「“陰の者”だったが『パリピ孔明』のおかげで…」グレート-O-カーンがアニメで学んだ“かっこいい”生き方と理想のヒール像

「“陰の者”だったが『パリピ孔明』のおかげで…」グレート-O-カーンがアニメで学んだ“かっこいい”生き方と理想のヒール像

グレート-O-カーン選手。スーツの上からでも鍛え上げられた体の大きさが伝わる ©松本輝一

「むしろ余が本当に頑張ったのはそこからだな」女児を救出したグレート-O-カーンが挑んだ5時間の事情聴取と、“正直気持ちよかった”出来事 から続く

 辮髪に長いひげの異様な風貌……酔っ払いの男から女児を救ったことで注目されたプロレスラー、グレート-O-カーン選手。新日本プロレスの侵略を目論む「偉大なる王」である一方で、VTuber由来の必殺技「大空スバル式羊殺し」を得意とし、警察に協力したのは「ハコヅメ」の影響と公言するオタクの顔も併せ持つ。

 ツイッターでは次々と女体化イラストが投稿されるオーカーン選手に、そのオタクライフを聞いた。

◆◆◆

――オーカーンさんは「ハコヅメ」の話をアツくされていましたが、アニメはいつから好きなんですか?

オーカーン 余は2018年にグレート-O-カーンとして誕生する以前の記憶を失っているから具体的なことはよく覚えていないのだが、「スクールランブル」(2004年放送開始)という作品はなぜだか心に沁みついている。余の王宮にはアニメDVDも、ゲームも、漫画も、漫画の限定版も全部揃っておる。当時はテレビのゴールデンタイムのアニメというと少年誌系の熱い作品が主流で、ヒロインがたくさん出てくるラブコメは珍しかった。しかも登場人物が全員可愛い。……すべては余が生まれる前のことだがな。

■女の子を助けられたのも「アニメのヒーローのおかげ」

――オーカーンさんがイギリスでデビューしたのが2018年、日本に上陸したのは2020年ですよね。

オーカーン イギリス時代は日本のアニメが見られなくて本当にキツかったが、途方に暮れていた余を救ってくれたのがVTuberだった。最初にハマったのはキズナアイだな。アニメは作品の中で流れている時間を見ることしかできんが、VTuberは会話ができて話せば話すほどに性格やヒストリーを知ることができる。これこそオタクが長年求めていた存在だと思ったわ。

――得意技「大空スバル式羊殺し」もVTuberの大空スバルさんから来ています。アニメやVTuberの影響を受けている部分は大きいんですか?

オーカーン うむ。余の生き方がかっこいいとすれば、それはアニメを見てきたおかげと言っても過言ではない。武蔵小杉駅で幼子をとっさに守れたのも、アニメのヒーローたちの行動が染みついているからだ。世の中では悪いことをした奴の家にアニメグッズがあると「オタクが事件を起こした」と騒ぐが、いいことをした時も出して欲しいものだ。

■「1つ、1つか……。『パリピ孔明』だな」

――「アニメオタクが女の子を救出!」っていうニュース、見てみたいです。

オーカーン だろう? 「名乗るほどの者じゃございません」とか「体が勝手に動いた」と決めセリフが咄嗟に出てくるのもアニメの影響だ。プロレスだってそうだ。あのリングは全員が主人公になれる場所だから、主人公らしいセリフがよく似合う。それを厨二病と言うやつもいるかもしれんが、余は漫画やアニメの主人公のようになることを諦めていないからな。いつ少女が空から降ってきても受け止められるし、角を曲がる時は食パンをくわえた少女とぶつかる準備ができている。

――4月から新しいアニメが始まっていますが、今クールのお気に入りがあれば1つ教えてください。

オーカーン 1つ、1つか……。「パリピ孔明」だな。オープニング、エンディングがすごくいいし、ヒロインの英子もタイプだ。余は移動中、主題歌の「チキチキバンバン」をずっと聴いておる。余が所属している「UNITED EMPIRE」というユニットの外国人レスラーたちはクラブ大好きでな。あいつらと「パリピ孔明」のおかげでクラブの楽しみ方がようやくわかってきたところだ。あれは踊らにゃ損じゃ。余はこれまでどちらかと言うと"陰の者"で休日は王宮にこもってアニメを見ることが多かったんだが、今はクラブにハマりそうだ。

――確認しますがオーカーンさんはヒールレスラーで、カーンというくらいですから皇帝でもあるんですよね……?

オーカーン その通り皇帝じゃ。余はプロレスが嫌いだからヒールとかはよくわからんが、対戦相手の頭を掴んで靴を舐めさせたり、顔の上に座ったりはしているからな、悪党と言われればその通りだろう。余はレスラーたちに完全勝利したうえで、肉体的にも精神的にも苦痛を与えることで完全に平伏させたいと思っている。余がプロレスの試合を「処刑」と呼んでいるのもそういう理由だ。

――「実はいい人」という声もありますが。

オーカーン それは悪党の矜持というものを理解していない愚民の発想じゃ。社会にルールがあるように、リングにもリング特有のルールがある。余が支配を目論んでいる相手はレスラーたちだからな、素人に手をだすことはない。この矜持を教えてくれたのも「とある科学の超電磁砲」のアクセラレータという悪役じゃ。時々「ここから先は一方通行だ」というセリフを口走ってしまうくらいには影響を受けている。奴は自分の力を間違ったことに決して使わず、大事な女は絶対に守る男だ。

■岡倫之は「まあどこかで元気にやってるだろうよ」

――先日のアメリカ遠征でも、オーカーンさんが乱闘から女性を守ったと聞きました。

オーカーン また余、何かやっちゃいました? ……まあ、あの試合が場外乱闘になることは目に見えていたからな。余は勝負に水を差されないように、レスラーと観客の間に入っただけのこと。それが結果として誰かを守ったかは知ったことではない。

――新日本プロレスでは2014年にも、岡倫之というレスラーが暴漢を取り押さえた事件があったそうですがご存じですか?

オーカーン ……有名な話だからな、話ぐらいは聞いている。伝説のヤングライオンと呼ばれていたらしいな。あの時は横浜アリーナで、人相の悪い男が連れの男を殴っていて――。

――まるで見てきたように詳細ですね。

オーカーン あくまでも聞いた話だ。そのレスラーは暴れていた男を腕ごとホールドして鯖折り状態にしたうえで、馬乗りになって取り押さえたんだな。男は酒を飲んでいて「なんだてめーどけ! 殺すぞ!」と抵抗したが、岡は余と同じように敬語で「落ち着いてください。どうして暴れていたんですか、理由だけでも教えてください」と根気強く呼びかけたそうだ。なかなかできる男だな。

――今は新日本プロレスに所属されていないようですが、岡選手が今どうしているかご存知ですか?

オーカーン まあどこかで元気にやってるだろうよ。見た目が余に似てデブでハゲで、しかもアニヲタだったらしいというのも好感が持てるところだ。

――確かに当時の写真を見るとよく似ています。そういえばオーカーンさんは先日の試合の後にも「余みてぇなデブで、ハゲで、見た目不潔で、アニヲタで、そんな人生ヒエラルキー下の奴」とおっしゃっていましたが、ご自身のことをそんな風に思われているのですか?

オーカーン そうじゃなあ、余は今でこそ支配者だがいろんな苦悩を乗り越えてきたのは確かだ。プロレスをやっていなければ、デブでハゲであることは大抵マイナスだろうよ。ただそういう奴だって支配者になれるということを余が証明すれば、夢があるだろう? そうやって夢を見せるのが、プロレスラーとしての一番の仕事なわけだ。

■ベルトではなく、壁に1つだけ飾っているもの

――IWGPタッグチャンピオンになって、新日本プロレスの"支配"が一歩近づいた感覚はありますか?

オーカーン まだ余は一番ではない。そんなにプロレスも甘くねえ、IWGP世界ヘビー級チャンピオンもいるしな。余の方が弱いとは思わんが、ベルトを持っている奴が一番ってのはプロレスにおいて絶対のルールだ。

――IWGPタッグのベルトはご自宅に飾られているのですか?

オーカーン 自宅じゃなくて王宮、な。ベルトなんか飾るわけねーだろ。余の王宮には何やらメダルやトロフィーが数多くあるのだが、飾ってるものは1つもない。過去の栄光にこだわっても仕方ないし、そんなもの飾るくらいならアニメのポスターを張りたいくらいだ。ただ、今は1つだけ目立つところに飾っているものがある。

――何かのメダルですか?

オーカーン いや、今回のことで渡された感謝状を、壁の一番目立つところに飾っておる。余がいつか道を踏み外しそうになったり、信念を曲げそうになった時も、あれを見れば自分の心を取り戻せそうな気がしてな。辛い時がきても、信念を貫けば誰かが見ていてくれる、そんな気持ちにさせてくれるものなわけだ。帝国民にとってそういう存在に余がなれれば、余はさらに幸せ者じゃ。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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