山のお客さんが見ているマウンドで投げることになったら恥ずかしいという考えが浮かんだ。だから、チャレンジしていません。大人になって冷静に思うと、そんなわけないですけどね」と佐々木朗希は当時を思い返して笑う。

 当時はプロ野球選手になるという夢すら抱いていない普通の小学生。男の子独特の恥ずかしさの感情が挑戦を拒んだ。淡い思い出。そして今や自身が登板する際は本拠地ZOZOマリンスタジアムは超満員に膨れ上がっている。

 普通の小学生だった佐々木朗希が土日のデーゲームの時にふと考えることがある。もしプロ野球選手ではなく、普通の野球少年だった自分がそのまま大学生となっていたら、どうなっていたのか。そして社会人になっていたらどんな仕事をしていたのか。デーゲームで多くの観客がスタンドで楽しそうに野球観戦をしている姿を見ると、そのように問いかける自分がいる。そして、今でも土日に休みがある生活に憧れる時がある。そんな若者が今、日本中の注目を集めているのである。

 完全試合の次の先発登板となった4月17日は、千葉県のために戦う日としてALL FOR CHIBAユニホームでマウンドに上がった。グレーの新しいデザインのユニホームにはじめて袖を通した。8回を投げて打者24人をパーフェクト。前回登板を合わせると17イニング完全投球という異次元の姿を披露し日本中を虜にした試合後は「ユニホームと黄色のグラブの色が合っているかどうかずっと心配でした」と頭をかいて照れた。ピッチングはもちろん、飾り気のない人柄もまた多くの人から愛される所以だ。

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(梶原 紀章)

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