大型連勝のホークスに起きている明らかな変化 “革命記念日”は昨年11月16日だった

大型連勝のホークスに起きている明らかな変化 “革命記念日”は昨年11月16日だった

勝ち越し満塁本塁打を放った柳田悠岐

 大型連休のあいだホークスは大型連勝を決めた。黄金週間でキラリ輝く白星をずらりと並べてみせた。ひと昔前は「どんたくシリーズ」と呼ばれた(そういえば最近聞かなくなった)5月3日〜5日の本拠地オリックスバファローズ戦、6日〜8日の敵地での千葉ロッテマリーンズ戦をすべて勝って見事6連勝したのだ。

 5月に入ってからのホークスは本当によく打っている。

 上記6試合のうち、じつに5試合で2桁安打をマークした。唯一1桁だった5日のオリックス戦にしても9安打9得点と攻撃は活発だったし、7日ロッテ戦に至っては20安打で16−0という別格の圧勝を見せた。

 それもスゴイが、何がスゴイかというと山本由伸が投げてきても(3日)、佐々木朗希が先発(6日)してきても、勝ったのだ。

 他にも宮城大弥やその時点で両者とも防御率0点台だった石川歩、エンニー・ロメロと対戦。どれだけ贔屓目に見ても苦戦を覚悟せざるを得なかったというのが本音だ。しかし、若鷹軍団はそのエース級たちを次々となぎ倒していった。

■彼らは打席で、とにかくしつこかった

 まずはその口火となった3日の試合だ。難敵の山本から10安打7得点だ。最初の1点は相手守備のミスによるものだったが、続く得点は三森大貴と牧原大成の連続タイムリー。そして極めつけは3−3で迎えた6回裏、死球と連打で攻め立て1アウト満塁として鷹が誇る主砲・柳田悠岐が左中間のホームランテラスへ3号満塁本塁打を放った。これが決勝打となった。

 山本が7失点したのは自己ワースト。10安打を浴びたのは同タイ。そして、グランドスラム被弾は初めてだったようだ。

 何より攻略したホークスの打者たちを褒めるべきだが、それには伏線があったと考えている。

 彼らは打席で、とにかくしつこかった。2回裏の中村晃は三振に倒れたが、粘って9球も投げさせた。3回裏は“早打ち”の印象が根強い牧原が6球目でフォアボールを選んだ。5回裏は先頭の柳田が11球目を二ゴロ。グラシアルは初球打ちでアウトになったが、中村晃と柳町達は連続四球でチャンスメイク。上林誠知はそれを生かせず凡退したが、6球を投げさせてのアウトだった。

 この5回を終えた時点で、山本の球数はちょうど100球に達していた。次の回に柳田が満塁弾を打ったのは124球目のことだった。

 山本は体のバランスを上手く使って投げる投手だから、単純に投球数が増えたからボールの勢いが落ちたと論じるわけではない。だが、疲弊するのは体だけでなく心も同じ。ホークス打線が粘りに粘って山本を追い詰めたのは間違いなかっただろう。

 そして、ホークス打線がしつこく粘ったのはこの日だけではなかった。

 4日の宮城に対しても、2回裏には今宮健太が8球目を左前打にし、続く柳田は三振を喫するも7球投げさせるなど5回終了までに105球を費やさせ、1点しか奪えなかったがマウンドから引きずり下ろした。

 そして、6日の佐々木朗だ。当たり前のように160キロのストレートと150キロのフォークを操る怪腕に対してボールをじっくり見る余裕などない。とにかく狙いを定めて振りに行った。だけど、食らいついた。たとえば佐々木朗から1点を奪う直前の場面だ。4回表、1アウトから柳町が160キロをとらえて左翼フェンス直撃の二塁打を放った。続くは上林だ。初球はボール、2球目と3球目はファウルにして1ボール2ストライクと追い込まれた。次の4球目は163キロのストレート。これもファウルにした。

 上林は異次元の剛速球を待ちながら、見たことのない速さのフォークに対応していかなければならなかった。5球目は146キロの外角低めへのフォークが来た。これについていきバットに当てファウル。6球目、162キロをファウル。7球目も162キロをファウル。粘られれば、佐々木朗の表情も少し変わってくる。8球目、149キロの内角低めボールゾーンへのフォーク。上林のバットはついに空を切った。

 悔しい三振。だが、上林は役割を果たした。2アウト二塁から次打者の今宮が162キロを右中間に弾き返して難攻不落の佐々木朗からタイムリー二塁打を放ったのだった。

 佐々木朗から奪った得点はこの1点のみだが、6回91球で早めに降板させたことが試合終盤の劇的なドラマにつながった。9回表1アウトから中谷将大の代打同点1号2ラン。そして延長11回表に2点を勝ち越して勝利を決めた。

■メニュー表に記載されていた「2ストライクアプローチ」とは

 ちょっと大袈裟な言い方をすれば、今年のホークス野球には革命が起きているように感じる。

 ホークスを長く取材しているが、こんな粘っこい野球を見たことがなかった。ホークスの打者の特徴といえば好球必打の早仕掛け。確かにデータ上、早いカウントから打つ方が打者有利となる。ただ、アウトになれば淡泊にも映る。諸刃の剣なところがあるのだが、それでもホークスは多くの勝利を収めてきたのだから、これまでの考え方が間違っていたとは思わない。

 だがしかし、藤本博史監督はチームに変化を求めた。粘っこいホークスへの変貌は昨年の秋に、藤本監督が就任してからすぐに始まっていたのだ。

 革命記念日などと言うとこれまた大袈裟な表現になってしまうが、挙げるとすれば昨年11月16日がそれに当たるだろう。

 宮崎秋季キャンプの第3クール最終日。午後の野手の練習メニュー表に「2ストライクアプローチ」という見慣れない文字が記載されていた。シート打撃で打者は2ストライクと追い込まれた状況からスタートする練習だった。

 藤本監督はこの日の練習後、報道陣の前で珍しく嘆いた。

「今日の練習はバツです。選手にもみんなに言いました。もっと自分が打ちにいってファウルできないと。当てに行ってファウルなんかいらないですよ。そんなん絶対、試合になったら150キロを当てに行ってファウルなんてできないです。空振りしてしまいますよ。栗原(陵矢)も空振りしましたけど、当てに行くから空振りするんですよ。打ちにいったらファウルできる。なぜかというと、距離が取れないから。それはただの練習にしかならない。しっかり自分の距離を取ってやらないと。今日のは全くダメです」

 コワモテだけど物腰柔らかい藤本監督がここまで不満を口にするのは珍しかった。

「今日は選手へ、あえて何も言わないでやってもらった。みんなファウルすればいいと思ってるから当てに行く。それでは練習になりませんよ、と。試合では絶対空振りします。しっかり振って、ファウルできて、甘い球を仕留められる。結果、ヒットを打つためにはもっとスイングしないとダメやし、そこでファウルできる技術を身に付けてくれということです。それが、今年1年間(2021年)見ている中ではできてなかった。長谷川(勇也・一軍打撃コーチ)も選手側でおったわけで、『その通りです』と言ってたので。じゃあそこの技術を上げていこうよ、と。そうなったら1点でも多く取っていけるはずやからということですね。そういう練習です。これからもどんどん入れていきますよ」

 秋季キャンプで2ストライクアプローチは実際に“追試”が行われた。年が明けて今年2月の春季キャンプでもその意識はチームへ落とし込まれていた。

 監督が指針を示して求めるものを明確にすれば、選手たちはそれに応えようとする。特に新しい監督だからその傾向は強い。その周到な準備が実を結んだ黄金週間の大型連勝だったのだ。

 シーズンはまだ序盤。今後もホークス野球がどのように成熟していくか楽しみだが、昨年の秋季キャンプではもう一つ“奇策”を練習していた。

 ノーアウト一、三塁での重盗を想定。これは一般的に行う練習だが、その日は投手の一塁牽制の間に三塁ランナーが本塁を陥れる練習も繰り返した。藤本監督は「レアなケースだけど、隙あらばどんな形でも1点を取る。野手コーチが考えてくれました」と話した。これに似たプレーが昨年秋のフェニックス・リーグで実際にあった。三塁走者だった佐藤直樹が、投手の二塁牽制の間に本塁を突いた。「左投手の逆回りの牽制だった。佐藤直は間一髪アウトだったけど、セーフでもおかしくないほど際どかったからね」と藤本監督。

 これを提案した本多雄一・一軍内野守備走塁コーチは「自分が現役時代も含めて、キャンプの練習でやったことはない」とレア中のレアであるとしたが、「相手チームに、こういう作戦もあるんだと警戒させるのも大切ですし、策を閉じ込めて使わないままでは意味はない」と話していた。いつ、どこかの試合でアッと驚く“神走塁”が飛び出すかもしれないと思うと、観ている我々も気を抜いてはいられなそうだ。

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(田尻 耕太郎)

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